体外受精の胚盤胞移植と女性ホルモン剤のジュリナ錠について

最終更新日:2022/09/02

不妊症という言葉を耳にしたことがありますよね・・・。

近年、不妊症で悩まれている方が非常に多いと言われています。

そこで、不妊治療に通い、体外受精をする方も増加しています。

胚盤胞移植をご存じですか?

この胚盤胞移植は体外受精の一つです。

今回は、この胚盤胞移植とはどういうものなのか、また女性ホルモン剤のジュリナ錠についても詳しくまとめてみました。

胚盤胞移植とは?

胚盤胞移植とは、採卵後体外で受精させ、その受精卵を胚盤胞と呼ばれる状態になるまで体外で5日ほど培養し、ジュリナなどのホルモン剤を服用して移植にベストな状態を保った子宮内に移植する方法です。

これまでは技術上の面で、体外で胚盤胞まで育てるのは難しい事でした。

採卵後2,3日目の状態である4細胞や8細胞の初期胚の状態まで育てて子宮内に移植する事が多かったのですが、自然妊娠であればこの状態の胚は子宮内に存在しません。

細胞分裂を繰り返しながら卵管を移動している段階の胚です。

しかし、培養液の開発等で着床時期の胚盤胞の状態まで安全に育てる事が出来るようになり、より自然な妊娠に近い状態で移植が出来るようになったのです。

それでも、胚盤胞の状態まで培養する過程で、約半分の胚は途中で分割がストップしてしまいます。

実は人間の胚は、自然な状態でも胚盤胞まで分裂するのは約半分で、残りの半分は偶発的に染色体異常を持っているためそもそも着床が出来なかったり着床しても流産してしまったり、無事に出産に至ることはできません。

胚盤胞まで培養が出来たという事は、元々質の良い、生命力にあふれた胚である可能性が高いのです。

これは移植成績にも現れており、初期胚の移植よりも着床率が高くなります。

そのため、可能な限り胚盤胞移植を出来るよう努力を続けている段階だそうです。 

胚盤胞移植を選択するメリットとは?

胚盤胞移植(IVT-BT)のメリットを以下に挙げます。

・胚が良質である

初期胚の状態では、染色体異常によりその先の分割が止まってしまう可能性があります。
胚盤胞まで育ったという事は、そこまで問題が無い良質の胚であるという事です。

また、この中からさらに良質の胚を選ぶこともできます。

・着床率が高い

不妊治療では、着床率を上げるために複数の胚を移植する事で多胎妊娠をする可能性が高まります。

それは妊婦本人のみならず医療現場に対しても負担となります。

多胎妊娠予防のために2008年に日本産婦人科学会より、移植する胚の数を制限がかかりました。

胚盤胞移植(IVT-BT)では、元々着床率の高い胚盤胞を移植するため移植する胚の数を減らすことが出来、そのため多胎妊娠の可能性も減ります。

また、胚盤胞移植までの間、ジュリナ等の服用により子宮内膜の状態も着床に適した状態に整い、より自然な妊娠の状態に近づけることが出来ます。

・子宮外妊娠の予防になる

体外受精においても、移植後の卵が着床前に卵管まで戻り、子宮外妊娠を起こすことがあります。

しかし胚盤胞移植(IVT-BT)においては胚も子宮内膜も着床しやすい状態のため、初期胚の移植に比べて子宮外妊娠を起こす確率が減ると言われています。

胚盤胞移植を選択するデメリットとは?

メリットばかりのように思える胚盤胞移植(IVT-BT)ですが、もちろんデメリットもあります。

・移植に至るまでが難しい

胚盤胞移植(IVT-BT)では、受精卵を胚盤胞まで培養する必要がありますが、そもそもの受精卵の性質や状態により、ここまで育たないこともあります。

ですので、せっかくジュリナの服用により子宮の状態が移植に適していても移植に至らないケースもあります。

・採卵数が少ないと胚盤胞まで育つ数が少ない

もともと、胚盤胞まで育ってくれる確率は2~3割程度とされています。

排卵誘発剤に反応しにくい方では採卵数が少なくなるため、胚盤胞まで育たないこともあります。

・培養技術の未確立

胚盤胞への培養は、培養液の研究開発のおかげで成功率が高まりました。

しかしまだこの技術には未確立な部分も多く、妊娠に至る可能性を秘めた受精卵でも、培養状態に悪い点があると培養が失敗し、せっかくの妊娠の機会を逃すこともあります。

・一卵性多胎の可能性

ひとつしか受精卵を移植していないのに多胎妊娠が起こる事が増えてきています。

この一卵性多胎は管理が難しく、胎児のトラブルも起こりやすいのです。

培養過程で受精卵が収縮・拡張を繰り返し、これによって胎児の素となる内細胞塊という部分が割れ、多胎妊娠につながる事が近年の研究で分かってきました。

これは避けることが、今後の培養における課題でもあるようです。 

ジュリナ錠ってどんな薬?

女性ホルモンのうち、卵胞ホルモンとは、卵胞から分泌されるホルモンです。

女性の性器の発達や成熟に関わったり、女性らしいふっくらとした体形を作り出す働きがあります。

このホルモンの分泌が低下すると、月経異常や更年期障害、不妊症、子宮発育不全、乳準分泌不全、子宮出血などの異常を起こします。

卵胞ホルモン剤は、このような異常や、卵巣欠落症状(卵巣の働きが鈍ったり、手術で卵巣を摘出した後に起こる無月経やのぼせ、冷え、鬱状態、肥満などの症状)、老人性骨粗鬆症の治療に使われます。

卵胞ホルモンはエストリオール製剤、結合型エストロゲン製剤、エストラジオール製剤に分けられます。

エストリオール製剤は主に膣炎などに、結合型エストロゲン製剤は子宮出血の止血などに用いられます。

エストラジオール製剤は更年期障害や卵巣欠落症状、膣萎縮や閉経後骨粗鬆症などの治療に用います。

このうちジュリナ錠は老人性骨粗鬆症や更年期障害に用いられるほか、胚盤胞移植などの不妊治療の際に子宮内膜を厚くする目的でも用いられます。

ウェールナラ配合錠は子宮内膜保護の作用のある黄体ホルモンのノボノルゲストレルが配合されており、閉経後骨粗鬆症に処方されます。

ジュリナ錠の副作用は?

①過敏症状を起こす可能性があります。

 発疹や発熱、かゆみなどが起きたら服用は中止し、すぐに医師に相談して下さい。

②肝機能障害、高血圧、下痢、腹痛、動悸などが起きることがあります。

 また、不正性器出血、乳房の張りや痛み、倦怠感、帯下の増加、脱毛、頭重などが現れることがあります。

③稀に静脈血栓塞栓症、血栓性静脈炎などの血栓症が起きる事があります。

 突然の呼吸困難、胸痛、急性視力障害や下肢の痛みなどが現れたらすぐに受診をしてください。

胚盤胞移植の際に用いられるジュリナ(エストラジオール製剤)では性器分泌物増加、乳房不快感、乳房の痛み、腹痛、性器出血、外陰部のかゆみ、便秘や下痢、吐き気などの胃腸症状、めまいなどが現れることもあります。

また、稀にアナフィラキシーや静脈血栓塞栓症、血栓性静脈炎などの重篤な副作用を起こす事もあります。

ウェールナラ(エストラジオール・ノボノルゲストレル製剤)でも外陰部不快感、外陰部のかゆみ、月経困難、膣真菌症、便秘や下痢などの胃腸症状、動悸等の他、ジュリナ同様アナフィラキシーや血栓症などの重篤な副作用を起こす事もあります。

これらは、自覚症状のないこともあります。

検査で分かる事もあるので、医師から検査を指示されたときは必ず受けるようにしてください。

ジュリナ錠の使用上の注意・用法用量

過去に薬によってかゆみや発疹などのアレルギー症状が出たことのある方や、乳がんや子宮内膜がんなどのエストロゲン依存性腫瘍のある方やその疑い、既往のある方、また血栓症のある方やその既往のある方、肝機能障害、原因の確定していない異常性器出血のある方、妊娠中または授乳中の方、併用薬のある方は注意が必要です。

必ず医師に申し出るようにしてください。

更年期障害や卵巣欠落症状に対しては1回1~2錠(主成分として0.5~1mg)を1日1回服用します。

閉経後骨粗鬆症に対しては通常1日2錠(主成分として1.0mg)を1日1回服用します。

また、胚盤胞移植など不妊治療で使用する量はその方のホルモン値や医師の裁量によって決定されるため、これと決まった量はありません。

いずれの場合も服用量に幅があるので、医師の指示に従って服用してください。

自己判断で中止をしないようにしてください。

飲み忘れに気づいたら、その時点ですぐに1回分を服用してください。

絶対に2回分を一緒に飲まないようにしてください。

もし間違って多く飲んでしまった場合は医師や薬剤師に相談して下さい。

不妊治療を前向きに検討してみよう!

不妊治療の流れとしては、検査で不妊原因が見つかればそれを治療し、同時に妊娠の可能性を高める治療を行っていきます。

私の周りにも、体外受精で妊娠出産された方がいます。

不妊治療や体外受精に対して不安を感じて先延ばしにしてしまっているご夫婦、不妊治療を前向きに考えて検討してみてください。

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