筋肉の硬直・変形、呼吸器障害などの全身に症状が現れる筋ジストロフィーという病気
をご存知ですか?
筋ジストロフィーは指定難病です。
時間と共に進行していく病気で、現在まだ治療法は見つかっていない病気です。
筋ジストロフィーといってもさまざまな種類があり、症状もさまざまです。
現在可能な治療法もご紹介します。
筋肉の硬直・・考えられる病気「筋ジストロフィー」とは
難病と言われている筋ジストロフィーとは、いくつかのタイプがあるものの、共通している部分は「筋力と運動能力が弱くなる」ことです。
主な症状は筋肉の硬直や変形から始まります。
その後は呼吸器官や心臓の働きが鈍くなってきたり、それに伴う合併症などを引き起こすため、最終的に全身の機能に影響を及ぼします。
2015年になるまでは筋ジストロフィーが難病であると国によって定められていなかったため、患者は障害者認定を受けていました。
しかしこの場合、症状が軽度なら認定されないという難点を抱えていました。
現在は一定条件を満たしていれば、障害者手帳を所持していなくても、障害者に関連するサービスや医療費に関する制度などを受けることが出来ます。
筋ジストロフィーの患者は寿命が短いと言われていますが、実際はタイプによって個人差があります。
またリハビリや技術の進歩もその手助けとなっており、徐々に寿命は延びてきています。
寿命に関係する症状は筋肉の衰えと筋力の低下なので、身体を動かすリハビリは特に有効です。
筋肉硬直する難病、筋ジストロフィーの種類①
難病である筋ジストロフィーのうち、デュシェンヌ型と呼ばれるタイプは最も患者の数が多いと言われています。
X染色体の異常によって引き起こされるため、患者のほとんどは男性です。
染色体の造りは男性がXY、女性がXXとなっています。
そのため女性の場合は片方の染色体に異常がなければ発症することは滅多にありません。
デュシェンヌ型は症状が進むペースは遅く、下半身の筋肉が衰えることで転びやすくなったり、脚が腫れてきたところで何かがおかしいと感じることが多いようです。
加齢に合わせて筋肉は硬直していき、10歳になる頃には車椅子を使わなければならなくなるでしょう。
それからは心臓の機能が落ちてきて、呼吸がしにくくなり、食べ物を飲み込むことも困難になってきます。
そのため寿命もとても短く、成人まで生きられれば良いと言われています。
一方、ベッカー型というタイプは12歳くらいに発症し、進行も遅めです。
そのぶん寿命も若干長く、50歳くらいまで生きる人もいるようです。
先天性筋ジストロフィーの場合は全ての染色体のうち、1本でも異常が見られれば、性別は関係なく発症します。
生まれて間もなくから筋肉が弱っていくため、ミルクが上手く飲めず、首もなかなか据わりません。
また頬が丸くまつげが長いという独特の顔付きになり、歩くことは恐らく一生出来ません。
その後は年齢と共にデュシェンヌ型と同じ症状が現れます。
筋肉硬直する難病、筋ジストロフィーの種類②
難病指定を受けている筋ジストロフィーの中で、肢帯型筋ジストロフィーと呼ばれるものは遺伝子の異常から引き起こされますが、その異常にも様々な種類があるので、ここからさらにあらゆるタイプへと分かれていきます。
発症時期もタイプによってバラバラで、症状の度合いもデュシェンヌ型とほぼ同じだったり、歩けるくらいに軽かったり、呼吸器官や心臓などには何も支障がなかったりと個人差があります。
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの場合は7割が親からの遺伝が原因となっています。
発症する年齢は6~20歳くらいと幅があり、名称が表す通り、顔や腕が動かしにくくなります。肩の周辺の筋肉が硬直し縮んでいくので、肩甲骨が突き出しているように見えるとも言われています。
呼吸に関しては問題がなく、症状の進行もゆっくりなので、高齢になっても一人で生活出来ることが多いようです。
筋強直性ジストロフィーは、子供のうちはまず発症しません。
こちらも原因は遺伝によるものです。
成人の筋ジストロフィーの患者では最も多いタイプとされています。
筋肉がこわばってしまうため、例えば手を握ると開けなくなるといった症状に見舞われます。
それをきっかけに全身の筋肉が弱っていき、白内障や糖尿病などを併発する可能性があります。
場合によっては髪の毛が抜け落ちたり、知的障害が出ることもあるようです。
筋肉硬直は筋肉障害、難病の筋ジストロフィーの症状は?
難病とされている筋ジストロフィーのうち、デュシェンヌ型というタイプは幼い頃に発症するため、子供が歩き出す時期になってもなかなか歩かなかったり、歩いても何処かふらついていたり、転びやすい上に立ち上がれないなどといった様子ならこれの可能性を疑いましょう。
成人から発症する筋強直性ジストロフィーも似たようなもので、ペットボトルの蓋が開けにくいと感じたり、幼少期よりもよく転ぶようになったらこの症状であるかもしれません。
上記の2つだけではなく、どのタイプにも当てはまる点は筋肉の硬直や萎縮、筋力低下です。
怪しいと思ったらすぐに病院を訪ねましょう。
筋肉に障害が現れているかどうかは、血液や筋肉組織の検査でも見つけることが出来ます。
デュシェンヌ型はとても分かりやすく、手足の関節の周りが影響を受けるため、肘や膝の曲げ伸ばしが困難になります。
症状が進むと立つことや座ることが不自由になっていき、重症化すると寝たきりになったまま動けません。
さらに筋力が落ちることで、脊柱の形が変わってくることがあります。
こうなってしまうとますます身体が動かしにくくなるので、度合いによっては手術を行い、元の位置に戻してやります。
筋肉硬直以外にも全身に症状が現れる
難病に含まれる筋ジストロフィーの主な症状は筋肉の硬直ですが、これ以外にもいくつかの症状があります。
そのひとつが「呼吸障害」です。
タイプによっては呼吸を司る筋肉が弱っていくため、肺活量がどんどん落ちていくのです。
これには脊柱が曲がることで、胸の形が変わったことも原因となっています。
呼吸しにくくなると、咳や痰が上手く出せないということになるので、そこから肺炎や無気肺などの病気を引き起こすと言われています。
酷くなると手術をするか、呼吸しやすくする機械を使うことになるでしょう。
食べ物を噛んで飲み込むことが困難になることもあるようです。
心臓周辺の筋肉が弱ると血液の巡りが悪くなるので、常に心不全の状態となってしまいます。
デュシェンヌ型はジストロフィン蛋白と呼ばれる成分が不足することで発症すると言われています。
そのため心臓の筋肉に関しては歩行や呼吸とは関係のないところで進んでいく上に、車椅子に乗るようになった場合、身体を動かさなくなるので心臓周辺がおかしいとすぐに気が付くことが出来ません。
難病の筋ジストロフィーの治療法は?
筋ジストロフィーは難病指定こそされているものの、原因が判明しているため、具体的な治療方法の研究が進められています。
今のところは薬やリハビリなどで進行を遅らせるようにしています。
デュシェンヌ型に使われる薬はステロイドです。
これを摂取すれば筋肉の硬直や呼吸機能が弱くなることを抑えられるので、とても有効であると見なされています。
しかし使いすぎると胃腸の調子が悪くなったり、肥満や骨粗しょう症などが副作用として引き起こされるため、一定の年数だけ使うように決められる場合が多いようです。
ステロイドの他に、ダントロレンナトリウムと呼ばれる筋弛緩剤を使うこともあります。
最も大事なのはリハビリをすることで、筋肉を適度に動かすことです。
ですが激しすぎると筋肉に負担が掛かり、組織が壊れてしまいます。
無理だけはしないように気を付けて、必ずプロの指導下で行うようにしましょう。
リハビリの方法は筋ジストロフィーのタイプにもよりますが、デュシェンヌ型は段階を踏んでリハビリを進めていくように組まれています。
早期発見でリハビリやケアを
筋ジストロフィーと言っても様々な形があり、病気の重さも違うようですね。
筋ジストロフィーは進行していく病気なので、早期発見し、リハビリやケアをしていくことが大切ですね。
筋ジストロフィーの治療法はまだ確立されていないということですが、今後一日でも早く新しい治療法が開発されることを期待したいですね。