社会人や学生の方の多くが毎日のように椅子に腰掛け、そしてデスクを利用して仕事や勉強をしています。
人によっては朝から晩まで長時間座りっぱなしで、腰や肩が辛くなることがあります。
ここでは腰痛になるような体に負担のかかる姿勢を改善し、ついでに筋肉を強化する方法を紹介します。
多くの職場で使うデスクと椅子そして腰痛への関係について
会社で採用されている椅子とデスクは、オフィス用の耐久性のあるものが多く、椅子の方はある程度の年数を使用後、買い換えて使用しているのではないでしょうか?
椅子へ座りデスクで仕事をするのは、足が疲れず楽に感じますが、筋肉が動かないので循環が悪くなって腰を含めた下半身に悪い影響があります。
これが毎日のように積み重なると筋肉が弱り、少しの刺激で過剰に緊張したり傷ついて腰痛になる可能性があるでしょう。
デスクは高さの調節が少しだけできるものや、最初から固定のものが多く、背が大きすぎたり小さすぎるなど、身体的特徴には対応していないものがほとんどです。
背が高すぎる人は前屈みになって腰が丸くなりやすく、長時間の事務作業をすると腰が伸びなくなり、仕事終わりなどに腰痛を訴えることもあります。
この姿勢で負担がかかるのが背中を反る脊柱起立筋と、腰骨を支える多裂筋などがあり、最後には弱くなり傷つくことで腰痛になります。
逆に背が低すぎる人は、椅子を高く上げて足が床に付かない状態になることがあり、上半身の体重をお尻だけで支え、その不安定さから腰に緊張が強いられます。
この時の腰痛は腰の真中より、お尻の上部の左右の筋肉に負担がかかり、パソコンを使用しながら横にある書類を見て捻ることなどで刺激を強く受けます。
この筋肉を中殿筋(ちゅうでんきん)といって、日常生活で体幹が傾かないようにバランスを取る働きがあり、負担がかかって痛めると腰痛だけではなくお尻まで痛みがでることがあります。
腰痛を予防するデスクと椅子の使用方法
椅子に座ってデスクで作業することで腰痛になる原因は、身長以外にも座り方や腕の位置なども関係してきます。
通常、椅子に座る時は深く腰掛けて、背もたれに上半身を預けるような姿勢になり、このまま長時間いることが多いのではないでしょうか。
この姿勢で問題となるのは、腰とお尻の筋肉が負担のかかる位置で伸ばされ、椅子から立ち上がる動作で痛めることがあります。
この原因は、筋肉が悪い姿勢により伸びているので、動かす時にさらに伸ばされながら力が出てしまうからです。
筋肉は伸びない状態で引っ張られる時に傷つきやすく、緊張して硬くなってる時や緩んで伸ばしきっている時から力が加わると、軽い力に見えても痛みが出やすいのです。
対策としてデスクと椅子の使い方がありますが、デスクは高さの調整ができないものがあるので、椅子の座り方を工夫してみましょう。
椅子に長時間に渡り座る時に背もたれに上体を預けず、骨盤を立てるように前半分のところに坐骨(お尻の座る時に当たる骨)を当てて座ります。
この時に椅子の高さは足が床にしっかり付いた状態で、股関節が90度の角度より少し伸ばした位置になります。
股関節が90度より曲げると背中が丸くなり、腰痛になりやすいので注意が必要です。
腰痛以外にも効果的なデスクと椅子の使い方
デスクと椅子の使い方で腰痛の予防以外でも、肩こりや頭痛の対策も工夫することが可能です。
肩こりや頭痛も負担のかかる姿勢により症状が出ることが多く、その原因となる姿勢は腰痛が出る時と同じです。
椅子の座り方が悪く腰が丸くなると、その上の上半身も前傾になるので、頭の重さを支える力が過剰に肩や首に加わります。
この姿勢では腰痛が出る原因と同じく、緊張状態が続いて筋肉が固く弱くなり傷つくことで症状が出ます。
この姿勢を改善するにはデスクの調節が不可欠ですが、高さが自由になるデスクで仕事をしている人は少ないですが、体に合わない高さが辛い症状の原因であることは間違いありません。
デスクが身長に対して低すぎると頭がより前に垂れるので、首に負担がかかりやすく首こりや頭痛が出る可能性があります。
またデスクが身長に対して高すぎると肩が上がって、肩こりとして感じる僧帽筋というところが緊張しつらい症状が出る可能性があり、さらに酷ければ腕までシビレが出る可能性もあります。
これらの肩こり対策として、書き物やパソコン操作をする時に、デスクと肘の位置を調節する必要があります。
上半身を真っ直ぐにして腕を自然に垂らした状態から、前腕を前に出すように肘を約90度曲げてください。
そこから肘を少し(10~15センチ位)前に出し、手の平を下に向けたまま前腕はデスクと平行になるように肘を伸ばします。
この位置でパソコンのキーボードが自然に押せる高さを基準に、デスクに対応して椅子も高さを合わせてください。
この時、椅子に座った場合、デスクによっては足が床に付かない時がありますので、床に台を作って足を乗せ、股関節を90度より少し伸ばす位置で座ると肩と腰が楽です。
椅子を使った腰痛改善方法
腰痛の原因はたくさんありますが、ここでは長時間椅子に座ってデスクを使用することで緊張、または弱くなってしまった筋肉を改善する簡単な筋トレを解説します。
筋トレの目的となるのは腹筋周りとお尻の筋肉で、椅子や身近にある道具を利用して行います。
1つ目は腹筋周りの筋トレで、お腹の前の腹直筋とインナーマッスルとして有名な腸腰筋を同時に鍛える方法を解説します。
①椅子の前半部に座り、足を床につけ両膝の間にタオルかハンカチを挟みます。
②上半身を真っ直ぐにして丸くならないように保ち、その姿勢のまま背もたれに倒れて上半身の体重を乗せます。
②膝の角度(70~90度)を変えないで、太ももを股関節90度位になるまで太ももを上げて行きます。
③②から今度は元に戻るように足を床につけます。
④②と③をゆっくり10秒位かけて行うのを1回として、5~10回行います。
このトレーニングは、不安定なキャスター付き回転椅子で行う場合は、バランスを崩して転倒しないように注意しましょう。
またこのトレーニングは朝仕事を始める前に行うと、筋肉を刺激することによる成長ホルモンの影響で血中に体脂肪が入り込むので、そのまま体を動かせば脂肪が消費されてダイエットにも最適です。
ただ夕方まで座り続けて立ち上がることが無い場合は、脂肪を燃焼する機会が少ないので、昼か夕方の仕事終わりに行うと筋肉がほぐれて効果的です。
デスクを使った肩こりの解消法
椅子に座りデスクで仕事をすることで肩こりや腰痛になる原因は、姿勢から症状が出ることは解説した通りですが、他にも背中の大きな筋肉からも影響があります。
改善したい肩こりの原因となるのは、背骨に沿って支える脊柱起立筋と骨盤から上腕まである広背筋が弱くなり固まってしまう部分にあります。
特に長時間に渡って椅子とデスクの悪い使用法で作業すると、背中が反れなくなって腰や肩が痛みます。
対処法としてはカウンターとなる背中を反るストレッチが有効ですが、ここでは職場で一般的なキャスター付きの回転椅子を利用した方法を解説します。
①キャスター付きの椅子に座り、足は床につけてデスクから両膝が出る程度に離れてください。
②①の姿勢から上半身を前に倒して行き、両肘をデスクの上に乗せ前腕は90度に曲げて手の平側がデスクに向かうようにし、重ねた両前腕の上におでこを乗せます。
③②の姿勢から椅子を後ろに滑らせるのと同時に背中を反るようにストレッチします。
④③の姿勢を10~15秒位行い、背中が丸くなって固まった時に行ってください。
このストレッチする時に椅子の高さは、膝の高さ位から始めると効果的ですが、より刺激が欲しいのであれば少し椅子を低くしましょう。
ストレッチで共通するのは、気持ちの良い範囲で行うことです。
椅子に座りすぎる事で悪化する病気
椅子に座ってデスクで長時間に渡り仕事をすることで、腰痛や肩こりが発生するのは分かりやすい現象ですが、それ以外にも重大な健康被害があります。
一番の問題は下半身の大きな筋肉を動かさないことで、血のめぐりが悪くなり糖や脂肪の燃焼が少なくなることです。
最近の研究によると、1日4時間より少ない時間しか座らない人より11時間以上座っている人の方が、何かの病気による命の危険性が40パーセントも高くなるようです。
座りすぎによる代表的な病気は、成人病や運動不足が原因となるものと重なり、脳梗塞(のうこうそく)や心筋梗塞(しんきんこうそく)、狭心症、糖尿病などがあります。
他にも肺や肝臓のがんなども患いやすく、慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)のような肺が壊れ、治らない息切れなどの症状が出る病気もあります。
これは定期的に運動している人でも、仕事などで一日中座り続けていることで体を壊す危険性があるので、実際どのくらい座っているのか確かめて見るのも大切です。
この対策として、職場や自宅などで椅子に座らないで立った状態で作業する時間を増やすことです。
オフィス家具のメーカーによっては、約15万円前後で電動昇降機能が付いたデスクを販売しており、立った状態で仕事をして疲れたら低くして座ることができるものです。
安く済ませたいならホームセンターで、デスクの天板代わりになる板と脚にできる板や棒を購入して作成すると、ハイデスクが約1~2万円ほどで完成します。
生活を見直すことで体調の維持を
普段から椅子に座ってデスクで仕事をしている方は、その姿勢自体が健康に関係していることを意識していないでしょう。
ちょっとした工夫で腰痛や肩こり、重大な病気を防ぐことができるので、積極的に椅子から立って動くことが重要です。
これは家族や職場全体で取り組むことで、自分も周りの人たちも健康になるので、正しい知識を多くの人に伝えてみんなで取り組むことが効果的です。