全身にある筋肉の数はどれくらい?:部位別、機能別に解説!

最終更新日:2023/12/24

普段何気なく使っているものの代表といえば?そう、全身の筋肉ですね。ごく一部の方をのぞいて、体を動かすときに、筋肉なんて意識しないと思います。

それどころか、人間の体には、動かそうと意識しなくても動き続ける筋肉が沢山あるくらいです。

全身の筋肉の数なんて考えたこともないという方が大多数なのではないでしょうか?

今回は、全身に400以上もあると言われる筋肉について、その機能や仕組みを解説していきたいと思います。

全身の筋肉の数は400以上!

全身の筋肉の数は、なんと400以上もあると言われています。

ほとんどの方にとっては、想像以上に多い数だと思います。これは、いわゆる骨格筋という、体を動かすための筋肉のみの数です。

平滑筋という、内臓や血管などにある筋肉を加えれば、全身の筋肉の数は600以上とも言われています。

一体どこに、そんなにも沢山の筋肉があるのでしょうか?また、本当にそんなにも沢山の筋肉が全身に収まりきるのでしょうか?収まるんです!!

何百もある単語。しかも全部読み方が良くわからない漢字。そんなもの見たくないですよね?

でも、筋肉の名称って、そんな感じなのです。だから分けます!!

しかし・・・困ったことに、全身の筋肉の分類方法や数え方については、これといった決まったものは無いようです。なんと無いのです・・・これから数えようとしている筋肉の数ですらも、正式には決まっていないようなのです。

それでも、一般的に良く用いられる方法はあります。

筋肉の一般的な分類方法としては組織学的な分類方法が知られています。組織学的な分類においては筋肉は横紋筋と平滑筋に分けられます。

今回はこの組織学的な方法を使って、筋肉を、横紋筋と平滑筋に分けて数えてみたいと思います。

●横紋筋

横紋筋は、細長い筋線維の集まりで、顕微鏡で見ると筋線維に、横に走る細かいしま模様があります。ちなみに、このしま模様を横紋といいます。

横紋筋は、骨格に連なるものが多いので、骨格筋とも呼ばれ、随意運動に関与します。簡単に言えば、横紋筋とは人間の骨にくっついていて、体を動かすときに使う筋肉のことです。

●平滑筋

これに対して平滑筋とは、横紋をもたない筋線維からなる筋肉です。

横紋筋よりも原始的とみられ、心臓をのぞく内臓筋の大部分はこの平滑筋によって構成されています。

どういうことかと言うと、平滑筋は消化器や呼吸器、泌尿器、生殖器、血管などの壁にあって伸びたり縮んだりする筋肉であるということです。

平滑筋は、意思とは無関係に働き、皮膚の立毛筋、眼球の瞳孔散大筋、括約筋なども平滑筋から成っています。

簡単に言えば、平滑筋とは、内臓や血管などにあって、自分では動かせない筋肉ということです。

●横紋筋(骨格筋)を数えてみよう!

それでは、主要なものについてですが、全身の筋肉を数え上げてみようと思います。
今回は横紋筋、またの名を骨格筋のみ数えさせていただきます。

・頸部7個

胸鎖乳突筋、頸板状筋、頭板状筋、肩甲挙筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋

・胸部5個

大胸筋、小胸筋、横隔膜、外肋間筋、内肋間筋

・肩部および背部13個

棘上筋、棘下筋、大円筋、小円筋、肩甲下筋、広背筋、三角筋、前鋸筋、僧帽筋上部線維、僧帽筋中部線維、僧帽筋下部線維、、大菱形筋、小菱形筋

・上腕部5個

鎖骨下筋、上腕三頭筋、上腕二頭筋、烏口腕筋、上腕筋

・前腕部24個

肘筋、円回内筋、橈側手根屈筋、長掌筋、尺側手根屈筋、浅指屈筋、長母指屈筋、深指屈筋、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋、総指伸筋、小指伸筋、長母指伸筋、短母指伸筋、長母指外転筋、示指伸筋、回外筋、腕橈骨筋、母指対立筋、母指内転筋、小指対立筋、短母指外転筋、短母指屈筋

・腹部および腰部9個

腹直筋、腹横筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腰方形筋、腸骨筋、大腰筋、小腰筋、脊柱起立筋

・臀部9個

大臀筋、中臀筋、小臀筋、梨状筋、上双子筋、下双子筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋、大腿方形筋

・大腿部13個

大腿直筋、中間広筋、大腿筋膜張筋、内側広筋、外側広筋、大内転筋、短内転筋、長内転筋、恥骨筋、薄筋、半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋、縫工筋

・下腿部7個

膝窩筋、腓腹筋、ヒラメ筋、前脛骨筋、長腓骨筋、短腓骨筋、足底筋

以上のように、主要なものを挙げただけでも、合計92もの筋肉があります。

ほとんどの骨格筋は、左右対称に存在しますので、ここに挙げたものの合計だけでも全身に200個近い筋肉が存在することになります。

さらに詳細な分類も入れれば簡単に400個は超えてしまいそうです。

全身の筋肉の働き~大きな筋肉~

全身にある筋肉を数えあげた後は、筋肉の働きについても見ていきたいと思います。

まずはなじみのある、大きな筋肉の働きから見ていきたいと思います。なぜならば、大きな筋肉には、日頃名前を聞くようなメジャーなものが多く、その働きも、実際に動かしてみて意識しやすいからです。

●上半身の大きな筋肉

それでは、上半身にある大きな筋肉について、考えてみたいと思います。紹介させていただく順番は、上から順番です。先頭を飾るのは、筋肉界のスーパースターと言っても過言ではないでしょう、大胸筋です!

・大胸筋

大胸筋というのは、ボディービルダーの人が、ぐいぐいと動かして見せる胸の筋肉のことです。マッチョといえば、大胸筋を連想する方も多いのではないでしょうか?

大胸筋は前胸部のひろくて平たい筋肉です。鎖骨、胸骨、第一から第4肋骨からはじまって上腕骨上部に付着しています。

上腕骨の内転を司るとともに、胸骨や肋骨を引き上げて呼吸を補助する働きをします。鳥類では、そう鳥類では、この大胸筋が翼を動かすための主要な筋肉となっています。

いきなり、話題が霊長類から鳥類へとジャンプしましたが、種はたがえども、同じ大胸筋を持つもの同士です。鳩の鳩胸は大胸筋だったのです。

さて、大胸筋の働きですが、上腕骨の内転というのは、つまり腕を背中側からお腹側へ曲げる動きのことです。鳥が羽ばたく動きといえば分かりやすいでしょうか。

また、大胸筋は呼吸の補助も行っています。呼吸といえばその影響範囲は、上半身を越えて全身に及びます。

・横隔膜

大胸筋は呼吸の補助を行っていましたが、横隔膜は呼吸のための筋肉です。

横隔膜は大胸筋のように目立ちません。しかし、この筋肉が動かなければ、人間は窒息してしまいます。横隔膜は、直接命に関わるという点で、大胸筋以上に重要な筋肉です。

横隔膜は、胸腔と腹腔の境を作る膜状の筋肉です。簡単に言ってしまうと、横隔膜は、お腹と胸を分けているということです。

もしも、どこからが胸で、どこからがお腹かと聞かれたら「横隔膜より上が胸で、横隔膜より下がお腹」と答えるのが最も簡単な答えです。

横隔膜は腰椎部、肋骨部、胸骨部の3部から出来ています。全体としてドーム球場の屋根のように、胸腔に向かって盛り上がっています。

この「ドーム球場の屋根」が、息を吸うときには下がり、息を吐くときには上がります。
また、横隔膜と言われると、一枚の、穴のない膜をイメージしてしまう方も多いと思います。しかし、意外なことに、大きな穴が3つも空いているのです!

横隔膜に空いている、3つの穴とは、大動脈裂孔、大静脈裂孔、食道裂孔です。大動脈裂孔には大動脈、大静脈裂孔には大静脈、食道裂孔には食道が通っています。

横隔膜の特徴は以上の通りですが、呼吸には横隔膜以外にも、様々な筋肉が関わっています。例えば、大腰筋と腸骨筋など、肺から離れた、骨盤の筋肉までが呼吸に関わっているのです。

・広背筋

続いては、広背筋の登場です。広背筋は全身の筋肉の中で、最も面積の大きな筋肉で、その面積はほぼ背中全体に及びます。

大きさだけで言えば、大胸筋よりも、はるかにインパクトのある筋肉であると言えます。ただし背中側にあるため、(筋肉マニアではない)一般の方々の認知度は低めかもしれません。

さて、そんな広背筋についてですが、広背筋は腸骨稜、腰椎および下位の胸椎の棘突起などから始まり、腰背部を斜めにのぼって、上腕骨の上部の前側にいたります。

専門用語ばかりで、伝わりづらいと思いますので、言い換えます。ほぼ背中全体ということです。

広背筋は上腕骨を内転し、さらに背中側に引く動きをします。上腕骨を内転するという動きは、さきほど大胸筋で全く同じ動きがありましたが、鳥が羽ばたく動きです。

広背筋の働きでメインとなるのは、引っ張る動きです。このため、ロープ上りや懸垂を行っているときには広背筋が大活躍していることになります。

・腹直筋

今回ご紹介できる上半身の大きな筋肉も、紙幅の関係上、次で最後となってしまいました。最後は腹直筋です!腹直筋といえば、大胸筋と並ぶ、筋肉界の大スターでしょう。

腹直筋は、お腹のところにあって6つとか8つに割れている筋肉です。全然割れているように見えない場合もありますが、脂肪の下には、きちんと割れた腹筋があるのです。

体を鍛えているというと、なぜかここをチェックされることが多いのも腹直筋の特徴といえるでしょう。

腹直筋は腹部の中央にある平たくて長い筋肉です。肋間筋と協力して呼吸運動を助け、体を前方へ曲げる働きをします。

ということは、腹直筋も大胸筋と同じく、呼吸に関係する筋肉なのですね!また、腹直筋が行う、体を前方へ曲げる働きとは、具体的に言ってしまえば、部活などの基礎トレで行う「腹筋」の動きのことです。

●下半身の大きな筋肉

続いては、下半身にある大きな筋肉についてです。下半身には、全身をしっかりと支えて立ったり、歩いたり、走ったりするための数々の筋肉があります。

以下では、その中でも、大きくて目立つ筋肉を見ていきたいと思います。上から順番に見ていきましょう。先頭をかざるのは大変目立つ筋肉、大臀筋です!

・大臀筋

大臀筋は臀部を下外側に走る大きい筋肉で大腿を後ろに引いたり外旋する働きをします。
大臀筋は直立姿勢をとるために重要な筋肉です。また、大臀筋は人間で最もよく発達している筋肉です。座った状態から立ち上がる時や、階段を上がるときなどに活躍します。

大臀筋は、ものすごく大ざっぱに言ってしまうと、お尻の筋肉です。真っすぐにピンと立つと、お尻に力が入って、引き締まる感覚があると思います。これは大臀筋の働きによるものです。

そして、大臀筋はとても、とても大きい筋肉です。どのくらい大きいかというと単一筋としては全身のなかでも最大級の面積をほこります。

よく発達していて面積も最大級のため、筋肉注射を打つ際には、よくここがターゲットにされます。

・大腿四頭筋

次に見ていただくのは、大腿四頭筋です。大腿四頭筋は、細かく言うと、四つの筋肉の総称です。

腸骨から起こる大腿直筋と、大腿骨から起こる3つの筋肉(外側広筋、中間広筋、内側広筋)を総称して、大腿四頭筋というのですが、要するに太ももの筋肉です。

大腿四頭筋は力の強い筋肉で、膝関節の伸展作用を持ちます。ただし、大腿四頭筋の中でも、大腿直筋は股関節の屈曲作用も持っています。

わかりやすく言うと、大腿四頭筋は、膝を伸ばしたり、股関節を曲げたりする筋肉なのです。膝を伸ばしたり、股関節を曲げたり、という動作は、歩いたり走ったりするときに必須の動きです。

大腿四頭筋は太ももの筋肉なので、体の前面にあり、発達すると非常に目立つ筋肉です。スピードスケートの選手や、競輪選手をイメージしていただければ、お分かりになると思います。あの太い太い太ももが大腿四頭筋なのです。

・下腿三頭筋

ご紹介できる下半身の大きな筋肉も、最後となりました。最後は、下腿三頭筋です!下腿三頭筋は下腿後部の筋肉です。下腿後部とは、言い換えると、ふくらはぎのことです。

下腿三頭筋も、大腿四頭筋のように、複数の筋肉の集合体です。細かく言えば、腓腹筋とヒラメ筋によって成る下腿後部の筋肉です。

下腿三頭筋は、足を足底側に曲げたり、踵を上げたり、膝関節を曲げたりします。つまり、つま先立ちの動きをするときに使う筋肉ということです。

実際につま先立ちをしてみるとふくらはぎの筋肉が働いていることが分かると思います。それが下腿三頭筋なのです。

全身の筋肉の働き~小さな筋肉~

大きな筋肉の働きはご理解いただけましたでしょうか?ここからは、小さな筋肉の世界に突入させていただきます。

全身にある小さな筋肉、その数知れぬ働きは、意識するのがなかなか難しいかもしれません。なぜなら小さいからです。

また、全身に小さな筋肉は数々あれど、その名前を聞くことは、ほとんどないかもしれません。なぜなら目立たないからです。

しかし、小さくなければ難しい働きというものがあります。例えば、表情筋などは小さな筋肉が協力するから、人間の複雑な表情が作り出せるのです。

●上半身の小さな筋肉

まずは、上半身にある小さな筋肉を紹介させていただきます。ここも、上から順番に見ていきましょう。上半身の筋肉でまず解説させていただくのは表情筋です。

・表情筋

筋肉の働きを見るという意味では、我々が日頃一番よく見る筋肉は、表情筋かもしれません。

なぜなら表情筋は、人の表情を作る筋肉だからです。表情筋は顔面の皮膚の下に広く存在し、主として骨から起こって皮膚に終わる筋肉で、顔面筋とも言います。

人間の数々の表情はこの筋肉の働きによります。人間は他の動物よりも、口の運動に関係する表情筋の数が多く、左右の合計が20種類ほどに達します。

顔の面積の中に、数十種類の筋肉があることからもわかるように、表情筋はとても小さな筋肉です。

しかし、小さいからこそ、繊細な表情を作り出せるのです。また、表情が人間のコミュニケーションに与える影響は絶大なものです。

もしかしたら、人間は伝えたいことの9割くらいは表情で意思を伝えているのではないでしょうか。表情筋は小さな筋肉ですが、その働きはとても大きいのです。

・胸鎖乳突筋

続いては、胸鎖乳突筋です。胸鎖乳突筋は頸部外側にある筋肉です。つまり首の横側にある筋肉ということです。

首を回したり傾けたりすると筋が浮き出る筋肉といえばわかりやすいでしょうか。左右両側の筋肉が同時に動くと下顎を上げて頭を前方に出し、片側が働くと頭を横に回して傾けます。

胸鎖乳突筋は首を傾けたり、回したりするのに使う筋肉です。小さな筋肉ですが、首を寝違えたときの不便さを考えれば、この筋肉がいかに大切か実感できると思います。

・鎖骨下筋

鎖骨下筋はその名の通り、鎖骨に付いている筋肉です。すぐ上にある、大胸筋で覆われてしまっているため、まったく目立ちません。まさに小さな筋肉なのですが、その働きは小さくありません。

鎖骨下筋の働きは、胸鎖関節を安定させることです。胸鎖関節とは、鎖骨と胸骨を繋ぐ関節のことです。

胸鎖関節が安定すると、腕を回したり、伸ばしたりといった、腕の大きな動きがしやすくなります。このため、日常生活においても、スポーツにおいても、この胸鎖関節を安定させる鎖骨下筋は、重要な筋肉なのです。

・前腕屈筋群と前腕伸筋群

最後に解説させていただく小さな筋肉は、前腕屈筋群と前腕伸筋群です。

前腕屈筋群と前腕伸筋群は、指や手を動かす筋肉です。この前腕屈筋群と前腕伸筋群の一番の特徴は、名前がややこしいことです。

例えば橈側手根屈筋、これは「とうそく/しゅこん/くっきん」と読みます。他にも長橈側手根伸筋「ちょうとうそく/しゅこん/しんきん」など、知っていたら逆にすごい名前ばかりです。

以下では、指を動かす筋肉を紹介させていただきます。

浅指屈筋、深指屈筋、長母指屈筋の3つで人間は指を動かしています。長母指屈筋は親指を動かす筋肉で、浅指屈筋と深指屈筋をつかってその他の指を動かします。

・下半身の小さな筋肉

続いては、下半身にある小さな筋肉についてです。小さな筋肉とはいえ下半身には全身を支える数多くの筋肉が存在します。

まずは小臀筋から見ていきましょう。

・小臀筋

小臀筋は、大臀筋よりも奥にあるインナーマッスルで、直立したときに骨盤を支えたり、股関節の内旋、外転といった動きに関わっています。

小臀筋は片足立ちをしたときに股関節を骨盤に固定する働きをするので、ここがうまく働かないと、片足立ちができません。

・深層外旋六筋

次は深層外旋六筋です。この筋肉は、臀部の深層部にあり、6つの筋肉から成っています。

それぞれが股関節を外旋させる動作に関係することから、深層外旋六筋(しんそうがいせんろっきん)と呼ばれています。

外旋六筋には下双子筋、上双子筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋、大腿方形筋、梨状筋などがあります。

ここで、股関節を外旋させる動きとはどんなものなのか?そもそも外旋という言葉自体あまり聞かないと思いますので、解説させていただきます。

まずは足を真っすぐに伸ばして寝た状態をイメージして下さい。つま先は天井の方に、つまり上に向けて下さい。

この体制から、大腿骨と脛骨を軸にして、クルッとつま先を体の外の壁側に、つまり、右足のつま先であれば、右横の壁に向ける動きのことを外旋といいます。

・腓骨筋群

腓骨筋群は、下腿の外側にある筋肉群で足関節を外反させる働きがあります。

下腿とは、膝から足首までの部分を指します。この外側にあるのが腓骨筋群です。

足関節を外反とは、足の平の、小指の側だけを床から上げる動きのことです。

詳しく言います。踵から爪先に向けて、足の平の中心を、一本の軸が通っているのをイメージして下さい。

この軸を中心として、足の平を回転させて、小指側だけを床から上げる動きが、足関節の外反です。この動きは、デコボコした道を歩いたり走ったりするときに重要で、うまくできないと転倒や捻挫の原因となってしまいます。

速筋の働きの数々

大きな筋肉、小さな筋肉にわけて、全身の筋肉の数々について、その働きを見てきました。

次はもう一歩ふみこんだ、筋肉の働きを考えていきたいと思います。ここからは、筋肉講座応用編・・・というわけではありませんが、視点を変えて、全身の筋肉の数々をみていきたいと思います。

全身の筋肉は、速筋と遅筋という、2つの筋肉が混ざって出来ています。大胸筋であろうと、下腿三頭筋であろうと、どの筋肉も、速筋と遅筋が混ざり合って出来ています。

速筋と遅筋どちらか一方だけで出来ている、ということはありません。筋肉によって、速筋と遅筋の割合が違うだけです。

速筋と遅筋の違いは、瞬発力と持久力です。速筋は瞬発力を発揮することにすぐれた筋肉で、遅筋は大きな力を発揮することは苦手ですが、持久力には優れた筋肉です。

ここでは、その速筋について解説していきたいと思います。

●速筋が活躍するのはどんなとき?

まず、速筋が活躍するのはどんなときかについて見ていきたいと思います。

初めに、少し説明させていただいたように、速筋は全身にある瞬発力に優れた筋肉です。つまり瞬間的に大きな力を発揮することができる筋肉の数々ということです。

したがって、速筋が活躍するのは、重いものを持ち上げたり、素早く動いたりするときということになります。

これは、陸上競技やウエイトリフティングのような、パワーを必要とするスポーツ一般において、非常に重要な筋肉と言えます。

また、日常生活では、何かに遭遇して走って逃げたり、運悪く何かに捕まってしまって、力ずくで逃れたりするときなど、数々のシーンで大活躍をしてくれる筋肉です。

しかし、そんなにも便利な筋肉であるのに、速筋には持久力がないという弱点があります。これは、速筋が糖質をエネルギー源にすることが原因で、糖質は筋肉中に少量しか備蓄できないため、短時間で燃料切れを起こしてしまうからなのです。

・速筋を鍛えるには

速筋は、前述したように、瞬発力を要する多くのスポーツにおいて、必要とされる全身の筋肉です。

したがって、トレーニング方法が気になる方も多いはずです。以下では、速筋を強化するために有効な、トレーニング方法を挙げてみたいと思います。

まず、良く言われるのが、速筋を鍛えるには高負荷、低回数のトレーニングが良いということです。

これは、例えばダンベルを持ち上げるトレーニングであれば、重たい重量を使い、持ち上げる回数は少ないほうが良いということです。

具体的にどれくらいの重量でどのくらいの回数が最善なのかは人により様々なので、そこは専門家の指導の下に行われることをお勧めいたします。

ちなみに、一般的には1RMの80%で10回反復すると筋肥大は最もおこりやすいと言われています。

1RMとは反復回数の限界が1回の重量という意味です。ダンベルで言えば一回しか持ち上げることができない重さということになります。

遅筋の働きの数々

次は、遅筋について説明させていただきます。遅筋はその名の通り、遅い動きや静止した体制を維持するために必要な全身の筋肉です。

速筋と違い、大きな力を少ない回数、瞬間的に発揮することは苦手ですが、持久力には優れています。

遅筋は抗重力筋とも呼ばれ、人が立ち続けたり、同じ姿勢を長時間保ったりするためには無くてはならない筋肉です。

前述の速筋と違い、日常生活において多用する筋肉なのでとくにトレーニングを行わなくても、誰でもある程度の筋力を維持しやすい筋肉でもあります。

逆に、この遅筋が衰えてしまうと、日常生活に大きな支障が出てしまうことも事実です。遅筋は立ったり姿勢を保ったりするのに必要なので、遅筋が衰えてしまうと立つことはもちろん、座ることすらも難しくなってしまいます。

つまり、寝たきりの状態になってしまうということです。お年寄りが寝たきりになってしまうことの原因の一つは、この遅筋の衰えであるとも言われています。

・遅筋が活躍するのはどんなとき?

遅筋が活躍するのは、全身の筋肉を使って、同じ動きを多回数繰り返したり、同じ姿勢を長時間保ったりするときです。したがって、スポーツにおいては、持久力を要する種目全般において大活躍する筋肉です。

具体的にはマラソン、トライアスロン、サッカー、バスケットボール、水泳、ボクシングなどなど、動き続ける競技において大活躍します。

また、意外なところでは、スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツにおいても、同じ姿勢を保ち続ける必要性から、大活躍する筋肉なのです。

遅筋は、日常生活においては、立ち続けたり、座り続けたりするあらゆる場面で必要とされます。

立ち続けたり、座り続けたりということは、現場仕事もオフィスワークも両方で必要とされる筋肉ということです。それどころか、自宅にいても寝ているとき以外は必要とされる筋肉なのです。

速筋が非常事態用の筋肉だとすれば、遅筋は、その他のほぼすべての状況で必要とされる筋肉であると言えます。

そのためか、全身の筋肉に占める遅筋の割合は、速筋よりも多く、日本人においては遅筋を使った運動を得意とする人が多いことも知られています。

これは、日本人が農耕民族であることも原因の一つであると思われます。農耕においては、瞬発力を要する動きよりも、田植えのような遅筋が活躍する動きが多いからです。

・遅筋を鍛えるには

遅筋のトレーニングの方法としては、有酸素運動が有効であると言われています。有酸素運動とはジョギングやエアロビクスなどの、全身の筋肉をつかった、呼吸をしながらできる、数々の運動のことです。

ちなみに、無酸素運動という、息を止めて行う運動もあります。主に重量挙げや砲丸投げなど瞬発力を必要とする運動で、これには速筋を使用します。

話を遅筋に戻しましょう。遅筋の鍛え方には有酸素運動が有効なのですが、これは遅筋を鍛えるには低負荷、長時間のトレーニングがよいといわれているからなのです。

遅筋を強化したいなら、負荷は弱くても、とにかく動き続けること、これが重要なのです。

また、トレーニングの回数も、あまり間隔を空けずに行うことが望ましいです。例えば、一度ジョギングをしたら、次は一か月後というのでは、トレーニングの効果は低くなってしまいます。

また、トレーニングの頻度が多すぎるのも逆効果で、これは筋肉の回復が、運動によるダメージに追いつかないことが原因です。

筋肉と疲労

ここまで、全身の筋肉の、数々の働きについて書いてきましたが、筋肉も働き続ければ最後には疲れるのです!

そこで、最後となるこの章では、筋肉と疲労について書かせていただきたいと思います。皆さんはどんなときに疲れを感じるでしょうか?

睡眠不足で働き続けたときや、精神的なストレスにさらされ続けたとき、体を酷使したときなど、全身の疲れを感じる状況は数々あると思います。

以下ではそんな疲労の中から、筋肉が原因で感じる疲れと、その対処方法について解説させていただきます。

皆さんは、筋肉が原因で感じる疲労といえば何をイメージされるでしょうか?おそらくは肩こり、腰痛がダントツのトップなのではないでしょうか?

また、スポーツをされる方の場合は筋肉痛などが挙がるのではないでしょうか?

いずれも、日常的に経験する疲労です。多くの方が、少しでも軽減させたい、可能であれば無くしたいと思われているのではないでしょうか?

以下では、そんなやっかいな疲労の対処方法や、予防法を紹介させていただきます。

・筋肉の疲労回復にはストレッチ

まずはストレッチです。ダイエットに美容にと、健康業界で何かと話題のストレッチですが、疲労回復と予防にも効果的なのです。

そもそも、筋肉疲労の原因には諸説あって、何が本当の原因なのかについては、まだ解明されていません。

しかし、一般によく言われる原因としては乳酸原因説、痛み物質原因説、筋肉が縮んでしまうからという説などがあります。

全身のストレッチは、血流を良くして筋肉を柔らかくすることから、数々の健康的な効果が期待できます。

ストレッチは、溜まった乳酸や痛み物質を放出させたり、縮んでしまった筋肉をほぐしたりすることにも効果的です。

またストレッチを定期的に行うことで、そもそも疲れにくい体質になることができるとも言われています。ストレッチは、筋肉疲労の予防にも、効果が期待できるのです。

・筋肉の疲労回復には食事も大切

次は食事についてです。食事は健康を考える上では非常に大切なことです。これはもう常識と言ってしまってもいいと思います。

食事を変えることで、全身の筋肉疲労の数々も改善されるかもしれません。筋肉疲労の原因の一つとしては、栄養の偏りが挙げられます。

人間に必要な栄養素はタンパク質、炭水化物、脂質、無機質、ビタミンの5大栄養素ですが、これらの栄養素をバランスよく摂取することが大切です。

ビタミンが足りないから、代わりに炭水化物をたっぷり摂ろう、などというのは、健康に良くないのです。しかし、現代人の食生活は乱れががちです。

外食中心の食生活や、加工食品中心の食生活は便利ですが、栄養の管理が難しいという弱点があります。

それに対して、昔から家庭で食べられていた、いわゆる伝統食や自然食は、栄養バランスに優れ、食べ続けることで、疲れにくい体作りをサポートしてくれます。

身近で遠い全身の筋肉の数々

長文におつき合い下さり、ありがとうございました!普段その名前をよく聞く、全身の筋肉から、名前も聞いたことのない筋肉の数々まで、たくさんの出会いがあったのではないでしょうか?

大きな筋肉も、小さな筋肉も、それぞれにしかできない大切な仕事をしています。速筋はまるでスターで、遅筋は縁の下の力持ちですが、両方が助け合って体は動いています。

働き続けた筋肉は、どうメンテナンスをするかも重要です。筋肉は、日頃我々の体を支えてくれている、大切な仲間たちです。

この記事では、普段注目しないような筋肉も、紹介させていただきました。筋肉のことを見直す、良いきっかけとなれば幸いです。どうか筋肉をお大事に。

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