側弯症とは脊柱が側方へ曲がり、ねじれも加わる病気です。
突発性側弯症は小学校高学年から中学校時代に発症することが多いです。
また男子に比べ女子の患者数は5倍から7倍とされています。
ですが決して治らない病気ではありません。
ここでは手術後の後遺症や手術方法などご紹介していきます。
側弯症の主なタイプ
側弯症という名前を聞いたことがあるでしょうか。
側弯症と言いましても、いくつかのタイプがあるのですが、圧倒的に多いタイプは特発性側弯症です。
その他にもいくつかのタイプがありますのでご紹介したいと思います。
まず、特発性側弯症とその他の側弯症との違いをご説明致します。
1.特発性側弯症
側弯症自体の発生原因はいまだによく分かっておらず、原因不明の側弯症のことを特発性側弯症と言います。
2.先天性側弯症
先天性側弯症とは、生まれた時すでに発症している状態のことです。
出生前の脊椎形成時期には、すでに発症しております。
椎体の一部が完全に形成されていなかったり、適切に分節化しなかったりすることによって生じます。
3.神経筋原性側弯症
神経と筋肉に影響を与えるほとんどの病態が、脊柱側弯症を発症する可能性があります。
主な原因は、筋肉のアンバランスと弱さにあります。
この中には脳性麻痺、筋ジストロフィー、および脊髄損傷などが含まれます。
どれも手術をしたとしても後遺症の不安は残ってしまうものです。
側弯症手術後に残る後遺症
脊柱側弯症の矯正手術による後遺症をいくつかご紹介します。
1.手術の傷
側弯症の手術を行うと大体20~40cmとかなり長い傷跡が残ります。
体の機能的には問題はありませんし、傷跡も普段は洋服に隠れて見えませんが、人によっては傷跡に対して強いコンプレックス を持ってしまうことがあります。
2.体の動きが低下する
手術で、変形した背骨の骨と骨の間にインプラントと呼ばれる金属を埋め込み、変形を矯正した状態で固定しますので、手術を受けた部分の背骨の動きは取れなくなります。
ただ、もともと変形した部分の背骨の動きは悪かったわけですから、手術の前後で背骨全体の動きとしては、本人は差をあまり 感じないかもしれません。
日常生活において、気になるほどの動きの制限はめったに起こりませんが、体をねじるような動きの時、多少違和感がある可能性があります。
3.今後どのような後遺症が出るか分からない
現在行われている側弯症の手術の歴史は、まだ浅いため、手術を受けて高齢になった患者さんがそれほど多くありません。
実際のところ、どのような後遺症が発症するか、はっきり分かっていないというのが実情です。
側弯症治療にかかる手術費用はどれくらいか?
側弯症治療には、どれくらいの費用がかかるのでしょうか?
実際に治療にかかる医療費の目安と公的補助について簡単に説明します。
1.軽度の側弯症の場合
病院にもよりますが、診察料とレントゲン代で約5000円前後かかり、そこから自己負担分としては1~3割を支払います。
MRIやCTなどの検査を行うこともあります。
2.装具療法の場合
装具の種類にもよりますが、10~20万円程度かかりますが、装具治療も健康保険は適用されます。
上記2つは手術ではないので後遺症が残る心配はありません。
3.手術する場合
病院や入院期間などによって異なりますが、入院費、手術費、薬剤費、その他の検査や処置費用など、保険が適用される費用だけでも300万円程度かかり、中でも高額なのが、背骨を矯正するために用いるインプラントの材料費です。
この高額な医療費に対する公的補助がいくつかありますので、ご紹介致します。
①高額療養費制度
ある金額以上は医療保険でまかなわれます。
②育成医療制度
患者さんの年齢が18歳未満の場合適用されます。
これは特定の病気に限って、児童福祉法に基づいて都道府県が医療費の大部分を負担するという制度で、脊柱側弯症もこの制度が適用されます。
手術後に起こる後遺症や合併症
側弯症の脊柱固定手術は後遺症だけでなく合併症の危険も伴うものです。
合併症としての定義は神経損傷だけではなく、手術による痛み、出血、腰痛なども含まれます。
術前の注意としましては、手術前に患者さん自身の自己血液を採取して貯血しておくことが大事です。
これは手術中に輸血が必要になった場合使用されます。
手術前に日焼けをしたり、吹き出物などがあってはいけません。
感染のリスクを高めることになります。
1.手術による合併症
①出血
脊椎手術は、大きな侵襲を伴う手術のため出血多量になる危険があります。
そのような事態に備えるため、手術前に患者さん自身の血液を採取し、貯血しておく必要があります。
②術後の痛み
手術後に痛みは伴いますので、痛み止めが処方されます。
③感染
手術後、2日~5日は抗生剤を注射し、1週間~2週間は経口薬として服用するように医師から指示されます。
④神経へのダメージ
一般的に、神経損傷は患者さんの1%程度でしか発生しません。
⑤肺機能低下
こどもの場合、術後1週間程して肺機能が低下することがあり、発生してから1ヶ月~2ヶ月程続きます。
⑥腰痛
将来、腰痛を訴える方がいます。
⑦脊椎の動き
手術で固定したことにより、術前のような背中の動きは失われます。
手術方法とその後の後遺症が残る日常生活は??
側弯症の手術方法は前方法と後方法があります。
前方法は肋骨やお腹を切って、脊椎に到達する方法です。
後方法は背中をまっすぐに切って脊椎に到達する方法で、一般的に胸椎のカーブは、後方より手術するケースが多いようです。
スクリューを設置して矯正したり、フックあるいはワイヤーを用いて脊椎を矯正したりします。
矯正後は、骨盤から採取した自分の骨を移植してその位置で骨をくっつけます。
肋骨の出っ張りが激しい場合には、肋骨を何本か切除することもあります。
術後2~3日目から起立歩行を開始し、約2週間程度で退院となります。
術後1ヶ月程度は安静期間のため、家の中でゆっくり生活しながら日常生活に戻るための体力を養います。
1ヶ月を過ぎると社会復帰は可能ですが、後遺症が出る可能性がありますので、無理の無い行動をするよう指導されます。
その後、3ヶ月間は装具を付けての生活となり、術後半年した時点から簡単な運動が可能です。
そして術後1年を迎えてから、本格的にスポーツ等を行うことが出来ます。
術後の定期検診で、骨が大方ついたことが確認されれば、大概のことは普通の人と同じように出来ます。
側弯症であってもスポーツができる!!
側弯症の子供にとって望ましいスポーツとは何でしょうか?
野球やゴルフのような左右非対称の動作をするものは難しく、動作が左右で比較的均等なスポーツ、そのスポーツ自体に体の歪みを修正する機能を持つもの、背骨に負担があまりかからないものが良いでしょう。
以下のようなスポーツは左右バランス良く身体を使うことが出来るでしょう。
・水泳
・ウォーキング
・バレエ
・ヨガ
・太極拳
・ダンス(社交ダンスは除く)
特にバレエが良いと思います。
基本レッスンは体の歪みを修正し、体幹の筋肉が鍛えられ姿勢がよくなる効果が期待できるため、お勧めします。
ある先生の所に通っている側弯症の患者さんの中には、バレエを習っている、あるいは習っていたという方が子供も大人もたくさんいらっしゃいます。
そして、ピアノもまた弾く姿勢の指導を受けますので、背筋が鍛えられて姿勢が良くなる可能性もあります。
この先生の所に通っているピアニストの卵は、最近は側弯症の治療よりも、毎日の長時間の練習で疲労した腰や背中の痛みをとってもらうことが目的となりつつあるそうです。
ピアノやバレエを習う子供がどんどん増えて、世界で活躍しているというニュースを良く目にするようになったということです。
それだけ日本が豊かになり、また成熟した社会になったということでしょうか。
またリオオリンピックで超人的な活躍をした陸上のウサイン・ボルト選手も側弯症だということを知っていただきたく思います。
側弯症だからといって、出来ないのではなく乗り越えるべき壁が高いだけです。
志高くチャレンジしてみることをオススメします。
側弯症だからといって深刻に考えないで
側弯症のすべてが、高度の変形に進行するわけではありません。
むしろ、多くの側弯症は軽度のままで、成長の終了を迎えます。
軽度の側弯症は、将来的に何の障害も残さないので軽い側弯症を心配しすぎることはありません。
子供に病気だという意識をもたせることなく、のびのびとした生活をさせながら経過を見ながら見守っていきましょう。