ヘルニアの影響で痺れが出る。どのような治療になるの?

最終更新日:2024/02/29

お尻から太ももにかけて痺れが出ている。腰痛もあるからヘルニアかもしれない!?
ヘルニアになったら手術するしかないの?手術しないで治療出来ないの?そもそもヘルニアってどんな症状なの?このような疑問を解決していきたいと思います。

ヘルニアは腰痛と痺れの複合攻撃

近年椎間板ヘルニアは若い世代にも見られ、「現代病」とも言われるようになりました。ヘルニアとは「突き出した状態」という意味で、椎間板ヘルニアとは「椎間板が突き出た状態」のことを指し、単なる腰痛ではなく神経まで痛みが達した状態のことをいいます。私達の身体の中心を通る背骨(脊椎)は24個の椎骨から成っていますが、各椎骨の間に有ってクッションの役割を果たしているのが「椎間板」です。
この椎間板は「繊維輪軟骨」と「髄核」から成っており、柔らかい髄核を柔軟性の高い繊維輪軟骨が包んでいます。これはちょうど大福のあんことお餅の関係に似ています。ヘルニアは大福の皮の部分、つまり繊維輪軟骨が破れ、中のあんこ、髄核が飛び出た状態を言います。
このとき飛び出た髄核が末梢神経の束である脊髄を圧迫し、強い痺れと痛みを発するのです。
この椎間板ヘルニアの症状は、直接痛みや痺れを感じる大腿部や臀部、足に原因があると考えられがちですが、実は原因は背骨を通る脊髄の中にあるのです。
もし足や臀部に痺れや痛みを感じたら、まずは腰の上げ下げと痺れが連動しているかを確認してみて下さい。
「痺れが酷くてとても出来ない」ならほぼ椎間板ヘルニアと言えます。
もし腰が抜けるような感覚があれば、ぎっくり腰など、急性の炎症の可能性があります。

ヘルニアの痺れは悪化していく

椎間板ヘルニアの代表的な症状として坐骨神経痛が挙げられます。
これは坐骨神経に沿って下肢に現れる痛みや痺れで、主にどちらか片側、お尻から太腿の裏、ふくらはぎにかけて現れます。
症状の度合いにより両側に症状が出ることもあるようです。
つま先立ちやつま先に力を入れることが困難になるといった麻痺や筋力低下も顕著に見られます。

1:日常生活での坐骨神経痛につながりやすい動作 
・15分ほど座る
・20分以上歩く
・前傾姿勢を取る
・咳
・くしゃみ
・排便など 
※症状が酷い時は安静時でも痛みや痺れが出ます。

2:症状が出る順番 
下肢の痺れ→下肢の痛み→下肢の麻痺(感覚異常、動かせない等)

3:末端ほど悪い 
痺れの出る部位は太腿、ふくらはぎ、足首、足の指と末端にいくほど症状は重く、坐骨神経への圧迫も強いと言えます。

4:痺れの感じ方 
坐骨神経が圧迫されたときの感覚は人によって様々ですが、ピリピリする感覚や、熱/冷感、もやっとした感じ、筋肉痛や肉離れに似た痛み、つっぱる感覚などで表されることが多いようです。
下肢の痛みや痺れの部位は脊髄のどの箇所でヘルニアを起こしているのかに関連しています。
太腿の全面中央から膝の内側にかけての痺れなら第三腰椎神経、すねの内側から足の親指にかけての痺れなら第四腰椎神経、すねの外側から足の甲、足の裏側にかけての痺れなら第五腰椎神経、すねの外側から小指にかけての痺れなら第一仙椎神経です。

ヘルニアの痺れの対策と治療

ヘルニアと診断されても、ただちに手術の心配をする必要はありません。
腰痛や坐骨神経痛といった腰や脚の痛みの多くは、「トリガーポイント」と「インナーマッスル」の機能低下によるもので、この2つの改善によりヘルニアがあったとしても痛みや痺れなどの症状は緩和しますし、再発の予防にもなるのです。
トリガーポイントは痛みの原因となる筋肉のしこりで、身体の至る所に存在します。
本来背骨(脊椎)は、背筋や腹筋といった外側の抗重力筋群と内側のインナーマッスルで支えられています。
腹横筋、多裂筋、骨盤底筋群といったインナーマッスルは身体の内側から圧力で脊椎を正しい位置で支えています。
これらインナーマッスルの筋力の低下により腹圧が低下し脊椎を支える力が弱くなると、一部分に圧力がかかりヘルニアが発生します。
腹圧を高め脊椎を支える力を回復すれば、脊椎や椎間板への圧迫を回避できます。
たとえヘルニアがあっても周囲の筋肉で背骨や腰を支えることにより、症状も改善されるのです。
痛む部分をかばうために起こる柔軟性や筋力の低下、姿勢の悪化にはストレッチが有効です。
骨盤周囲筋の柔軟性の低下が腰椎や骨盤の動きに悪影響を及ぼさないよう、腰と一緒に下肢もストレッチしましょう。
これが患部や全身の血流を促進し、症状改善に繋がります。
たとえ一時的な鎮痛でも、それによる生体反応が生理的な痛みの回復を促進することがわかっています。

ヘルニアの痺れや痛みが酷いときの治療

保存療法での治療開始後、数か月経っても効果がみられなかったり麻痺が強まる場合、あるいは排便時の括約筋の機能低下が認められる場合には手術が必要となります。
下肢の運動麻痺や括約筋の機能低下は、重症化してからは改善しにくくなるため手術は初期であるほど望ましい、特に注意を要すべき所見です。
手術は通常全身麻酔で行われ、患部の腰椎を中心に4~5cmの皮膚を切開し、圧迫している神経を保護しながらヘルニア塊を摘出します。
所要時間は60~90分程度です。
術後約3ヶ月はコルセット装着が必要で、その後リハビリに移行となります。
順調にいけば開始数日後で立位訓練や歩行訓練に移り、傷口の状態により退院のタイミングを決めていきます。1ヶ月もすれば簡単なデスクワーク程度は再開できるようになります。
最近は内視鏡での摘出など、より低侵襲化(身体への負担を減らすこと)が進み、入院期間や就労再開までの期間短縮などのメリットにも繋がっています。
ただしすべての患者に適合するわけではないので事前によく相談することが不可欠です。また手術はヘルニアの切除や摘出にのみ適用され、傷んだ椎間板を修復するものではありません。
ですので術後早々に急激な負荷をかけたり、正しい方法による体幹強化を怠ったりすると、再発してしまうこと(5年後の再発率は4〜15%)もあるようです。

ヘルニアの手術の種類

ラブ法とは、切開によりヘルニアを切除する最も基本的な手術法です。
患部の皮膚を3〜4cm切開し、神経を圧迫しているヘルニアを摘出します。
ヘルニアを直接切除して神経の圧迫を取り除くので、脚の痺れといった症状緩和に繋がります。
全身麻酔で行われ、所要時間は30分~1時間。入院期間は10〜13日程度。健康保険が適用されます。
またより小さい傷口から顕微鏡を使用するマイクロラブ法もあります。
さらに、内視鏡を使用してラブ法よりも切開範囲が小さい(2cm程度)MED法(内視鏡下椎間板切除術)は、体に与えるダメージを極力抑え、入院期間も約9日と短く、術後の痛みや炎症の度合いもラブ法より軽く、健康保険も適用されます。
PLDD法(経皮的レーザー椎間板髄核減圧術)は、局所麻酔後に背中から針を通して照射されるレーザーにより、椎間板を委縮させてヘルニアを引っ込める治療法です。
腰椎椎間板ヘルニアの治療の中でも体への負担が少なく傷口も目立たず、日帰りが可能です。
局所麻酔で行われる手術のため所要時間も15分程度ですが、保険は適用外となっています。
PN法(経皮的髄核摘出術)は局所麻酔を打ち、背中から通した約4mmの管に特殊な鉗子を挿入し、X線透視下(もしくはMR透視下)で飛び出た髄核を摘出します。
これにより内圧が下がり、神経への圧迫が軽減します。所要時間も30分~1時間程度。日帰りも可能で健康保険も適用されます。

効果の薄いヘルニアの痺れの治療がある

整形外科では今だに「牽引療法」を行う所もありますが、最近の発表によるとこの方法による効果は、腰の周囲の筋肉へのストレッチ程度だそうです。
マッサージ療法は腰の筋肉を緩め、突き出た椎間板に背中から圧力を加えるやり方ですが、これも一時的で、力加減を謝ると悪化することもあり要注意です。
温熱療法は患部を温め血流を促進し、症状の緩和を目指すものですが、効果は自宅での入浴と同程度とのことです。
腰椎間板ヘルニアはほっておくと自然消滅するという研究結果もあるようですが、日常生活で発症するケースがほとんどなので自然消滅はあまり期待できません。
病院では飲み薬や湿布などの消炎鎮痛剤やブロック注射を自然消滅までの「つなぎ」として処方します。
飲み薬では、強い副作用のある「ステロイド」の代わりにセレコックス、ロキソニン、インドメタシン、ボルタレンが主に使われ、他に解熱作用を持つアセトアミフェン、オピオイド系鎮痛薬(モルヒネなど)、痛みの神経の活動を抑えるノイロトロピンなどがあります。
ブロック注射は打つと下肢に電流のような刺激がありますが、これは傷んだ神経によるもので、次第に和らぎます。
効果は約1週間持続しますが、1回で痛みが取れる人や、5回打っても症状が緩和しない人などがいて、手術が回避できる確率も半々です。
通常は5回までしか打ちません。
打った翌日に痛みが再発する人には無効とされてしまうケースもあるようです。

ヘルニアにならないために

ヘルニアは柔軟性欠如と腰に負担を掛ける体の使い方にほとんど原因があります。足が痺れて、ヘルニアと診断され、治療をしっかりと受けて痛みと痺れが無くなっても、今まで通りの生活をまた送ってしまう方は、ほとんど間違いなくヘルニアを再発することでしょう。ヘルニアは腰への負担を減らせれば、ヘルニア状態のままでも痛みや痺れは解消できます。そのためには、生活習慣を一から見直し改善していくことが必要です。

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