整形外科ってどんな診療科なのでしょうか。
皆さん整形外科の診療内容ってご存知ですか?
また、整形外科でリハビリを行う場合、あまりマッサージをすることはないのですが、実はマッサージには効果があるのです。
今回は、整形外科についてのご紹介と、リハビリに有効なマッサージの効果と手法、さらに注意点についてご紹介していきたいと思います。
整形外科とはどんな診療科なのか
整形外科は、非常に幅広い疾患に対応することができます。
スポーツ障害や労働災害、交通障害、捻挫・骨折などの外傷、小児整形外科など全てを含めて”整形外科”と呼びます。
そのため行われる治療も様々で、手術や薬物療法、リハビリなど症状や病態に合わせて適切なもので対応することができます。
ここでは、整形外科ではどんな疾患に対応できるのかしっかりと把握し、いざという時に困らないようにしておきましょう。
整形外科とは、骨・軟骨・筋・靭帯・神経など、運動器官を構成している全ての組織に生じる疾患や外傷を対象としている診療科です。
よって診療範囲は脊椎・脊髄、上肢(肩、腕、肘、手、指)、下肢(股、足、膝、指)、骨盤など全身が該当します。
小児から高齢者まで対象年齢も幅広く、平成14年度の厚生労働省の調査によると、内科の次に患者数が多い診療科であることも分かっています。
さらに、高齢化が進む日本現代において、最も多い疾患は腰痛という結果も出ており、肩こりや変形性関節症などで悩む方も多くなっています。
また疾患だけでなく骨折や打撲など外傷や、肩こりなどの日常的な体の痛みにも対応します。
そのため治療のほかにマッサージやリハビリも行われていて、外反母趾や偏平足などの障害の治療を行っている施設も少なくありません。
大きな病院に行くとよくわかりますが、手術件数や入院患者数もほかの診療科に比べて多いのが整形外科の特徴です。
肩こりや腰痛は整形外科でリハビリも含めた総合的な治療を
日本整形外科学会から発刊された腰痛診療ガイドラインによると、腰痛の治療をする場合には重篤な脊椎疾患や神経根症状の有無を確認する必要があるとされています。
それによりこれらの症状に該当しない場合は、単なる腰痛と診断されて通常4-6週間程度、痛み止めや湿布などを使用して保存的治療が選択され様子を見ていくことになります。
痛み止めでも痛みが解消しない場合には重篤な疾患の可能性があるため、血液検査など再度検査が行われます。
肩こりの場合、主に薬物治療、牽引療法、温熱療法、理学療法の4種類を用いて治療が行われます。
①薬物療法
湿布や筋肉弛緩薬など様々な種類の薬物を使用して症状を抑え、痛みの悪循環を取り除きます。
②牽引療法
物理的に首を引っ張って正しい位置に頸椎などを戻し、コリをほぐす方法です。
③温熱療法
筋肉を温めることで血行促進し、コリをほぐします。
電気療法や温熱療法(ホットパック)などがあります。
④理学療法
マッサージやリハビリなどによって血液の循環を改善させます。
運動を行うことで筋肉を動かし、筋肉や関節を強化させます。
整形外科でリハビリテーションでのマッサージの効果は?
マッサージとは理学療法の手段の一つで、身体を擦り、もみ、叩くなどして力学的刺激(圧と伸長)を与えることで、皮膚・筋・循環・代謝などに反応が起こり疾病の自然治癒力の効果を促す方法です。
その効果は、血管や運動神経へ刺激を与えることで皮膚の末梢血管の拡張させ、皮膚温度を高めて発汗を促すことです。
整形疾患で皮膚組織の瘢痕化(はんこんか)はよく見られ、その癒着に対してマッサージを行うと、癒着を柔らかくする作用があります。
皮膚の柔軟性低下による関節可動域制限がある場合、マッサージは非常に有効な手段と言えるでしょう。
筋肉組織に対しては、筋の緊張を和らげて静脈の心臓への流れを促し、蓄積していた疲労物質を排出しやすくします。
これによって筋肉の血流が改善されて酸素・栄養素が行き渡るようになり、筋の収縮力が高まると言われています。
こういった効果から、一次的に運動のパフォーマンスを上げるためにスポーツ選手の試合前にマッサージが用いられることもよくあります。
マッサージによる循環器への効果は、圧刺激により表在・深部のリンパや静脈間の流れを促し、うっ血やむくみの軽減を促します。
これにより酸素と栄養の循環も促されるので、代謝アップにも効果的です。
感覚受容器を圧刺激することで反射・反応を促し、神経系に対する効果も見られます。
マッサージは疼痛の緩和や緊張を弛める効果があり、心理面でも多大な作用を発揮しています。
リハビリテーションでのマッサージの手法
整形外科でのマッサージの方法はさまざまあります。
あまり細部にこだわらなくても、要は”筋組織に刺激を与え、血流を促すこと”ができればOKです。
①軽擦法
末梢から中枢部に向かって、血管やリンパの走行に沿って軽く圧を加えながら手を滑らせ、もとに戻すという動作を繰り返します。
特徴としては加える圧が軽く、皮膚の表面を滑らせるようにして循環を流すことに主眼を置いたマッサージの方法です。
さらに手掌法、母指法、二指法、指背法など、手のどの部分を使うかによって分類されます。
②強擦法
軽擦法よりも強い圧で行います。
リハビリを行う人(施術者)の母指または示指と中指などの指腹部を患部に直角に当て、一定の圧を加えて皮膚とともに移動させるという手法です。
外傷、筋肉、関節および関節周辺に病的滲出物が貯留している例の軽減や癒着した組織を剥離させる目的で行われます。
軽擦法が”擦る”感覚なら、こちらは”こねる”感覚で行います。
こちらも同じように、部位によって手の使う部分が異なります。
③圧迫法
患部に対して1~5分程度、母指や示指、中指で施術部点に集中して圧迫を加える方法で、いわゆる”指圧”です。
神経痛やけいれんなどによく用いられる手法です。
④その他
圧迫を加えながらリズミカルに振動させる”振戦法”や、手掌で叩く叩打法などがあります。
これらは技術的に難しいため、機械を用いて行われることが多いようです。
マッサージの適応・応用する場合
マッサージの手法がさまざまあることが分かりましたが、整形外科のリハビリにおいては、どのような疾患に対してでどの手法が用いられているのでしょうか?
ここでは、その目的と手法について説明していきたいと思います。
強擦法、揉捏法は関節拘縮、軟部組織の癒着、皮膚組織の瘢痕の剥離に対して用いられ、これは関節可動域制限のある例とされます。
軽擦法、揉捏法、圧迫法は、中枢疾患による筋痙直、ギプス除去後の筋や腱の短縮に対して用いられます。
また、骨折後や手術後、患部の血行障害、阻血による浮腫、腫脹などにもこれらが適用されています。
四肢の切断端痛、慢性関節リウマチ、関節症、骨折、脱臼、捻挫、打撲、関節形成術後、末梢神経麻痺、神経炎後、神経痛、筋筋膜性疼痛や浮腫軽減など、疼痛や循環障害がある場合にも、軽擦法、揉捏法が適用されます。
捻挫や打撲、肉離れなどスポーツ障害に対して筋収縮力を上げたり、一時的にパフォーマンスを上げる目的で用いられるのは、強擦法、揉捏法です。
リハビリマッサージをしてはいけないとき
ここまでの説明でリハビリをする中で、さまざまなマッサージ方法はとても有効だというのはお分かりいただけましたか?
しかし目的を間違えたりしてしまうと、全く効果を得られないどころか、酷いと症状を悪化させてしまう恐れもありますので注意が必要です。
自分でやるもしくは身内の方にマッサージをしてもらう場合は整形外科の先生に指示を仰いだ上で、正しく行うようにしてください。
マッサージの効果が確認できない”相対禁忌症”や、さらに深刻なのは”絶対禁忌症”でマッサージを行うことで逆に体を痛めてしまう可能性もあるので注意してください。
相対禁忌症に分類されるものは以下の通りです。
血管病に類するもの
・動脈瘤・高度動脈硬化症・潰瘍性疾患
胃潰瘍に類するもの
・十二指腸潰瘍
結核症に属するもの
・肺結核・脊椎カリエス
その他
・梅毒・淋病・化膿性疾患など
また、絶対禁忌症に分類されるものは以下の通りです。
急性病に属するもの
・急性熱性病・急性伝染病
悪性腫瘍に属するもの
・癌・肉腫
急性中毒に属するもの
・蛇毒・昆虫毒
急性炎症に属するもの
・腹膜炎・虫垂炎
出血性疾患に属するもの
・喀血・吐血・脳出血直後
外傷に属するもの
・創傷部・骨折・脱臼直後
重症の内臓疾患
・心臓弁膜症・腎炎など
症状が重いと禁忌疾患に分類され、”疾患の治療”ではなく”痛みの緩和”が目的の場合、癌などが”絶対禁忌症”に該当します。
施術は可能ですが、細心の注意を払うことが重要です。
症状に合った適切な治療を受けましょう
いかがでしたか?
整形外科の治療の内容は、一般外科などと区別が付きにくい面もありますが、基本的に整形外科は運動期間に関する疾患を扱う診療科なのですね。
腰痛や肩こりなどに悩まされている方など、一度、整形外科を受診してみるといいかもしれませんね。
また、検査次第で骨折などの悪い状態でなければ、リハビリテーションなど積極的に取り組むのもいいかもしれませんね。