近年、人工授精の需要は高まり、胚盤胞移植が人工授精の主流になっています。
胚盤胞移植は、より自然妊娠に近い形で着床が叶いやすい方法のようですが、胚盤胞のグレードによって妊娠の確率の違いがあるようです。
また、胚盤胞移植でグレードが低くて心配される方も多いと思いますが、妊娠するために日頃できることを紹介します。
体外受精の一つ「胚盤胞移植」その方法とは?
体外で受精をした受精卵をすぐに身体に戻さず、身体の外で培養して着床時期である「胚盤胞」まで成長させてから子宮に移植する不妊治療があります。
それは胚盤胞移植と呼ばれる方法です。
今までの技術では受精後2日から3日育てた受精卵(初期胚)を子宮に戻すことが一般的でしたが、培養液の進歩によって5日間培養することができるようになっています。
そのため初期胚で着床が確認できなかった人の次の選択肢として、胚盤胞移植が位置づけられています。
また胚盤胞移植には2つの方法があります。
新鮮な胚盤胞を移植する方法、もしくはいったん凍結させた胚盤胞を移植する方法です。
新鮮な胚盤胞を移植する場合は、採卵から5日目に移植を行います。
しかし受精卵の分割が遅くて6日目に胚盤胞移植した場合は、子宮内膜が着床に最適なタイミングからずれていることが多く着床の成功率が低いです。
そのため胚盤胞を凍結させて、次の機会に望む方法が考案されたというわけです。
凍結された胚盤胞を移植する場合は、ホルモン剤などで子宮内膜の状態を整えられるので、新鮮な胚盤胞よりも着床確率が若干高くなります。
しかしながら凍結から解凍するときに胚盤胞が傷ついたり死滅したりする可能性があるため、グレードが高く妊娠しやすい胚盤胞だったとしても移植できなくなる可能性もあります。
胚盤胞移植のメリット
胚盤胞移植のメリットを挙げていきましょう。
まずは胚盤胞を選別できることです。
それも初期胚では分からなかった問題まで分かるようになり、良質な胚盤胞を選べます。
良質な胚盤胞はグレードが高くて、質の悪い胚盤胞はグレードが低いです。
着床確率が高くなります。
体外受精した受精卵を5日間かけて育てている間に子宮内膜も着床しやすい状態になります。
そのため着床確率が高く、自然妊娠に近い状態で妊娠することができます。
子宮外妊娠の予防になります。
子宮内膜が着床しやすい状態ということもあって、卵管に戻って着床してしまう子宮外妊娠を防げます。
多胎妊娠の予防になります。
多胎妊娠というのは双子のように一度に複数の子供を妊娠することです。
多胎妊娠は母体に負担があるだけでなく、医療現場にも負担となるため、万全の体制で望みたい不妊治療をしている人には推奨されません。
そのため2008年から日本産婦人科学会によって胚盤胞移植に使う胚盤胞の個数は1つと制限されました。
胚盤胞移植のデメリット
胚盤胞移植にはデメリットもあります。
受精卵が胚盤胞にならないと移植できない。
受精卵が受精卵になるのに正確に5日間ではなく長引くことかあります。
そのため子宮のベストコンディションを逃してしまうことがあります。
胚盤胞になる確率が低い。
受精後3日目である初期胚の状態が悪いと胚盤胞まで育たず、胚盤胞まで成長できる受精卵は2割から3割だと言われています。
そのため採卵数が少ないと胚盤胞を用意できないことがあります。
培養液はまだまだ研究中です。
胚盤胞まで育てる培養液は研究途中で、技術の進歩によって3日間から5日間に延ばせていますが、未完成とも言える技術です。
そのため妊娠の可能性のあった高いグレードの胚盤胞を培養液が原因でダメにしてしまうこともあります。
一卵性多胎の恐れ。
受精卵は一つしか移植していないのに多胎妊娠するケースが確認されています。
一卵性多胎だと扱いが難しく、胎児にもトラブルが起きやすいことが分かっています。
研究の進歩によって、培養液の中で胚盤胞が拡張と縮小を繰り返すことで内細胞塊が割れるという原因は特定されましたが、解決策は今後の課題になっています。
胚盤胞のグレードの見方とアルファベットの意味は?
胚盤胞移植に使う胚盤胞にはグレードがあります。
グレードが高いほど成長速度が早く、質の良い胚盤胞だと言えて、妊娠の確率が高いです。
グレードが高いか低いかは、胚の内部にある「胞胚腔」という空間の状態で判断されます。
具体的に見ていきましょう。
グレード1は、胞胚腔が全体の50%未満の状態。
グレード2は、胞胚腔が全体の50%以上の状態。
グレード3は、胞胚腔が全体のほぼ100%の状態。
グレード4は、胚盤胞の周囲の透明帯が薄くなった状態。
グレード5は、胚盤胞の周囲の透明帯から細胞が出てきた状態。
グレード6は、着床できる状態。
胚盤胞はさらにアルファベットが2つ続いて分類されています。
1つ目のアルファベットでは細胞塊の状態を示しています。
Aだと、細胞が多く密集している状態。
Bだと、細胞が少なくまばらな状態。
Cだと、細胞がとても少ない状態。
2つ目のアルファベットでは胚盤胞を包み込む栄養外胚葉の状態を、A、B、Cと分類しています。
そのどちらにしてもAがより良い状態です。
1つ具体例を挙げてみます。
「3BC」の胚盤胞は、グレード3で、細胞塊の状態が普通で、栄養外胚葉の状態が悪いという意味になります。
胚盤胞のグレードが低い・・5・6日目の受精卵の成功率は?
胚盤胞のグレードは高いに越したことはありません。
グレードが高いほど妊娠確率が高く、グレードが低いほど妊娠確率は低いです。
また胚盤胞の培養期間は5日間ですが、6日間に培養期間が延びてしまうと妊娠確率は低くなります。
具体的に見ていきましょう。
グレード4の妊娠確率は58.4%で、6日間に延びると37.3%。
グレード3の妊娠確率は41.7%で、6日間に延びると24.0%。
グレード2の妊娠確率は35.0%で、6日間に延びると8.1%。
グレード1の妊娠確率は18.1%で、6日間に延びると14.3%。
全体だと47.4%、6日間に延びたものだと26.7%です。
しかしながら胚盤胞の状態だけが妊娠を決定するものではありません。
アルファベットで示した細胞塊と栄養芽細胞の状態、子宮のタイミングやコンディション、母体の年齢など様々なものが妊娠に影響してきます。
また少しでもの胚盤胞のグレードを高めるための日頃の生活習慣も大切になります。
そのため上記に挙げた数字は参考程度に見ておいて、そして実際に医師に相談することが大切です。
胚盤胞のグレードを上げて妊娠の成功率を上げるには
胚盤胞を低いグレードから高いグレードに上げるための生活習慣とはどのようなものでしょう。
重要になってくる項目を挙げていきます。
ストレスを解消する。
ストレスがあることで女性ホルモンの分泌が抑制されてしまいます。
また妊娠に必要な女性ホルモンが少なくなるので、妊娠確率を低下させる原因にもなります。
身体を温める。
冷えていると身体は機能を十分に発揮してくれません。
とくに女性の生殖器は冷えに弱いので、冷えていると妊娠しにくい状態になってしまいます。
腹回りを冷やさないような服装を心がけましょう。
それから筋肉があることで身体が冷え難くなるので、ストレッチや軽い運度もオススメです。
良質な睡眠を十分に取る。
良質な睡眠というのは、深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠が交互に繰り返される睡眠のことです。
深い眠りのときにホルモンが分泌されることで、妊娠に必要なホルモンを上手にコントロールできるようになります。
食生活を見直す。
食事は身体の機能を健康的に保つのに欠かせません。
1日3食、規則的な食事習慣を心がけましょう。
成長した卵の力を信じて前向きに!
近年不妊で悩まされている方は大変多いですよね。
不妊治療は根気が必要ですし、精神的にも辛い時も多々あるでしょう。
胚盤胞移植で着床するということはとても神秘的な現象です。
成長した卵の力に感動しますね。
そうした御自身の卵の力を信じて、穏やかな気持ちで日々生活を過ごしてくださいね。