身体にある関節という関節には必ず靭帯があります。靭帯は関節が可動域以上に動かないようにする役目があります。転んで手を強く地面について手首を痛めた場合、靭帯が断裂してしまうなんてこともあります。スポーツ選手は靭帯断裂すると再建手術をしますが、必ずしも手術をする必要があるのでしょうか?今回手首の靭帯を痛めた場合、どうなるのか、どう対処するべきか、お話ししたいと思います。
TFCC損傷とは
手首の関節にある三角線維軟骨、手関節尺側靭帯、遠位橈尺靭帯などを含む手関節の尺側支持機構の損傷を総称してTFCC損傷といいます。
しばしば手首の捻挫と間違えられてしまう事が少なくないです。
TFCCは尺骨と手根骨の間で緩衝材として手首関節の安定性を保つのに大事な役割を果たしています。
手首の関節の安定性を保っている靭帯、すなわち背側橈尺靭帯、尺側三角靭帯、掌側橈側靭帯、尺側月状骨靭帯、手首の小指側に痛みが表れます。
転んで手首から着地してしまい捻ったので捻挫と感じたものが勘違いで、実は手首のTFCCと呼ばれる靭帯を損傷するケースがしばしばあります。
先述のように手関節の捻挫と間違ってとらえられる事が少なくなく、痛みの状態にも左右されますが、きちんとしたとした鑑別が必要です。また完治まで長引くこともしばしばあり、その際にはなかなか痛みが取れず、同じ場所が継続的に痛んだりむずがゆい症状が残ることもあります。
手首の靭帯を痛める原因は
それではどうしてTFCC損傷になってしまうのか、原因について書いていきます。
TFCC損傷とはざっくりいうと手首の小指側にある靭帯や軟骨が損傷した状態のことです。TFCC損傷になる原因は複数あります。
その中で主なものは次の3つです。
それは怪我と使い過ぎと加齢です。
怪我は、例えば転倒して手首から着地してしまった場合などです。
使い過ぎの例は、よくあるパターンとして例を挙げるとスポーツです。テニスやゴルフといった手を多く使用するスポーツを長年継続した場合、軽い負荷が継続的に手首にかかってしまうことになります。その結果として靭帯や軟骨が損傷して手首の小指側に痛みが出るという状態になります。
加齢による原因はそのままで、年齢に伴い軟骨が変性してしまったためとされています。実は手首の小指側が痛くなる原因がもう一つあります。
肘から手首にかけて走行する筋肉があるのですが、この筋肉は手首を小指側に倒す時に動きます。日常の動作ではドアノブを回したり、テニスでボールを打つなど、またハンドルを回すといった時に作用する筋肉です。この筋肉が硬直化してしまうとTFCC損傷のような痛みが出てしまいます。
手首の靭帯を痛めた場合、基本的に手術はしない
そしてTFCC損傷の治療ですが一旦、固定で治療を試みて、治らなければ投薬や手術を行います。
痛みが発生したときには、まず初めに患部のアイシングをします。その上で包帯などで手首を支えるようにすることで、TFCCに負担をかけないようにします。包帯などによる支えで痛みが引かない場合には、ギプスで固定を行うことによって、確実にTFCCへの負荷を減らしていきます。固定はおおよそ3週間程度行い、その後は、徐々に動きを広げていきます。
ただし、しばらくは手首を使う動作でTFCCに負担がかかるのを軽減するために、テーピングなどの取り外し可能な固定具を使用します。
それらのような治療でも痛みが再発する場合として炎症止めの薬を注射する治療を行います。注射を数回試してみても痛みが取れずに、スポーツに不可欠な動作や日常動作か不可能な場合には手術を検討する必要かあります。
手術では損傷したTFCCを縫うのは困難なため多くの場合は傷ついてしまったTFCCを取り除く手術を行います。
TFCCの手術方法とは
次はTFCC損傷の手術療法を述べていきます。
先述したように3ヶ月経過しても症状の改善がみられない場合には手術の検討を要します。
手術としてはTFCCの部分的な切除や縫合、再建、そして尺骨突き上げ症候群の場合には尺骨の短縮術を行うことが一般的とされています。
手術後には指や肘、肩のリハビリからスタートし徐々に手首のリハビリも加えていき日常生活に復帰とする流れで行います。
それでは具体的な方法や費用などを紹介していきます。
具体的な手術の方法ですが、これは関節鏡視下手術という方法が多いです。
内視鏡を関節に挿入して映像を目で確認していきつつ行います。関節の内部を水などで膨らませながら行います。関節の中は基本的には一切の菌が存在しないので、整った清潔な環境で行う必要がある手術と言われています。
切開して開く必要がなく、正常な組織を傷つけるリスクもほとんどないことから身体への負担が少なく、手術後の回復が早いことがが特徴とされています。
一方で関節鏡視下手術は膝の関節がしばしば行われていますが、肩の関節や股関節、肘の関節、手首の関節、足の関節に関しても幅広く行われています。
手術をした場合、大変なリハビリが待っています
そして術後のリハビリですが、先述の通り手術後にはリハビリは必要不可欠です。
固定期間中は患部外である肩や肘そして指の運動療法を行います。
固定が軽くなるにつき手首の運動療法も始めるのがよいとされています。
そしてこのリハビリの開始時期が重要です。
一貫して有効であるとされる方法は現在のところないですが手関節には掌屈や背屈、撓屈や尺屈などの運動があり、前腕の回内・回外という運動でも影響を受ける以上、どのような運動をどのタイミングで始めるかが研究されているようです。
リハビリの開始が遅延すると関節の動きが硬くなるなど滑らかな動きができなくなるといわれています。
またリハビリの開始が早い場合や強度が強すぎると関節が不安定となるため筋力低下などが起こります。
リハビリの目標は日常生活や仕事で支障なく過ごせることでありその目標に到達して完治とされます。
TFCC損傷の治療期間の目安ですが、年齢や生活習慣、損傷の程度、機能回復の求めるレベルが違うため個人間で差が出ます。しかしあくまで概ねの治療期間としては皮膚で1~2週間、筋肉で3週間程度とされています。
手首のアフターケアをしていきましょう
また手首へのケアを意識して行うことである程度TFCCは防ぐことが可能です。発症すると運動制限が長期間にわたるため、そのような事態にならないように発症する前の早めのケアが大切です。
運動中のケアの注意点ですが、まず症状が出る前に手首を休ませることが大切です。
過去2週間で動かした回数までは許容範囲ですがそれ以上は適度なクールダウンが必要となります。
早めに休ませることによって回復力が高まります。
また違和感などの軽い症状が出た場合、即時に運動を中止してアイシングとテーピングを行い、違和感に対してケアすることが大切です。
もしも無理してしまった場合は一気に悪化し治療期間も長引く結果となります。
また損傷した部位を回復するのは栄養成分です。腱や関節の潤滑油も栄養からできているため栄養成分を補給することも手首へのケアとして大切な要素です。
TFCC損傷を緩和する栄養をとることによってリスクの軽減を図ることができるのです。
手首の靭帯を痛めたら手術も視野に入れましょう
手首の靭帯を痛めると、日常生活に支障が出ます。すると痛みを庇うことでさらなる障害を引き起こしたりする可能性もあります。手首は私達の生活で欠かさず使っています。動かさないで生活できますか?難しいですよね。そう考えると靭帯を痛めてしまったら、手術をしてでも治すべきだと思いますよね。リハビリ期間は少し辛いかもしれませんが、その後のことを考えて手術をするかどうかを判断してください。