背中の痛みは筋肉痛やコリが原因であることは多いですが、もしかしたら内臓の異常を知らせるサインで痛んでいる可能性も考えられます。
呼吸をする度に痛むようなら内臓疾患を疑いましょう。
そんな場合、病気の種類によって対処法が変わっていきますので気をつけましょう。
今回はそんな背中の痛みから考えられることをまとめてみました。
背中の痛みが筋肉痛やコリの場合
背中の痛みの原因で最も多いのが筋肉痛やコリの場合です。
筋肉痛の場合には前日に労働や子どもと遊んだりしたりしたという原因がすぐに思いつくことが多いと思います。
背中の筋肉は主に広背筋からできています。
広背筋はかなり大きな筋肉です。
普段は座って仕事をすることが多いとこの筋肉はほとんど動くことがなく、衰えがちな筋肉です。
少しの労働や遊びで背中に筋肉痛が出るというのは少し運動不足と考えてください。
広背筋を鍛えると背筋が伸びる、男性の場合には逆三角形になる、女性の場合にはウエストが引き締まる、筋肉の燃焼度が上がるのでダイエットにもなります。
広背筋が筋肉痛になる少し手前の運動をおすすめします。
コリというのは筋肉の衰えや血行不足を知らせるために体が発する信号です。
背中のコリの場合には肩甲骨を回す、背骨に沿って指圧をするなどで気持ちよくなる場合には他の病気ではない可能性が高くなります。
(絶対コリというわけではありませんので、他の症状がある場合には気をつけて下さい)
コリの場合には、血行をよくすることが一番です。
姿勢が悪いと背中の毛細血管がゆがめられて血流が悪くなるので、背筋を伸ばすことを意識して下さい。
また猫背矯正用の下着やベルトを使うといつのまにか背中のコリが消える場合があります。
応急処置的には痛む部分に温湿布を貼ることがあります。
呼吸筋が硬いと姿勢が崩れ筋肉痛になる
呼吸筋とは呼吸をするときに使う筋肉の事です。
普通の呼吸では横隔膜(おうかくまく:肺の下にある筋肉。この筋肉がけいれんするのがしゃっくりです)と肋間筋(ろっかんきん:内と外に分かれていて、外肋間筋は肋骨を引き上げ、内肋間筋は肋骨を引き下げます)が使われます。
呼吸筋、特に肋間筋が緊張したときや、硬さがある場合には、胸から背中にかけて痛みを感じる場合があります。
この場合には息を吸うときや体を前に倒したとき、左右にねじったときに痛みを感じる場合があります。
痛みの原因はほぼ肋間筋の筋肉痛です。
胸式呼吸が多い女性が激しい運動をすると背中が痛む場合があります。
長く続く慢性的な咳も筋肉痛の原因になります。
筋肉痛以外の原因としては外傷、手術、体を強くひねることや長時間の前傾姿勢での骨格筋の負担がかかった際にも発生します。
肋間筋をストレッチすることによって痛みが和らぐ場合があります。
右手を上げて、右肩を前方に押し出しながら、左手で右胸を上下に揺らします。
逆方向にも行うことで、肋間筋全体のストレッチになります。
このストレッチはお腹に近い方の肋間筋で行うと猫背に効果がある事があります。
筋肉痛と間違えやすい背中の痛み
背中の筋肉痛だと思って、背中を温める、筋力を増やす、猫背を矯正するといった対処法をとっても痛みが消えない場合があります。
眼精疲労、骨粗鬆症(こつそしょうしょう:骨がもろくなり、骨が折れやすくなる)、ストレスが背中の痛みを起こしている場合があります。
眼精疲労は目の疲れと頭を支える筋肉のコリにより発生するものです。
目の疲れの原因としてはまばたきの数が少なくなって、目の表面の水分が減少することと、目の周りの筋肉が緊張したままになる事です。
目の渇きや筋肉の疲れと頭を支える筋肉の疲れが広がって、背中まで痛くなる場合があります。
また眼精疲労を起こすような作業は姿勢が悪くなりやすいことから背中に痛みを生じさせる場合があります。
眼精疲労は予防が一番です。
眼精疲労の原因はVDT(パソコンやスマートフォンの画面)を眺め続けることが最も多く、厚生労働省「VDT作業における労働衛生環境管理のためのガイドライン」を定めて、眼精疲労の予防を呼びかけています。
その中で予防には作業を1時間行ったら、VDTから目を離して遠くを見る、目薬(涙と同じ成分のものが推奨されています)をさすことを勧めています、
治療には目を温める、意識的にまばたきをする、首回りのストレッチをするなどがあります。(以上の治療は予防にも使えます。)
骨粗鬆症の場合には、少し力が加わっただけで骨が折れることによって、背中に痛みが生じます。
健康診断で骨密度が少ない場合には、病院で治療を受けることをおすすめします。
最近では薬局でも骨密度を測ることができます。
ストレスによっても背中は痛みます。
ストレスは精神の疲労ともよばれるものです。
しかし、体の痛みのようここが痛いと脳が救援信号を出すように、精神の疲労は精神の救助信号が出せないことから、胃腸の痛み、頭痛などで救助信号を出すことがあります。
背中の痛みも精神の救助信号の場合があります。
呼吸の度に背中が痛い内臓疾患は?
内臓疾患でも背中に意味が生じる場合があります。
呼吸の度に背中が痛い場合には、肺の疾患や肋間神経疾患があります。
肺の疾患の場合には、長期に咳が出た結果、肋間筋が痛んで痛みが出る場合と、肺炎や気管支炎の痛みが背中にまで伝わっていることが考えられます。
(放散痛:ほうさんつう、痛みが強いために他の部位まで痛みを感じること)と呼びます。
肋間筋には神経が通っており、神経の疾患により呼吸をする度に痛みを感じる場合があります。
肋間神経痛が有名ですが、これは症状の名前で内臓とは関係ありません。
内臓の病気で背中が痛くなる場合には背中の左右どちらかが痛む場合が多くなっています。
これは内臓の位置が関係しています。
背中の左側が痛い場合には膵臓がんや膵炎などの膵臓関連の病気、胃炎や胃潰瘍、胃癌の場合と心臓の病気(狭心症、心筋梗塞)が上げられます。
中央が痛い場合には胆嚢(たんのう)の病気である胆石症、胆のう炎、十二指腸潰瘍があげられます。
右側が痛い場合には肝臓が原因の場合が上げられます。
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、臓器内には神経を持っていないので痛みを持っていません。
お酒を飲む日が続いた場合に、左の背中や腰あたりが重く感じた場合には、肝臓に病変が発生している可能性があるので、病院で検査をしてもらうことをおすすめします。
内臓の異常はこうやって対処しましょう
胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の場合には、市販の胃薬でH2ブロッカーを配合しているものを試してみて、背中の痛みが取れるかを試してみましょう。
医師の処方箋が必要なプロトンポンプ阻害剤が胃潰瘍、十二指腸潰瘍の場合にはお医者さんはまずこの薬を選択しますが、H2ブロッカーもプロトンポンプ阻害薬がでるまでは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を手術ではなく、薬剤で治すことができることからブロックバスターと呼ばれた薬です。
使用経験も長く、安全性も高いことから薬局で販売されることになっています。
ただし、吐血があるようであれば病院に行く必要があります。
心臓が原因と考えられる場合には、背中だけでなく、左手などにカナヅチで殴られたような痛みを感じる場合もあります。
普段から血圧が高いなどの心臓病になりやすい人は病院に行くことをおすすめします。
心筋梗塞の場合には発症から治療までの時間が生命にかかわるので、背中の痛み以外に胸が締め付けられるなどの症状がある場合には救急車を呼ぶ必要があります。
膵臓や肝臓が原因の場合には、もともと健康診断で問題があるといわれている場合にはすぐに、そうでない場合もできるだけ早く病院に行くことをおすすめします。
深呼吸は自然治癒力を高められます
人間には自然治癒力があります。
例えばO-150の大腸菌に感染しても軽い下痢症状ぐらいで済む人と入院して治療が必要になるヒトがいます。
これは自然治癒力に個人差があるからです。
また子どもや老人の病気が重くなりやすいのは自然治癒力がまだ完成していない、あるいは年齢によって衰えてしまうからです。
自然治癒力というのは医学の世界では免疫力といわれています。
外部から入ってきた細菌やウイルスを殺す仕組みが体内に備わっています。
この仕組みには血流と血中内の酸素が大きな役割を果たしています。
例えば動脈硬化の人では自然治癒力が落ちますが、これは血流が行き渡らないためです。
呼吸の目的は酸素を吸入して、二酸化炭素を排出することです。
呼吸は意識しなくても勝手に筋肉が動いて呼吸をします。
しかし、必要な酸素が不足してくるとより多くの酸素を取り込むために「あくび」がでます。
このあくびによって、酸素の吸収量が増え、疲労の回復や病気の自然治癒力が高まります。
それを自発的に行うのが深呼吸です。
意識的に大きく息を吸って、酸素を取り入れ、できるだけ息を吐くことにより、細胞が酸素を吸収するのを高めることができます。
深呼吸のコツは息を吐ききることと腹式呼吸で行うことです。
そうすることによって普段の呼吸よりも酸素の吸収率が高まります。
また、深呼吸は呼吸筋だけでなく、広背筋も鍛えることになるので、体で脂肪を燃焼しやすくなります。
深呼吸はストレスの解消にも効果があるので、ストレスからくる背中の痛みだけでなく、胃潰瘍や、十二指腸潰瘍などストレスが原因の一つといわれている内臓の病気にも効果があります。
背中の痛みで気をつけるのは
背中の痛みは筋肉痛やコリ、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍からくるものであれば、深呼吸することで予防になります。
また薬局で販売している胃薬で治ることもあります。
その他の内臓の病気では病院に行く必要があります。
特に急に、背中の一部が痛み出した場合には、心臓病や膵臓病の場合があるので、救急車を呼ぶことをおすすめします。
背中の痛みが続く場合で、貼り薬や整体、ストレッチなどでも治らず長引く場合には一度内臓の病気を疑って、病院に行くことをおすすめします。
アルコールを飲むと背中が痛む場合には、沈黙の臓器である肝臓の悲鳴かもしれませんので、痛みが治まっても一度病院に行くことをおすすめします。