側弯症の手術をしたときの費用とは。手術で治る?治らない?

最終更新日:2023/12/22

側弯症になっている方は手術をしてでも治したいと考えたことはありますか?どういった手術をして、どれくらい入院するのかどれだけ費用が掛かるのかなど疑問がたくさん浮かぶことでしょう。今回は側弯症の手術について、いろいろまとめてみたいと思います。

側弯症を手術したときの費用とは

側弯症の治療費用は病気の程度によって異なります。
病気が軽度で、かつレントゲン写真をとり定期的にチェックをしていれば費用は5000円前後で済みます。
さらに健康保険が適用され、自己負担金はその1~3割となります。
MRIやCTなどが追加で行われても1万円以内の費用で収まります。

しかし側弯症がさらに悪化し装具が必要になると、10~20万円はかかります。
健康保険はききますが、一度全額実費で支払い後日返金という形になるため、一時的に10万円以上の費用が必要になるほか体の成長に合わせて装具を何度も作り変える必要もあります。

手術となると治療費用はさらにかかります。
入院費と手術費、薬剤費など諸々の費用を全て合わせると、保険適用分だけでも300万円ほどかかります。
これは、背骨を矯正するために用いるインプラントの材料費が非常に高額だからです。
この1~3割を自己負担しますが、側弯症の程度が悪化すれば治療費もかさむことは明らかです。

そんな時には公的補助もあります。
まず高額療養費制度ですが、これは治療費が一定の金額を超えた場合超えた分の治療費が医療保険で賄われ後日返金されるというものです。
その他18歳未満の患者に対し治療にかかった費用の大半を児童福祉法に基づき都道府県が負担する育成医療制度もあります。
育成医療制度の対象となる病気は限られていますが、脊柱側弯症はこの制度の対象となっていますので是非覚えておきましょう。

側弯症で手術になる基準はあるの?

費用はかなり高額ですが、側弯症で手術をする理由は次のようなものです。

●カーブの進行予防
 10~12歳の場合、コブ角が30度以上の側弯の場合は90%、60度以上では100%進行するとされています。
 コブ角が80度以上になると胸郭が変形し肺機能が低下し、息切れなどの症状がでやすくなるほか腰痛や背部痛も起こりやすくなります。
 また骨の成長が止まる18~20歳以上でも40度を超えた側弯症の場合、年間0.5~1度程度は側弯が進行するとも言われています。
 
●整容
 側弯症患者は自分の容姿に対する自己評価が低く、コブ角が30度を超えると劣等感を抱くようになると言われています。
 コブ角が悪化になればなるほどそうした感情も強くなるため、精神的な健康を取り戻すことも手術の目的となります。
 
側弯症の手術はこのような理由で行われますが、一方で合併症のほか傷跡が残るなどのリスクもあるため、手術するかどうかは主治医とよく話し合い慎重に決めたほうがよいでしょう。

また手術を選択するタイミングは次のようなものです。
・カーブが進行性で放っておくと重度の側弯症になる可能性が高い場合
・装具療法などの保存療法で効果が見られない場合
・10~15歳の特発性側弯症でコブ角が50~60度以上の場合

ただしこれらはあくまでも一般的な目安であり全ての人に当てはまるわけではありません。
特に症候性側弯症は例外も少なくないため、主治医と十分相談することが大切です。

側弯症の手術方法

側弯症の手術は大きく「前方法」と「後方法」とに分けられます。

前方法は椎体や椎間板といった背骨の前方成分を矯正する方法で、肋骨に沿って皮膚を切開します。
肋骨を1本取り除いた後、椎体や椎間板にアプローチをしていきます。
矯正予定部分の椎間板を切り取りそこに外した肋骨を移植します。
最後に椎体にスクリューを1~2本入れてロッドで矯正をします。

後方法は棘突起、椎弓、横突起など背骨の後ろ側にある組織を矯正する方法です。
一般的に矯正には椎弓根スクリューとロッドが用いられますが、フックやワイヤーが用いられることもあります。
椎弓根スクリューは非常に強制力が高いため、最近ではこの後方法による手術が行われることが多いようです。
カーブの程度が大きい場合や今後身長が大きく伸びる可能性がある場合は、2つの方法を合併した手術が行われることもあります。

スクリューとロッドでもしばらくの間は矯正した状態を保つことができますが、時間が経つにつれ金属が疲労しスクリューやロッドが折れたり緩んでしまいます。
そのため矯正後は骨移植を行い、矯正した範囲の背骨を1つの骨にくっつけていきます。
一般的に骨移植には右の腸骨(骨盤の骨)が使われます。

ただし乳幼児や学童児の側弯症の場合、その後の身長を考慮し骨をつけないこともあります。
この場合、ロッドの上下だけスクリューを使って固定をして、成長に合わせて一定期間ごとにロッドを延長していきます。その度に別途費用がかかってきます。

手術前には事前準備が必要です

側弯症の手術前には次のような事前準備が行われます。

●自己血貯血
 手術中や術後大量の出血のため貧血になることもあります。
 そのような事態に備えて術前1か月ほどから週に1~2回採血して自己血貯血を始めます。
 この間は鉄剤を服用し、血液の生成をサポートします。
 後方法の手術の場合で1000~1200ml、前方法の場合で400~800mlの血液をためておきます。
 ただし体重や合併疾患を理由に貯血ができないもしくは少量しかできないという場合もあります。
 そのような場合は日本赤十字社が用意する血液を輸血することができます。

●画像検査
 画像検査は次の3つです。
①MRI
 骨髄の異常の有無をチェックします。
②CT
 骨の奇形の有無をチェックするほか、スクリューの設置位置の確認など手術計画を立てる上で必要になります。
③レントゲン検査
 カーブの柔らかさを評価します。
 仰向けや牽引した状態などいろいろなレントゲンを撮ります。

●その他
 血液検査や胸のレントゲン撮影などが行われます。
 場合によっては小児科の先生に診察してもらうこともあります。
 呼吸訓練を要する場合はスーフルという呼吸筋を鍛える道具を購入し呼吸訓練を行います。

入院と術後の経過はどうなる?

側弯症の手術では手術の3日前に入院します。
入院後は鼻や咽喉の培養検査をし抗生物質に耐性を持つ有害菌がいないかどうかを調べます。
レントゲン撮影や必要に応じて小児科の診察を受けるほか麻酔科の診察も受けます。
その他手術の説明や術後頻繁に起こる腹満感やイレウスを防ぐために手術前日には腸内を空にする準備もします。

手術当日は集中治療室で過ごし、その後は全身の状態が安定してきたら一般病棟に移ります。
術後は褥瘡の防止や無気肺や肺炎の予防、腸管の動きを活発にするため定期的に体位交換をします。
また術後はお腹の動きが悪くなります。
また術後は傷の痛みや痛み止めの薬による影響で一時的にお腹の動きが悪くなり、この状態で食事をすると気分が悪くなったり嘔吐してしまいます。
そのため食事はお腹の動きが良くなりおならが出るまでは控えます。
水分の摂取は手術翌日から少しずつ可能です。
なかなかお腹の動きが回復せず長期間食事がとれない場合は点滴で栄養補給をします。

術後2日目に傷の中に血液が貯まらないようにするためのもの(ドレーン)を取り除きます。
我慢できるならこの時から歩行も可能です。
大抵は術後3~4日目には痛みも落ち着きます。

術後4~5日目に装具の型どりをします。
装具は1週間ほどで完成し、術後3~6か月間は使用します。
装具の費用は最初にも書きましたが、10~20万円します。
その後特に合併症などがなければ術度10日ほどで退院できます。

費用は高額療養費や育成医療で負担を減らそう

側弯症の手術費用はとても高額たどいうことは最初に説明しましたが、育成医療は18歳未満の患者に利用できる公的医療補助制度です。
所得制限や指定医療機関でないと利用できないという制限はありますが、原則1割負担で済みます。
また育成医療制度はあらかじめ事前に申請しておかないと利用できないという注意点もあります。

高額療養制度は1か月の医療費の総額が一定の金額を超えた場合一部が払い戻されるという制度です。
健康保険を使えば医療費は3割負担になりますが、それでも高額になってしまうときのために1か月あたりの上限が決められています。

高額療養制度は家族で合算できます。
例えば同世帯で複数の人が同じ病気や怪我で医療機関を受診したり一人の人が複数の医療機関を受診した場合、一つの医療機関で入院と外来の両方を受診した場合、その自己負担額は世帯で合算できます。
その金額が自己負担限度額を超えている場合、超えた分は払い戻されます。

70歳未満であれば、次の基準によって算出された自己負担額が1か月あたり21,000円以上のものを合算することができます。
・医療機関ごとに計算する(同じ医療でも、入院と外来などに分けて計算する)
・医療機関から交付された処方せんにて調剤薬局で調剤をしてもらった場合は、薬局で支払った自己負担額も含めて計算する

さらに高額療養費の支給が受けられるのは、診療を受けた翌月初日から2年間です。
つまり2年以内であればさかのぼって申請することができるというわけです。

側弯症は早期発見が大切です。

側弯症は思春期の女子がなる可能性がもっとも高いと言われいます。そして、ほとんどの側弯症は原因不明と言われています。側弯症は姿勢を正したり、運動を適度にしたからといって自然治癒することはないようです。最初は緩やかな側弯だったのが、進行して段々重度になっていくことも多いです。ですから、早期に発見し、医師の判断の元、今後どうやって過ごしていくのか相談していくようにしてください。費用は高額ですが、制度を忘れずに活用すれば、負担は軽く済みます。
こちらの記事を参考にしていただければと思います。

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