スポーツトレーニングでは、体幹トレーニングを導入することは、今や常識のようになっています。
トレーニング方法も様々なやり方が紹介され、クラブチームや子供達の部活動で行われています。
ただその中には体幹トレーニングを行うこと自体を目的としてしまい、肝心の各種競技に繋がっていないことがあります。
ここではバドミントンの基本と関連する体幹トレーニングを中心に、パフォーマンスの向上に役立つ方法を紹介します。
バドミントンでの体幹トレーニングの重要性について
バドミントンの動作を突き詰めると、ストロークとフットワークに行き着き、この2つの動作を組み合わせることで成り立ちます。
ラケットを操作するストロークでは、上から打つクリアとスマッシュなどや、下から打つレシーブなどがあります。
そして中間の位置で打つドライブなどの3つに分けられます。
このストロークで重要な体幹トレーニングは、上から打ち下ろす時に働く広背筋と強力なドライブなどに必要な大胸筋、それと連動する腹部の筋肉が対象です。
腹部の筋肉では動作の大きな動きは腹直筋や外内腹斜筋が働き、大きな動きのインパクトの瞬間や、小さく鋭い動きの時に体幹を安定させる腹横筋がトレーニングの対象となります。
フットワークでの体幹トレーニングでは、脚を上げる腸腰筋や体の移動やジャンプの時に強い力を出す大臀筋と、それに連動するハムストリングス(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)です。
バドミントンに限らず腕を使って脚を動かし移動する動作は、体幹にある筋肉を効果的に使わないと疲労しやすく、大きな力も出しにくくなります。
これは腕一本の力より、体の胴体に付いている筋肉の方が大きく、腕や脚と合わせて使った方が力が強いからです。
ここでは普段の練習で行いやすい4つの体幹トレーニング方法と、バドミントンの基本の動きにつなげる方法を解説していきます。
①バドミントンに役立つ広背筋を狙った体幹トレーニング方法
腕を振り下ろすのに重要な筋肉は広背筋で、この筋肉を鍛える体幹トレーニングをすると、腕の筋肉だけでは出せない力やスピードを発揮します。
広背筋は腰の骨盤の上の部分から背中全体の下3分の2くらいを覆い、脇の下を通って上腕の内側上部に付いている大きな筋肉です。
この筋肉でのバドミントンでの動作は、上から振り抜くオーバーハンドストロークのように、上げた腕を下に降ろすことです。
この筋肉を鍛える方法はトレーニングマシンを使い、ラットプルダウンやローイングといった方法を使うのが効果的です。
しかし、このトレーニングマシンは体育館やスポーツジムに行かなければできません。
そこで自宅やいつも練習する体育館でも行える、簡単な方法を解説します。
・広背筋トレーニング
①腕立て伏せのように両手、両足指の爪先を曲げて肩幅で床につけます。
②両腕、両脚を伸ばし体幹は真っ直ぐにします。
③②の姿勢から両腕、両脚を伸ばしたままお尻を天井方向に上げていきます。
④③の動作を続けてお尻を上げ、伸ばしたままの両腕と体幹が横向きで見ると一直線になるようにします。
⑤④の姿勢から今度は床にお腹が付く直前まで、背を反らしながらお尻を下げて行きます。
⑥③から⑤を1回として10秒位で行い、5回から10回連続するのを1セットとして、最大3セット行ってください。
このトレーニングは広背筋の他にも、三角筋や上腕三頭筋も同時に鍛えられます。
②大胸筋狙いのバドミントン用体幹トレーニング方法
腕に力を伝える筋肉でもう1つ重要な筋肉が大胸筋で、胸の真中辺りから上腕の前に付いています。
この筋肉でのバドミントンの動作は、シャトルを前に押し込むプッシュのように腕を前に強く押し出すことや、ドライブやレシーブのように下や横からラケットを前に振ることです。
この部分のトレーニングは、ダンベルやバーベルなどの重さがある器具を使用することで効果的に鍛えられます。
ただこのトレーニング方法の欠点として、耐えられない重さで行うとケガをしていまうことです。
ここではより体幹トレーニングとしての効果が分かりやすい、安全な器具を使わない方法を解説します。
・大胸筋のトレーニング
ここでは一般的な腕立て伏せのトレーニングに、効率よく大胸筋を刺激するコツを加えます。
①最初に手を広げる幅を決めるため、バンザイするようにV字に手の平を正面して上げます。
②①の姿勢から手を正面に向けたまま腕を前に行かないようにして、体の側面に沿って肘を肩が下がり止るまで下ろしましょう。
③この上腕の位置で肘から手を床に向けて腕立て伏せの姿勢になります。
④手は肩の高さで幅は体幹の横幅の1.5倍位になり、足は肩幅に開きます。
⑤①から④で作った姿勢から腕を伸ばして、完全に伸びたところから体幹を下ろして行きます。
⑥体幹を肘の角度が90度位になるところで止め、そこから⑤の姿勢にして行きましょう。
⑦⑤から⑥を1回として約10秒で行い、5回から初めて10回連続するのを1セットとして、最大3セット行います。
このトレーニングでは手の幅と、広背筋の時のように体幹が反ったりしないようにするのがコツです。
③腸腰筋と大臀筋を同時に使う体幹トレーニング方法
下半身に力を伝える体幹トレーニングで重要なのは、股関節の曲げ伸ばしを行う腸腰筋と大臀筋です。
腸腰筋は背骨の腰の部分の内臓側から骨盤の中を通り大腿骨の上部内側に付く長く大きい筋肉で、太ももを素早く上げて足を踏み込む時などに使います。
また大臀筋はお尻の盛り上がる部分の筋肉で、骨盤の上の部分から大腿骨の上の後ろ部分に付き、脚をスイングするように伸ばすことで、ジャンプや踏み込みなどの原動力になります。
この2つはバドミントンのフットワークでは連動して動くので、同時に鍛えられる方法を解説します。
・腸腰筋と大臀筋のトレーニング
①足を並行に肩幅で立った状態から、床に両膝をついて中腰の姿勢になってください。
②片方の足を股関節と膝関節を90度にして前に踏み出し、後ろに残った方の足の指を曲げ爪先を立てます。
③②の姿勢から体幹を床に対して垂直にし、両方の脚には体重を半々にして膝と股関節を伸ばして行きましょう。
④膝と股関節を伸ばしきったら、②の姿勢に戻るようにしゃがみます。
⑤②から④を1回として約10秒で行い、5回から10回連続するのを1セットとして、最大3セット行ってください。
⑥脚を踏み変えて、⑤と同じようにします。
この体幹トレーニングは体重を脚に半々にすることで前脚では大臀筋とハムストリングス、後脚で腸腰筋が刺激されます。
④腹横筋と腹直筋でバドミントン用の体幹を仕上げる
腕や脚に力を伝える体幹トレーニング方法の効果を最大限引き出すためには、その基点となるお腹周りの筋肉が重要になってきます。
このお腹周りの筋肉で重要なのは、体幹を強く固定する腹横筋とお辞儀をするように曲げる腹直筋です。
腹横筋はお腹の筋肉の一番奥にあり、腰痛でサポートするコルセットのように働き、バドミントンで鋭く強い打ち方の時に腹圧をかけて体幹を強靭にします。
腹直筋は鳩尾の部分から腹の一番下の恥骨という骨に付き、スマッシュやプッシュなど体幹を瞬間的に曲げる時に働きます。
・腹横筋と腹直筋のトレーニング
①仰向けで手は体の横で楽な位置にして床に寝てください。
②両膝の間にタオルかクッションを挟み、90度位まで曲げて足裏は床に付けます。
③②の姿勢から膝の90度の角度を保ち、両太ももを股関節90度位まで上げていきましょう。
④③の姿勢の時に腰が床に押し付けられるのを確認し、お腹を凹ませてください。
⑤お腹を凹ませたまま、②と③を約5~10秒かけて行うのを1回として、5~10回1セットを最大3セット行います。
体幹トレーニングをバドミントンの動作に繋げる方法
バドミントンの実際の動作で多用されるのが、ちょうど人差し指を親指で押さえて弾く「デコピン」のような動きです。
基本的にはこれまで解説した体幹トレーニング方法に一工夫することで行えます。
・広背筋
バランスボール(65センチタイプ)を利用すると簡単です。
①足を肩幅に開き、壁からバランスボールの大きさ(65センチ)と同じくらい離れて立ってください。
②両腕を肩の真上に上げ、手を重ね(利き腕を前)て壁と前腕の間にバランスボールを挟みます。
③ヘソから上の体幹でお辞儀するようにして、前腕でボールを弾むように20回位連続して押してください。
このトレーニングでは肩周辺に余計な負担がないように、全体重を乗せないことが重要です。
・大胸筋
①を肩幅に開き、約30センチほど離れて立ってください。
②手は肩の高さで幅は体幹の横幅の1.5倍位にし、体幹を真っ直ぐにしたまま壁に手を付きます。
③肘を曲げていき、一番大胸筋の部分に負荷がかかるところで止めましょう。
④③の姿勢から肘を軽く弾むように伸ばし、また③の姿勢に戻るのを連続して10回くらい行います。
このトレーニングでは、強く弾むようににするとケガをしてしまうので、リズミカルに軽く行えることを目標としましょう。
・腸腰筋と大臀筋
①足を並行に肩幅で立った状態から、床に両膝をついて中腰の姿勢になります。
②①の姿勢から膝と股関節を伸ばし、完全に伸びるのと①との中間で止まりましょう。
③②の姿勢から軽く弾むように前脚を瞬間的に伸ばし、直立するように立ちます。
④①と②を最大10回行い、反対の足を前に出し同じ回数行ってください。
腹横筋と腹直筋は、トレーニングの時に軽くお腹を引っ込めて腹圧をかけることで応用します。
シンプルなトレーニングを実際の動きへ
体幹トレーニングは感覚的な要素が強く、効果がどのように現れているのか分かりにくいことがあります。
そんな時はここで紹介したトレーニングを参考にすることで、見慣れたシンプルな方法から取り組むことができます。
体幹トレーニングや持久力トレーニングは重要ですが、多くの時間を使ってしまうとバドミントンの練習ができません。
トレーニングを行うには、短時間で効果的なシンプルな方法が重要です。