椎間板ヘルニアという傷病名は、メディアによる紹介などで一般的に知られるようになりました。
腰痛で病院に行った時に、レントゲン検査でヘルニアの疑いを医師から知らされた方もいるでしょう。
この時に椎間板ヘルニアとその名前を聞いただけで恐怖を感じ、どうしたら良いのか不安になってしまうものです。
そこで恐ろしげな椎間板ヘルニアを解きほぐすように理解し、痛みなどの症状を和らげる方法を紹介します。
つらい腰痛がでる椎間板ヘルニアとは?
腰痛になる椎間板ヘルニアを理解するには、背骨の構造を椎間板とヘルニアの2つに、それぞれイメージすることが重要です。
1つ目の椎間板とは、24個ある背骨の間にクッションの役目として存在しています。
実際に弾力性があり、衝撃を和らげるのに役立っています。
そして2つ目のヘルニアとは、飛び出す(ここでは椎間板から)という意味です。
腰痛に関係があるのは、背骨の腰の部分である腰椎の椎間板が傷つき、神経がある背中側へ飛び出す腰椎椎間板ヘルニアです。
ヘルニアは他にも、首や胸の部分の背骨にある椎間板でも可能性があり、腸が股の付け根から飛び出す鼠径ヘルニアや、胃が食道の境目の横隔膜から上に飛び出す食道裂孔ヘルニアなどがあります。
今までヘルニアと聞いて何か病気そのものと感じていた方も多いと思いますが、単に体の組織の何かが飛び出しているという状態を表しているのです。
もちろんヘルニアのある場所によってはすぐに治療が必要なものもありますが、腰痛などの症状を同一と考えないことも大切です。
ここでは、腰椎椎間板ヘルニアについて特徴や症状、それに伴う腰痛を和らげる方法を解説していきます。
椎間板ヘルニアと腰痛の関係
椎間板ヘルニアでは、壊れた椎間板の部分が背中の方へ飛び出し、背骨の中に通っている神経を圧迫します。
それにより腰痛の他、神経が脚まで伸びている関係から、太ももの裏からつま先まで痛みや痺れ、感覚がおかしくなることもあるようです。
このことから腰痛が長引き、時間が経っても痛みが和らげることができない場合でも、脚への痛みや痺れなどの症状がなければ、椎間板ヘルニアが原因ではない可能性があります。
ところが、実際に腰痛のみで脚まで症状がない時でも、病院でレントゲン検査をして椎間板ヘルニアがあると診断された方もいます。
しかしこれは背骨と背骨の間が狭くなっているので、腰痛の原因として確定した訳ではなく、椎間板ヘルニアという体が変化した1つの形が存在するという意味です。
本来椎間板ヘルニアの存在を確定するには、CTスキャンやMRIという体を輪切りにして細かく体内が見られる装置を使います。
このCTやMRIで椎間板ヘルニアを観察すると、椎間板が膨らんでいたり、壊れて飛出しヘルニアになっているのが分かります。
しかしこれは、腰痛や脚の痛みがある人以外にも多く存在しています。
研究により結果に差がありますが、腰痛のない人の4人に3人は椎間板ヘルニアや、椎間板の膨らみがあるという外国の調査もありました。
このことから椎間板ヘルニアと診断されても必要以上に恐れず、そういう状態であり腰痛とは必ずしも関係ないという気持ちだと楽に感じられるはずです。
実際に椎間板ヘルニアで腰痛や脚の痛みや痺れがあっても、多くは時間が経つと改善することも頭に入れておきましょう。
椎間板ヘルニアの腰痛を和らげるには?
腰痛椎間板ヘルニアによる腰痛や脚の痛みなどを和らげる方法は、大きく分けて2つあります。
1つ目は手術をしない方法で、痛み止めの薬を服用したりリハビリで症状の回復を目指します。
この痛み止めの薬は、消炎鎮痛剤と呼ばれる薬でドラックストアでも購入できる成分が入っています。
もちろん病院で処方される消炎鎮痛剤の方が有効成分が多く入っているため、症状を和らげる効果が強いです。
注意が必要なのは、薬の副作用で胃腸を痛めるなどの副作用があり、同時に処方される胃薬を事前に飲んでおくことが重要です。
リハビリでは、痛みでこわばった腰や脚の筋肉を緩めるのに電気を利用した器具を使用したり、運動療法で弱った筋肉や関節を回復させます。
他にも背骨の神経に近い部分へ直接薬を注射する硬膜外ブロックや神経根ブロックがあり、薬やリハビリで効果がない場合や、症状が強い時に行うことがあります。
2つ目は手術する方法があり、手術しない方法で効果がでない場合や脚の痛みが強い時に手術をして回復を目指します。
手術する方法は、脚の痛みなどの症状の改善に有効な場合がありますが、腰の痛みには効果がない時が多いようです。
また5年10年という経過を見てみると、手術しない方法と症状の改善の差はあまりなく、80~90パーセント位のヘルニアは手術しなくても治ることがあります。
もし手術をするのならば、強い脚の痛みがあって生活上問題があり、一時的にでもその状況から早く逃れたいのなら、検討する価値があるでしょう。
椎間板ヘルニアの症状を和らげる体操
病院でのリハビリ以外でも、椎間板ヘルニアを和らげることができる体操があります。
初めに椎間板のヘルニアがどうして起こるかを理解すると、体操の効果が分かるでしょう。
例えるとコンニャクを両手ではさみ、手首側だけ強く圧迫すると、指先側に滑っていくような状態です。
これが椎間板ヘルニアが飛び出すイメージに近く、背中が丸くなってお腹側の椎間板が潰され、後ろの背中側へ飛び出す圧力が加わり、結果として神経圧迫により症状が出るのです。
これとは逆に背中を反らすようにする体操をすることで、椎間板への背中側への圧力が減るのです。
体操の見た目は腰痛がより悪化しそうですが、実際のところ背骨を反るのと同時に上下へ伸びるようにも力も加わるので効果的と言えます。
具体的な方法は以下の通りです。
①布団か寝そべっても痛くない床にうつ伏せに寝ます。
②肘を肩の下にして前腕を前に出して手の平は床につけ、スフィンクスのように上半身を起こしてください。
③②の姿勢を約30秒位続け、慣れたら少しずつ時間を延ばし5分位まで行いましょう。
④①に戻ってからゆっくり起き上がり体操終了です。
この方法が楽に感じてきたら、②の姿勢から肘を伸ばして上半身を痛みが強くならない程度に起こすとより効果的です。
これを1日5回から行い、無理をしないで回数を増やしいき1日最大10回行います。
この体操で痛みが改善されなかったら、中止をして様子を見ましょう。
痛みが和らげることができない危険なヘルニア
前半で解説したように腰椎の椎間板ヘルニアは、何も症状が無いものから腰痛と脚の痛みや痺れの出るものまであります。
可能性としては稀ですが、椎間板が通常より大きく飛び出し神経を圧迫するタイプのヘルニアもあります。
この場合は、痛み以外に感覚が無くなったり動かなくなる麻痺が主な症状で、馬尾症候群と呼ばれているものです。
馬尾症候群とは、腰の背骨の中に通っている神経が馬の尾のように細くバラバラになり足へと繋がっていて、それが圧迫されることで様々な症状が出ることです。
代表的な症状は膀胱障害ではトイレで尿が出なくなったり、いつまでも残っている感覚がある他、自分の意思ではコントロールできずに漏らしてしまいます。
他にもサドル麻痺という、自転車の椅子に座った時に触れる部分で、お尻や太ももの後ろと股の間の感覚が無くなる症状があります。
また性器に焼けるような感覚など異常があり、さらに馬尾症候群になった半分以上の人が肛門の筋肉が緩み、ここから便を漏らすこともあるでしょう。
もし馬尾症候群の症状がでたら、危険な症状を和らげるために手術ができる、専門の病院へ行くようにしてください。
症状が出てから約48時間以内に圧迫を取り除かないと、後遺症で麻痺が残る可能性があります。
腰痛を和らげるより治療が必要な病気
椎間板ヘルニアによる馬尾症候群以外にも、同じように腰や脚に症状が現れる病気があります。
そこで命の危険がある病気を3つ紹介します。
1つ目は腰にできる悪性腫瘍(がん)で50歳以上に多く、原因が分からない体重減少や、何もしていなくても痛む場合と、1か月以上治療しても痛みを和らげることができない時に注意が必要です。
2つ目は脊髄感染症で、病気の治療で尿道カテーテルをしてそこから尿路感染したものや、糖尿病などで免疫が弱くなっている時の皮膚感染症や注射などから感染し腰などに痛みの症状がでます。
この感染症は、熱が出ないこともあるので注意が必要です。
3つ目は骨がスカスカになる病気と間違えられやすい、多発性骨髄腫というものがあります。
稀な病気ですが痛みの場所が腰、肋骨、背中と移動するのが代表的な特徴で、高齢者に見られる骨髄のガンです。
他の症状としては、貧血や発熱、鼻血や内出血が出やすい、体重減少などといったものがあります。
この病気はレントゲン検査だけでななく、血液検査も行うことが必要です。
この3つの病気の他には、背骨が潰れる圧迫骨折があり、何か重いものを持ち上げた時、または骨がスカスカな為にいつのまにか骨折していることがあるのが特徴です。
圧迫骨折で急に腰痛になった場合は、整形外科で見てもらい無理をしないことをオススメします。
痛みにとらわれないで積極的に
ヘルニアになると痛みや脚の痺れから日常が消極的になり、仕事やスポーツなどに支障が出てしまうことがあります。
これは診断名が一人歩きして不必要な恐怖を煽り、ほとんどが手術しなくても治るものであることを知らないことにあります。
病院でも積極的なリハビリなどを推奨し、腰痛や脚の痺れは回復するものとして治療されてきています。
もしヘルニアがあっても、正しい情報を収集し積極的に治療し改善していきましょう。