スポーツに怪我はつきものです。対人競技ではないバレーの選手でも
肩の痛みや腰の痛み、膝の痛みなどが出てきます。
しかしながら、その痛みがなぜ出ているのかという原因を考えない方が多いのが現状です。
症状が出るというのは、間違った動きをしているからなのです。
「こういう風に教わったから、こういう風に打て」
この教えが生理学的に研究された教えだったのでしょうか?
肩の痛みのある方。この記事をお読みください。
バレーで肩の痛みを出す原因の打ち方
私がバレーのコーチをしているときに、遠征先や練習試合のときによく耳にしたのが、
「腕をまっすぐ下げてスパイクを打て」と教えている方です。
この打ち方は、正しいのでしょうか?間違っているのでしょうか?
体の使い方という面からみると、間違っています。肩を傷める可能性がとても高くなる打ち方です。
この打ち方を教わってきた方も、教わっている方も、肩に痛みが出ているという声を聞きます。
それなのになぜ同じ教え方をするのでしょうか?
その理由を聞くと、
「こういう風に教わったから」「これが一番打点が高いから」「腕の力が乗るから」などといった感じでした。
これらは色々と問題があるのですが、一番の問題は、この間違った動きで勝ってしまうことです。
勝ってしまうと、指導者の頭の中では、勝ち=自分の教えていることが正しい。という方程式が出来てしまうのです。
こうなってしまうと、選手が痛みを訴えても、動けなくなるまで聞き入れないという最悪な状況になることがあります。
もちろん、ちゃんと選手の気持ちを考えている方や研究熱心な方はいらっしゃいますが、残念ながら、そういった方は多くありません。
肩の痛みの出やすい打ち方と肩の痛みの出にくい打ち方をもっと深く説明致します。
バレーで肩の痛みが出る人と出ない人の違い
肩の痛みが出やすい人と出にくい人がいると思います。
では、両者の違いは何が原因なのでしょうか。もちろん、筋量の差やスパイクを打つ量も関係しますが、根本的な違いは「体の使い方」です。
打ち方が悪いと言いましたが、正確には体の使い方が悪いので、肩に痛みが出ます。
体で一番太いところはどこかご存知でしょうか?
腕?太もも?いえいえ正解は「体幹」です。サッカー選手の長友佑都選手が体幹トレーニングなるものを本で出していたりと、耳にする機会は増えているのではないでしょうか。読んで字のごとく、体の幹と呼ばれる部分で、だいたい首下から下っ腹までのことを指します。この体幹部をいかに上手に使い、枝葉となる手足を動かせるかで、体の故障する確率が大幅に減ります。
肩の痛みが出にくい人は、この体幹を上手に使って、腕を鞭のようにしならせてスパイクを打ちます。
この人体で一番太い体幹部を使うので、腕のみをまっすぐ振り下ろすだけで打つスパイクよりパワーも出ます。
トレーニングなども必要になってきますが、体幹を使った打ち方に変えるだけで肩のポジションが正常な運動ラインに近付くので、肩の痛みが出ないでスパイクが打てるようになります。
バレーで肩の痛みを出さない打ち方
ではいよいよ、バレーのスパイクで肩の痛みを出しにくくする打ち方をご紹介します。
体幹を使うと言われてもどう使ったら良いか分からないという方がほとんどだと思います。
体幹は単純に分けて、前に倒れる前屈、後ろに反る後屈、体を捻る回旋の3パターンがあります。
スパイクを打つときに悪い動作で、腕だけを振る動作の他に、体を倒すという動作があります。前屈の動きですね。これは力を乗せてボールを叩きつけようとしている人に多い動作ですが、この動作は腰を傷める可能性がかなり高くなります。この動作と腕の振り回しがセットになっている方は直ちに変えましょう。
これらの動きには共通点があり、それは直線運動ということです。直線運動は故障の原因になるのです。
ではどのような運動をしたら良いかといいますと、物をより遠くに力強く飛ばしたいときに、人間は回旋運動をします。回旋運動はエネルギーを生み出します。体で回旋運動を行なうと効率的にエネルギーが生み出されるので、直線運動より省エネで体への負担も小さくなり、球威は直線運動より上がるという効果があります。
いまいち理解されていない方がいるようでしたら、水がポタポタと垂れるくらい濡れたタオルの水分をなくしたいときに何をするか考えてみましょう。
どのようにしますか?直線運動のように畳んだり、叩いたりしますか?それとも絞るなどの回旋運動を入れますか?
答えは簡単ですね。
バレーで肩の痛みを出す原因がわかったら
体幹を上手く回して使うことはわかりましたが、腕はどのようにしたら良いでしょう?となりますね。
ボールにヒットしたら、腕は反対の股関節の方へと流しましょう。
右利きなら左股関節へ、左利きなら右股関節です。このように使うと、体幹の捻りと同じ方向に力が加わるので、より力強く良いスパイクになります。
この打ち方になると、腕を真上に上げて打つことがなくなります。それだとヒットポイントの高さが落ちるじゃんと思うと思いますが、一番高いところはそこではありません。
反対の股関節へ流した腕をそのまま体の前で円を描くように上げてきましょう。
そうすると、個人差はありますが、135度くらいの位置に腕が上がるはずです。
その135度の位置が、一番腕が伸びやすくて体幹の回旋運動のエネルギーを殺さずにボールへと伝えられるポジションなのです。
まとめると、体幹を回すようにしてエネルギーを生み出し、腕は約135度の位置で体幹の動きに合わせてスパイクを打ち、そのまま反対の股関節の方へと振る。という流れになります。
このとき注意していただきたいのが、体幹を捻るときに腰を強く回してしまうことです。肋骨から下の腰の骨・腰椎は回旋範囲が狭いので、腰を強く回すと腰痛になりやすくなります。反対に肋骨周りの胸椎は回旋範囲が広いですので、胸周りから体幹を回すようにしましょう。
肩の痛みが出るその他の原因
ここまでは、打ち方についての説明でしたが、肩の痛みが出る原因は他にもあります。
まず考えられるのが、筋力不足です。
練習量に対して、筋力が足りずに痛みが出ることがあります。この場合は、ケアをしていけば自然と必要な筋力が付いてくるので、正しく体を使っていれば、一過性のものになります。
次に考えられるのが、柔軟性が低いということです。柔軟性が低いと、少しの運動でも疲労がすぐに溜まってしまい、炎症を起こして痛みを出してしまう可能性があります。筋力不足と似たような感じですが、柔軟性が足りていないことは、ずっと付き纏いますので、ストレッチなどで柔軟性をあげるようにしましょう。
そして一番多いのが、ウォーミングアップとクールダウンが少ないということです。部活動で多い傾向で、特にクールダウンの時間がほとんどないという話を良く耳にします。
ストレッチをしないと、どんなに良い動きをしていても、筋肉が硬くなり、疲労が蓄積し、怪我をしやすくなります。
家に帰ってから、最低20分はストレッチをするようにしましょう。
この肩の痛みの原因は何?バレーの正しいスパイクとは まとめ
女子バレー日本代表の木村沙織選手は体の使い方がとても上手な選手ですので、男女問わず研究すると良いでしょう。
男子の場合は、まっすぐ振りぬく人が多いですが、筋力でごまかしている部分がありますので、あまり参考に出来ないと思います。
高校選びの一つのポイントとして、レシーブ用のサポーター以外のものをしている人が少ないところを選ぶの良いと思います。
怪我用のサポーターをしている人が多いところは、それだけ体のケアをおろそかにしている可能性があります。
選手生活を長く送るためにも、良い体の使い方とケアをしていきたいですね。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。