手首を骨折したら後遺症でしびれや麻痺が残る可能性がある?

最終更新日:2023/06/06

転んだ際に手をついて手首を骨折したり、交通事故の強い衝撃で骨折したりすることが多々あります。骨折は正しく固定、リハビリしないとしびれや麻痺が出続けるといった後遺症が残ることがあります。正しい認識の元、医師の判断に従い完治するまで大変な努力が必要です。後遺症で手が使えなくなったらどうしますか?それでは今回は手首の骨折の治療法や完治までの道のりをまとめていきたいと思います。

手首の骨折で起こる後遺症とは

手首の骨折は絶対に放置してはいけません。より大きな疾患を引き起こし、長年障害に悩まされることになってしまいます。
本来の整復位置に固定せず、骨がくっついて変形することで、掌や指が思い通りに動かせなくなるという機能障害が残ることがあります。
これは「変形治癒」と呼ばれる疾患です。
骨折時にずれた骨や腫れが長期間神経を押さえ付けてしまうと、手の指が痺れるといった症状が現れることもありますが、変形治癒により神経が圧迫され続ける位置で骨が固まってしまうと、神経に障害を残すこともあります。
これを「手根管症候群」と呼びます。
また、強い衝撃を受けたり、運動をし過ぎたりすることにより筋肉に大きなダメージが加わると、炎症時に引き続きカルシウムが沈着してしまい、石灰化現象が起こります。こうした関節や筋肉などの損傷は、骨がないはずの場所である筋肉に骨組織を形成してしまいます。この疾患を「骨化性筋炎」と呼びます。激しく転んで手首をぶつけてしまったり、負担の大きいリハビリによって手首周辺に付いた筋肉に炎症を起こしてしまった場合などは、後遺症としてこの骨化性筋炎が発生する危険性も考えられるため、注意が必要です。

手首を骨折する原因

手首から肘にかけては橈骨と尺骨という2本の骨が、掌には27個もの骨があり、手首のくぼみを挟んで親指側を橈骨、小指側を尺骨と言います。
肘から手首周りには、指を動かす筋肉がびっしり。特に手首の手の平側の筋肉によって私たちは指を動かしています。
「手首骨折」正式名称「橈骨遠位端骨折」とは、橈骨の手首近くの骨折のこと。転倒して手を強くつくと発生し、若者の場合はスポーツや交通事故、転落事故、激しい転倒が原因です。骨密度の弱い高齢者は少しの転倒でも発生します。高齢者4大骨折の1つで、年を重ねると発生し易くなります。女性の発生が多く、男性の3倍程とも言われます。80歳以上になると転倒時とっさに手が出ず発生は少数です。
橈骨遠位端骨折の種類は骨折によるずれ(転位)により分類されます。
今回は4つの転位の分類を解説します。
■コーレス骨折(コレス骨折)
地面に掌をつき、手の甲へと骨折部がずれポコっと膨らみます。4つの中で最も多いタイプ。
■スミス骨折
手の甲を地面につき、掌側に骨折部が転位。物を持ったり、自転車でハンドルを持ったまま手の甲をつくと起こります。
■背側バートン骨折
手の甲側が骨折してずれた状態。手関節が骨折し掌部分がずれます。
■掌側バートン骨折
手関節の掌側が骨折してずれた状態。手関節を粉砕骨折すると治療が大変難しくなりますので、バートン骨折の場合は割れてずれている部分が複数ないか注意深く調べます。

手首を骨折するとどういった治療をする?

転んで手をついた後も手首が痛む場合、手や指が動かせても骨折の可能性があります。
患部を固定し心臓の位置まで上げ冷やして、速やかに病院へ行きましょう。
病院では視診にて腫れ具合や痛みがある場所を、レントゲンで実際に骨折の有無を確認し、時にはCT検査を行います。
レントゲンでは転位と骨折の種類を確認し、ギプス治療できるか手術が必要かを判断するため、とても重要な検査です。
骨折した骨が皮膚を突き破る「開放骨折」の場合は緊急手術。骨折に転位がなければギプスで約4週間固定。転位がある場合にはレントゲン室で骨を透視し、皮膚の上からずれた部分を戻す「徒手整復」を施し、その後にギプスで固定します。
他に「フィンガートラップ牽引整復法」という整復法では、指にサックをつけて上から吊るし、腕に重りをつけて上下に引っ張り合い、手で折れた位置を元に戻します。
痛みを伴うため部分麻酔での対応が多いです。
どちらの整復も4~6週間程度固定します。
「徒手整復」で回復しやすい場所まで戻せない場合、ギプス固定時の定期健診で再びずれが見られる場合、関節内に骨折が及んでいる場合は手術が必要です。このときは全身麻酔を行い、正確に骨折部を整復してプレートと数本のスクリューで固定。術後はギプスが必要なくリハビリを早期開始でき、関節や筋肉の衰えを抑えられます。この場合も骨がくっつくまでの期間には大差がなく、注意する期間はギプス治療の時と変わりません。

後遺症を残さないためにはきちんとリハビリを

手首の骨を折り、適切な整復をしっかり施さずに異常な形で固まってしまうと、深刻な症状に長い間付き纏われてしまう恐れがあります。さらに手首の場合、必要以上に気を張って動かさないようにし続けることは、かえって症状の悪化に繋がりかねません。
長期間動かさないことで指や関節の動きが悪くなってしまうのです。そのため、少しでも違和感があるならできるだけすぐに、病院で診断と治療を受けることと、専門家の指導に従って適切なリハビリを行うことを、必ず徹底することが大切です。
ギプスでの治療を開始した場合も、手術での治療後も同様に、その当日から手と指、肩を自分で動かす運動を行います。
これを行わないと、関節が拘縮してしまいます。
これと平行して、手首を心臓部まで上げるために腕を意識的に上げて、腫れを防ぐような動きも取り入れましょう。
自らの意思で体を動かす自動運動により、静脈を通して血液を心臓に戻すポンプを正常に働かせ、血の流れを良くして腫れを防ぐことが出来ます。
ギプスをはずした後や、手術後2~3日が経った頃には、手の関節を動かすリハビリを開始します。その同時期に、医療用粘土やボールを使って手を動かす運動や、普段の生活の中に取り入れる作業を行ってのリハビリも推奨されます。この関節可動域訓練は、手関節の拘縮を防ぎ、手首の可動域を復活させるために用いられます。

後遺症がなくても握力が戻るには時間がかかります

まずはじめに、聞き慣れているものの意外とややこしい「完治」という言葉がどういう意味なのか、正確に理解して頂くためにご説明します。
まず、完治と間違えられやすい「全治」について。これは、骨がつながりました、お医者さんに診察してもらう必要はありません。ですが、今まで通り日常生活を送るためにリハビリが必要ですよ。という意味の言葉です。
それに対して、リハビリも終わって、これまで送ってきた通りの日常生活が問題なく出来るようになった状態、これを「完治」と言います。
手首を骨折してから、手関節の可動域が健康な状態に戻るまでは、手術治療の場合は3~6か月、ギプス固定などの保存療法の場合は1年以上の期間がかかるという場合も少なくありません。
また、握力が骨折前と同等にまで回復するのには、関節の可動域回復よりも、さらに時間がかかると言われています。骨折してから、握力は6か月かけても70~90%までの回復に留まると言われ、完全に元の握力に戻るまでには1年~10年を要することすらあるのです。

手首の骨折はリハビリが大切なのです

手首を骨折したら、どれだけ大変かお分かりいただけたかと思います。後遺症を残さないためにも完治をするためにも、早期治療とリハビリをしっかりと計画を立てて行っていきましょう。元通りの生活が送れなければ、それは完治したとは言えません。今まで通りの生活を何不自由なく送るためにも、リハビリを続けていってください。

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