恥骨は左右にひとつずつあります。ですから痛みが片方に偏ることもまれにあります。左側だけ痛いといった場合は病気よりも普段の身体の使い方に問題があるかもしれません。今回は恥骨について様々な角度からお話ししていきたいと思います。
左右一対の恥骨の構造と役割
骨盤の仕組みと恥骨の関係ですが、恥骨のある骨盤とは骨格を構成する骨の集合体です。背骨側にある左右対称に広がった腸骨と腹部側にある恥骨、そして坐骨が結合してできてる寛骨、後方に仙骨、尾骨で作られています。
そして骨盤内の臓器は男女共通のものとして直腸、膀胱、肛門、尿道、S状結腸、女性はそれに加えて子宮、卵巣、卵管、膣があります。
骨盤内にある消化管と泌尿器系は内腸骨動脈、下腸間膜動脈で支配されています。女性の場合はさらに卵巣動脈と子宮動脈があります。
恥骨を支える筋肉として、上恥骨靭帯、内転筋、恥骨弓靭帯、薄筋、腹直筋などの筋腱があります。骨盤全体を上から見たとき寛骨と仙骨からなる円環構造をそこにみることができます。
その前方が恥骨で後方が仙骨を挟んだ仙腸関節であるといえます。
体重を支えるのは主に後方の仙腸関節なのですが固定されているだけではなく揺れるような動きで体重を処理していると考えられています。
この後方の揺れに前方で対応、連動しているのが恥骨結合で仙腸関節にかかる応力をうまくいなす重要な仕組みを形成しています。
左の恥骨が痛い場合考えられる原因は?
そもそも骨盤にある恥骨を日常生活の中で痛めることはほとんどありません。しかしスポーツや妊娠期、出産後に恥骨痛が生じることがあります。
そして恥骨痛は大きく5つの原因によって生じるとされています。
まず骨盤のゆがみです。
上半身が前後に傾いた姿勢や重心が左右に偏った姿勢などのバランスが悪い姿勢により骨盤がねじれたり傾いたりするとその歪みは恥骨の結合部と左右の仙腸関節部に伝わり恥骨の痛みとして表れます。
また原因の一つである恥骨結合炎はスポーツ中、特にサッカーでキックを繰り返している際に起こることが一番多く、他にも陸上競技ではマラソン中によく起こります。
ラグビーやホッケーでのタックル等で直接恥骨部に打撲を受けて負傷することもあります。
妊娠中に痛む場合は2つの理由が考えられます。
1つは女性ホルモンの卵胞ホルモンの影響です。卵胞ホルモンは妊娠3ヵ月後になると分泌されるようになるのですが骨盤の靭帯を緩ませるため骨盤に痛みがでるようになります。2つ目は坐骨神経痛で、胎児の成長に伴い骨盤を圧迫します。
産後の場合は出産時に骨盤が最大限に広がり骨盤に負荷がかかることです。
また転倒による恥骨骨折も大きな原因です。
左恥骨が痛いときの原因別対処法①
先ほどご紹介した原因毎に対処法があります。
・骨盤の歪みを治す方法
骨盤は運動をすることが一番の矯正方法です。
以下のストレッチをやってみましょう。
骨盤矯正ストレッチ
①仰向けに寝ます
②脚を90度に曲げます
③下半身だけ左右に倒します
④左右10回ずつ
お尻歩き
①脚を伸ばして揃えて座ります
②両手を前で交差します
③片方ずつお尻を浮かせて前に進みましょう
④そのまま10歩進んだら10歩下がります
⑤3往復しましょう
余裕のあるなら、両手を左右に広げて案山子のような状態で行ってください。
・恥骨結合炎の治療法
痛みが急性で強い時や発症してから半年以内であれば、およそ2週間はスポーツは禁止です。
恥骨部のアイシングや消炎鎮痛剤の服用、ステロイドホルモンの局所注射などを行います。さらに効果的なのがリハビリで初期は股関節の外転可動域の訓練、筋力強化、内転筋のストレッチを行います。
その後、プールで歩いたりエアロバイクを漕いだりする免荷訓練を行って順調に回復していれば、少しずつジョギングを混ぜていき、リハビリ開始からおよそ2カ月後にスポーツ動作を開始します。
リハビリを怠ると再発リスクが高まりますので、根気強くやりましょう。
慢性化すると、さらに2カ月~3カ月はスポーツができなくなってしまいます。
慢性化した場合や痛みが長期間変わらない場合は、手術をすることになります。
手術方法は薄筋腱切離や骨片摘出術恥骨結合の固定術など様々です。
左恥骨が痛いときの原因別対処法②
・妊娠時に痛む場合の対処法
対策は特にないのですが、出産後には痛みはなくなってくることがほとんどです。痛みがひどい場合は医師に相談のうえ、骨盤安定ベルトを利用したり、座る時にクッションを使うと良いでしょう。
・産後に痛む場合の対処法
通常は一年以内には自然に痛みが消えますが、一年経っても痛みが残っている場合は骨盤に歪みが生じたまま固まってしまった可能性があります。すぐに医師に相談しましょう。
・恥骨骨折の治療法
骨粗しょう症による骨折は、消炎鎮痛剤や非ステロイド性抗炎症剤を服用して安静にします。
1週間ほどの安静後リハビリを始め1~2カ月後には症状も回復し、障害が残ることもほとんどありません。
事故による恥骨骨折をしたら手術が必要になることがあります。
骨折部位が安定していないければ、「骨折観血的整復固定術」という手術になります。
合わせて内臓損傷があったら、命にかかわるため専門的な病院での処置が必要になります。
自分で出来る恥骨の痛み予防法
恥骨痛の予防法ですが、日常の癖に注意するだけで防げます。
足組やバックの肩掛け、片足荷重、アヒル座り、女の子座りなどに気を付けるだけで大丈夫です。
また骨格は歪んだとしても動くことである程度矯正されます。
大きなゆったりとした動作が望ましいです。
日常無意識でしている伸びの動作をすれば大丈夫です。
そして内臓を冷やさないことも大切です。内臓を冷やすと動きが鈍くなり、固くなり骨格を歪ませてしまいます。
特に恥骨痛の場合は下腹部の冷えには気を付けるべきです。
睡眠時の姿勢も気を付ける点があり、体を捻らせて寝るのはよくないです。抱き枕を利用するなどして体をねじらせないようにしましょう。
またスポーツ時に恥骨が痛む場合は必ず無理な動作をした場合によります。
人間の動作は脳で制御されているため無理な動作はやるべきではないです。
プロスポーツ選手は自分の限界を把握しその中で無理のない動作を心がけています。
無理な動作をしないことが良い選手になる条件ともいえます。
恥骨の痛みを和らげるストレッチ
骨盤の痛み、左右の恥骨の痛みを改善するためには骨盤周辺の筋肉の張りや歪みを取り除くことが大切だといえます。いわゆる股関節のストレッチで原因から改善することができます。
股関節のストレッチでは股関節の柔軟性を出し、骨盤の歪みが解消し、その結果体への負担が軽減されて骨盤の痛みの原因を緩和させることへと繋がっていきます。
それでは股関節ストレッチのやり方を説明します。
まず、あぐらの状態で座ります。
足の裏をくっつけて手で持ち、膝を床につけるイメージで上下に揺らします。
ポイントは脚の力を抜いてストレッチ感を出すことです、
20~40秒を目安に行います。
そして腕の力で負荷をかけてストレッチする方法もあります。
立った姿勢で脚を肩幅より広く開きつま先を外側に向けます。
膝を曲げて膝頭に手を置き、肩を左右のうち片方ずつ前に倒すようにして体を捻ります。相撲の四股踏みの形が分かりやすいと思いますが、ポイントは手で膝を後ろに押すイメージで股関節周りにストレッチがかかるように行うことです。
これも目安は20~40秒です。
そしておしりのストレッチもあります。
体育座りで後ろに両手を置いて両脚を伸ばしましょう。
片方の膝を外側に倒し足首を反対側の膝の上に乗せ4の字をつくります。
そして伸ばしてる膝を曲げ、かかとをおしりの方へ引き寄せ自然な呼吸で20~40秒行います。
妊婦が気をつけること
妊婦は腰痛や恥骨痛で悩む人も少なくないです。
妊娠するとリラキシンというホルモンが盛んに分泌され、このホルモンが靭帯でつながっている恥骨結合を緩ませます。
その結果としておなかの赤ちゃんの重みが恥骨にかかり恥骨に痛みがでます。
骨盤のサイズに比べて赤ちゃんの頭は大きく頭が恥骨結合を圧迫すると激しい痛みが伴います。妊婦の恥骨痛を楽にするためにはとにかく安静にして恥骨の周りにサポーターを巻いてみたり骨盤のゆがみを整える体操を行うことです。そうすると痛みがかなり緩和されるのですが、それでも楽にならない場合は骨盤ではなく股関節の動作のなかに原因があると考えられます。
恥骨痛を持っている妊婦は恥骨結合が固くなっているので恥骨付近に付着した靭帯を緩めれば恥骨の痛みは治ります。そして恥骨痛を改善する基本的な方法として日常生活に気を付けることが挙げられます。
歩くときは大股ではなくなるべく小股で歩くなど小さな動作から骨盤への負荷を減らしていきましょう
恥骨痛はゆっくりと治しましょう
恥骨痛は様々な原因で引き起こされます。そのどれが原因であれ、痛みは時間とともになくなっていくでしょう。しかし、再び同じ原因が生じたとき痛みも戻ってきます。つまり根本原因を取り除かなければならないのです。そのためには原因追求をしてください。この記事の中からその原因が見つかると良いですね。参考にしてください。