あなたのお子さんが、内科検診や学校の心臓検診で『心雑音がある』と言われると『心臓の病気なの!?』と驚くと同時に心配になってしまいますよね。
心臓の異常は、乳幼児の場合は、乳幼児健診で、就学期の子供の場合は、学校で行われる心臓検診で発見されることも多くあります。
ここでは、学校で行われる心臓検査の目的と、その結果によって考えられる病気についてお話したいと思います。
学校での子供の心臓検査の目的
昭和48年の学校保健法施行規則の改正により、定期健康診断として実施が義務付けられましたが、学校や地域によって検査方法、または検査を行う学年などもまちまちでした。
しかしながら、平成6年12月の改正から小学校1年生、中学校1年生、高等学校1年生全員に心電図検査が義務付けられるようになったのです。
学校心臓検診をする目的としては以下の項目があります。
1)疾患を正しく診断し、それに応じて適切な管理指導を行い、疾病の悪化を防ぎ、さらに突然死を防止する目的。
2)心臓検診により医療や観察を必要とする症例を早期に発見し、適切な管理指導、及び治療を指導する目的。また疾患がすでに発見されている患者にも主治医や専門医の管理指導をできる場を作る目的。
3)疾患があると診断された場合、過度の運動制限や無用な生活制限を解除し正しい指導をする目的。
4)以上の目的、目標を実現するべく必要に応じて専門医の意見を聞いたり、紹介したりする場を設ける目的。
子供達は、これらの心臓検診によって、疾病の早期発見を促し、精密検査などの2次以降の検診を経て、生活管理を行えるようになりました。
子供の心臓検査において重要なこと
正しく子供が心臓検査をされるためには、検診の前の事前準備が重要になってきます。
一番大切な事前準備は心臓検診調査票の提出です。
心臓検診調査票以外にも、学校では、保険調査票や結核問診表など、記入してもらう票があります。
調査票には、失神や動悸、あるいはめまいなどが起こったことがあるかどうかなど、普段の自分の体の状態を見つめなおし、確実に詳細を記入して提出するようにしてください。
この調査票を保護者や本人に記入してもらい、医師や専門医が調査票詳細を確認します。
そして、心電図検査とともに、2次以降の検診への抽出を決めることになるのです。
実際の心臓検診で、疾病を可能な限り発見することは重要なことですが、それ以外にも、その重症度を決定したり、疾病があるとしても、必要に応じて経過観察を行ったり、などの正しい指導区分を決めることになるのです。
事前の心臓検診調査票にもれなく記入することは重要なことですが、心臓検診によって、子供の突然死を防いだりすることができるのです。
心電図検査とは?
心臓の疾患を発見する手段として、心電図検査は非常に有効で、病気発見の第一の手がかりとしてよく用いられています。
検査方法も非常にシンプルで子供でも難なく受けることができます。
一般的な心電図は安静状態で測定しますが、必要に応じて、体を動かしてとる負荷心電図や、24時間通常の生活時にとるホルター心電図などの検査も行なわれます。
一般的には上半身裸になり、検査台に仰向けに寝ます。
そして電気を通り易くするためにケラチンクリームなどを体の表面に塗ってから、両手首と両足首、さらに胸に6か所の電極を取り付けて検査を行います。
これは、胸部誘導という検査方法ですが、このほかに、両手首と両足首の3か所だけで測定する四肢誘導という方法などもあります。
心電図の検査では、心臓の筋肉が拡張と収縮を繰り返し、微弱な活動電流が発生します。
心電図ではその波形の変化を記録し、その乱れから病気の兆候を読み取っていくのです。
検査中は微弱な電流が流れてはいますが、苦痛は全くなく、3から5分程度の検査時間で、検査は終了です。
子供の心臓検査で雑音発見!原因は?
心臓の雑音の原因はいくつかありますので、挙げていきます。
①無害性心雑音(機能性心雑音)
学校での心臓検診において発見される子供の心臓の雑音のほとんどは、病的な異常を伴わない無害性心雑音と言われています。
医師は聴診器で雑音の質を聞き分けて、ほかの検査所見(心電図や心臓エコー検査)や症状、発育や成長の状態をみて病的な原因があるかないかを判断します。
②器質性心雑音
雑音が心臓の何らかの異常によって起こっているものを器質性心雑音といい、多くは生まれつきの心臓病(先天性心疾患)が原因とされています。
以下が先天性心疾患になります。
・心房中隔欠損症
左心房と右心房の間の壁に穴が開き、酸素をたくさん含んだ血液が左心房から右心房に流れてしまうことで、全身に流れる動脈血が不足してしまう病気です。
穴が小さいと症状もないことも多く、検診で雑音があって初めて発見される場合があります。
・心室中隔欠損症
心房中隔欠損症と同じように心室の壁に穴が開いている病気で、こちらも検診で雑音があって発見されることが多いです。
このような先天性の心臓疾患の診断は聴診で雑音が聞こえたら、心電図や心臓のエコーの検査によって総合的に行われます。
乳幼児期に軽症であった穴が、小児期や成人になって突然重症化することはまずありませんので安心してください。
検査で心臓に雑音があると言われたら・・・
学校心臓検診でよく、心臓に雑音があると医師や専門医から指摘される子供がいます。
このように、雑音があるといわれたら、それがまず病的なものなのか、無害性のものなのか、医師の見解を確認しましょう。
病気が疑われる場合には、心臓のエコー検査を受けることになります。
この心臓のエコー検査は、全く痛みもありませんから、安心して受けられます。
軽症のうちであれば、血圧のコントロールや糖尿病や脂質代謝異常に対する内科治療で経過観察が可能です。
また、弁膜症などもエコーによって発見されることもあります。
弁膜症の場合には、手術が必要になってくる場合もありますので、検査による早期発見がとても大事なのです。
ですから、心臓に雑音があると指摘されているのに、勝手に自己判断で「大丈夫だ。問題ない。」などと判断などせず、絶対に心臓エコーの検査を受けるようしてください。
心臓の音が病的なものでない場合は、通常の学校生活や集団活動にも全く問題ないのです。
ただ、経過観察を進められた場合には、定期健診や頻度や注意すべき症状を医師に確認しておいた方がいいです。
子供の心臓疾患・・・先天性心疾患とは?
心臓検査では、様々な先天性心疾患が発見されることがあります。
乳幼児や子供の場合は発育成長による変化も認められるため、自然治癒するものもありますし、すぐに手術が必要な重症なものもあります。
我が国で最も多くみられる心臓の疾患は、心室中隔欠損症で、先天性心疾患の60%を占めています。
心室中隔欠損症は心臓の中の左心室と右心室を仕切る壁に穴が開いているもので、小さな穴では、5人に1人は自然に塞がります。
大きな穴の場合は、血液の逆流を防ぐために手術でこの穴を塞ぎます。
また、次に多くみられる心臓の疾患は、肺動脈狭窄で、先天性心疾患の10%を占めています。
脈動脈というのは、心臓と肺をつなぐ血管ですが、そこが狭くなってしまっていて、血液が肺にながれにくくなってしまっているのです。
ですから、重症の場合は、手術やカテーテル治療によって、血管を拡げていきます。
また、三番目に多くみられる心臓の疾患は、心房中隔欠損症で、先天性心疾患の5%を占めています。
心臓病の早期発見と正しい治療をしよう!
お子さんが心臓の病気と聞くとびっくりして焦ってしまいますね!
しかし、今では医療の発達に伴い、適切な治療法がある病気がほとんどです。
心臓病にはさまざまなタイプがありますが、早期の発見と正しい治療を行うことが大切です。
精密検査を勧められた場合は、必ず検査を受け、病的な異常がないか確認しておきましょう。