ストレッチは体がこわばったって痛い場合や、リラックスしたい時、スポーツの練習後に何気なくしている方も多いのではないでしょうか。
定番の太ももの裏を伸ばすストレッチを行い、運動不足や加齢による硬さを実感してしまい、より伸ばそうとして太もも裏に痛みが走ることがあります。
そんな時にどうしたら安全にストレッチできるのか、痛みの原因から簡単な方法まで紹介します。
ストレッチで太ももの裏が痛い原因①外傷(ケガ)
ストレッチをした時に太ももの裏が痛い場合、単純に筋肉がそれ以上伸びない状態が多く、無理に伸ばすと症状がでます。
一番分かりやすい原因が外傷で、これには大きな傷を伴う肉離れや打撲によるもので、病院でエコー検査で筋繊維の断裂や内出血が見られるなどの明確なものがあります。
太もも裏の外傷は瞬間的に動くスポーツで発生しやすく、陸上の短距離走、走り幅跳び、走り高跳び、サッカーやバスケットのように走る跳ぶという動作が含まれると危険性が上がります。
この太もも裏の筋肉は外側から大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋で合わせてハムストリングと呼ばれています。
ハムストリングは骨盤の下の坐骨から膝下の脛骨(けいこつ)、外側の腓骨(ひこつ)につきますが、ここを肉離れをした場合は治りにくく、改善するには忍耐が必要です。
肉離れの原因として太もも前の大腿四頭筋が、ハムストリングより約1.5倍以上の強い力がある時など、前後での力のバランスが悪いために起こることがあります。
またコンタクトプレーの多いサッカーやバスケット、空手などの格闘技は打撲のリスクが高まるものです。
打撲は軽度であれば回復が早いですが、筋肉が多く破壊され内出血すると太ももの中で圧力が高くなり危険です。
もし圧力が高くなった場合、とても痛いという症状の他にも神経が圧迫され、緊急に手術が必要になるので注意が必要です。
当然ながらこの状態ではストレッチはできませんし、内圧が高くなくても血が溜まっている状態で無理すると、カルシウムが溜まり骨のようなものができます。
ストレッチで太ももの裏が痛い原因②トリガー・ポイント
ストレッチで太ももの裏が痛い原因①のような明らかな外傷以外にも、筋肉やその周りの組織に小さな傷や循環が悪くなると、トリガー・ポイントが形成され痛みなどの症状がでます。
トリガー・ポイントの特徴は押した時に、その部分以外の離れた場所に痛みがでることがあり、多くの痛みの原因となることです。
それぞれに特徴的なパターンがありますので、太もも裏の筋肉を中心に解説します。
・大腿二頭筋この筋肉は骨盤の下にあり、座った時に椅子に当たる坐骨と太ももの骨の上の部分から、スネの外側の腓骨(ひこつ)の上に付いています。
トリガー・ポイントは太もも裏の外側部分の真ん中くらいの場所と、その少し下の部分に発生します。
ここを押して痛みがでるのは、大腿二頭筋のある太もも裏の外側と、膝裏部分です。
主な原因としてスポーツ活動で走る跳ぶといった動作時に、直接的に筋肉が傷つく場合や、長い時間座ることにより圧迫されることなどがあります。
・半腱様筋、半膜様筋半腱様筋、半膜様筋も坐骨からついていて、下の方は脛の骨の裏側まであります。
トリガー・ポイントは太もも裏の内側の中央の部分と、膝裏の内側のやや上部にあり、ここを押すとおしりと太ももの付根から裏全体に痛みが現れます。
ストレッチで太ももの裏が痛い原因③その他
原因①で解説した内出血後にカルシウムが溜まることが原因の骨化性筋炎は、関節をストレッチして曲げた時に突っ張りや痛みがでます。
脚で多いのは太もも前の大腿四頭筋ですが、コンタクト・プレーが多いスポーツでは、太ももの裏のハムストリングの部分にもできます。
治療は溜まった血を注射器で抜くなどの外科的なものがありますが、初期治療が重要で血が溜まった場合は、安静、冷却、圧迫、挙上といった処置が有効です。
他に外傷以外で太ももの裏が痛い場合は腰の神経が原因となっていることがあり、腰痛や脚のシビレがでるものが2つあります。
1つ目が腰椎椎間板ヘルニアで、背骨と背骨の間にあるクッションが壊れて背中側の神経がある部分に飛び出し、腰痛や脚の痛み、症状が深刻な場合は麻痺がでます。
2つ目は腰椎脊柱管きょうさく症で高齢者に多く、背骨が変形して背中側の神経を圧迫して椎間板ヘルニアのような症状がでます。
この2つは症状が軽ければ薬やストレッチや運動療法などのリハビリで治療し、痛みが強く麻痺がある場合な手術することもあります。
ストレッチで太ももの裏が痛い時の対処方法①治し方
太ももの裏が痛い時の対処方法として原因①では、病院に行くと妊婦さんのお腹を観察する時にも使用されるエコー検査で確認し、傷の大きさにより処置を変えます。
共通するのが固定し安静にすることですが、完全に動かせない場合は松葉杖で体重が掛からないようにし、症状の回復に従いリハビリを行うでしょう。
原因②のトリガー・ポイントでは、病院で麻酔薬の注射が行われることもありますが、ストレッチや運動療法が効果的な場合もあります。
原因③は腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管きょうさく症のところで解説したとおり、病院での適切な診断と治療が必要です。
トリガー・ポイントは他の原因と重なることも多いので、外傷や椎間板ヘルニアのような組織が変化する疾患(しっかん)の時に、治療しても太ももが痛い時は注意が必要です。
原因①から③の中で自分自身で治したり予防できるのは、原因②のトリガー・ポイントの解消と、原因①の外傷と原因③の疾患では日常生活ができるまで回復した時です。
自分できる方法は硬く強張った筋肉を伸ばすストレッチと、痛めた後に弱まった筋肉を強化するトレーニングからなります。
ストレッチで太ももの裏が痛い時の対処方法②予防
太ももの裏が痛い時に行うストレッチは目的によって、2つの方法を使い分けます。
それは様々な原因により、太もも裏の皮膚や筋膜といったタンパク質でできた組織が痛めて縮んだのを伸ばす場合と、筋肉の本来もっている伸縮作用が低下した場合での違いです。
具体的な方法として、一般的なゆっくり伸ばすストレッチと筋力を利用したストレッチを解説します。
・ゆっくり伸ばすストレッチ(硬い組織を伸ばす)
これはイメージ通りのストレッチで、ゆっくり無理なく伸ばしていく方法です。
①両足を平行にして立った状態から、太ももの裏を伸ばしたい方の足を半歩前(30cm位)に出します。
②①の状態から上半身を真っ直ぐにした状態から約70度倒し、両手は前に出した足の太ももの前に置いてバランスを取ります。
③②の姿勢から前に出した足の爪先を上げながら膝を伸ばし、胸を張っておしりを後に引いき、太もも裏が伸ばされるのを確認します。
④③の姿勢を約10秒行い、ゆっくり①の姿勢に戻ります。
・筋力を利用したストレッチ(筋肉の伸縮を回復する)
筋力を使った方法は、筋肉に力を入れた後にリラックスすると伸びる性質を利用し、ストレッチに応用します。
①仰向けで寝てストレッチする側の脚を真上に向かって膝を伸ばし、上がるところまで行きます。
②踵にタオルを引っ掛けて両端は両手で持ちますが、体が硬い場合は膝を曲げます。
③②の状態から太もも裏がストレッチした状態で踵を床に向かって下ろしますが、タオルでそれに抵抗します。
④③の状態で脚を下ろす力は感覚的に全筋力の1割程度で、タオルの抵抗と拮抗させて約3秒保持します。
⑤約3秒後、力を抜いて膝を伸ばしながら脚を真上に向かって①の位置より上げるようにストレッチします。
⑥約5秒後には③から⑤を繰り返し3回行います。
このストレッチでは、踵を下ろすの力が引っ掛けているタオルより弱いと筋肉を痛め、肉離れのような症状になることがあります。
実践する時は、急激な強い力は必要ありません。
ストレッチで太ももの裏が痛い時の対処方法③強化
ストレッチで太ももの裏が痛い時に強化する場所は、ハムストリング(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋)と大殿筋(おしりの筋肉)になります。
ここでは力の無い女性や高齢者、外傷後のリハビリでも安全に行える方法を解説します。
太もも裏を鍛える方法で有名なのは、スクワットとフォーワードランジで、最初に通常のスクワットが楽にできるようになったらフォーワードランジを行います。
・スクワット
①両足を平行にして肩幅にして両腕を前方に伸ばし、真っ直ぐ立ちます。
②爪先と膝の向きを同じにして、背中が丸くならないようにしながらおしりを後方に突き出しながら水平に近いところまでしゃがみます。
最初の股関節を曲げてから、続いて膝を曲げます。
③②から立ち上がる時は、膝を伸ばしてから、続いて股関節を伸ばします。
④②から③を10回1セットから初めて、3セットまで行えることを目標にします。
・フォーワードランジ
①両足を平行にして肩幅にし、両手を骨盤の横に添えて真っ直ぐ立ちます。
②上半身を真っ直ぐ保ったまま大きく鍛える側の足を一歩前に出し、前後の膝が約20度曲げて立ちます。
③②の状態から前脚の太ももが水平に、後脚の膝が床に付く直前まで上半身が垂直になるようにしゃがみます。
④①に戻ってから②から③を10回1セットから行い、3セットまで行えることを目標にします。
これらの太もも裏の強化は痛い場合は避け、またストレッチを行った後にしないことをお勧めします。
ストレッチで改善、筋トレで強化し再発予防
太もも裏の痛みは外傷やヘルニアのような疾患では、太ももの裏が痛い場合は珍しくまりませんが、意外に伸ばすことができない後遺症に悩んでいる方は多いです。
これは最低限必要な範囲で動かす事ができるので、リハビリを途中で終えてしまうことがあるからです。
しかしこの状態で急にスポーツしたり、とっさに力を必要とする動作で痛みが再発してしまうことがあり、ストレッチで改善、筋トレで強化し再発予防が必要となります。