腓骨骨折は足首捻挫と間違われやすいです。足首捻挫だと思い放っておいたら実は骨折だったなんてこともあります。気づかずに悪化させては治りも遅いです。そこで今回は腓骨の骨折と治療方法とリハビリについてお話ししていきたいと思います。
腓骨骨折と捻挫の違い
なぜ脛骨は必要なのでしょうか?
脛骨は腓骨に比べ4~5倍も太く、この脛骨にかかる体重を分散させるのが腓骨なのです。
この二つが補完し合い体重のバランスは保たれています。
また、足首をスムーズに動かすのにも腓骨は重要な役割を担っています。
これは肘の先の尺骨と橈骨が、手首の回転を滑らかに実現できるのと同様、脛骨が体重を受け止め腓骨が分散するおかげで、立ったままでも足首を動かせるのです。
よく「捻挫したと思っていたのが実は骨折していた」という話を聞きますが、これは腓骨遠位骨折といわれ、単なる捻挫と誤解されやすいのです。
下記の症状がある場合は骨折の可能性があります。症状は人によりますが痛みが強く、長引くようであれば早急に受診しましょう。
「腓骨遠位骨折の症状」
・くるぶしの外側の腫れ
・腫れが酷い
・くるぶし外側の前方下を押さえると痛い
・体重を外側にかけたときの痛み
・内出血がある
一見、捻挫と症状が似ていることから発見が遅れがちな腓骨骨折ですが、骨折部位は腓骨の内側の脛骨よりにあるため、レントゲンで腓骨本体に隠れてしまい、骨折としての受診時にさえ見落とされがちです。
腓骨の構造上やむを得ないのでレントゲン撮影の際は様々な角度から撮影する必要があります。
エックス線を斜めから照射して骨折線の角度を知覚し、腓骨遠位骨折を発見します。
エックス線照射の角度は技師の経験にもよるので、CTでより具体的な診断もできます。
腓骨がどれだけ大切かお分かりいただけましたでしょうか?
治療だけでなくその後のリハビリまでしっかりとやらないと大変な思いをすることになります。
腓骨骨折の治療方法とは
最も行われているのはギプス固定療法です。
年齢やズレの大きさに因り腓骨骨折の治療法を決めますが、靭帯の損傷や骨折部位にズレがなく歩行が可能な状態であれば手術でなくギプスで固定する保存療法が一般的です。
足首を90度に固定し、骨がくっつくまで保存します。
はじめの2~3週間は、移動の際は患部に体重がかからないよう松葉杖等での補助が必要となります。
骨折線がなくなり骨の癒合が確認された後は、徐々に体重をかけて4~5週間でギプス固定の完了となります。
癒合がうまくいかない場合や腓骨の骨折にともない、骨や靭帯がずれた場合には手術となります。
手術ではズレを戻してから金属の棒で骨折部位を固定します。
骨のズレ以外でも靭帯が損傷している場合、コンパートメント症候群等を併発している場合、どちらの修復も行います。
特に開放骨折などで皮膚への感染が見られる場合はこちらの治療を優先します。
手術では骨折部位を接合してズレを戻すだけでなく、同時に脚関節全体のパランスも考える必要があります。
それには腓骨を以前と同じ長さになるよう固定することが大事です。
手術後は長期間ギプスで固定するため、エコノミー症候群になってしまう危険性があります。
そのため、脚を上げたり積極的に動かす必要があります。
3~4週間後にレントゲンで骨の状態を確認し、癒合していれば体重をかけて歩けるようになれば、リハビリへと移行します。
腓骨骨折のリハビリ方法は
腓骨骨折の手術後おすすめの治療法に超音波治療があります。
プロスポーツ選手の間でも評判で、骨折の治癒が3割早まることもあるようです。
1日20分程度、患部への微弱な超音波照射を一定のリズムで行います。
通院治療も可能ですが、機器をレンタルすれば自宅で毎日でも治療が可能で、ギプスの上から照射するだけで痛みもなく簡単です。
ギプス装着の間に悪化した血流による、むくみ解消のリハビリが必要です。
筋肉の衰えは日常生活に支障をきたすため、リハビリ開始は早いほどいいのです。
骨折部位の周辺は筋組織や腱もダメージを受けており、動かすことが回復につながります。
ギプスを装着したままできるリハビリとして、足を高く上げて自転車こぎ運動や、横向き状態で足を上げ下げさせるのも良いでしょう。
まずジャグジーなどで患部周辺の筋肉をほぐし、マッサージで血流を良くします。
理学療法士の指導のもと、患部に負担をかけ過ぎないように関節の屈伸をしていきます。そして体重を患部に段階的にかけますが最初は1/3,次に1/2、最終的に全体重をかけて歩行訓練をしていきます。
電気治療や鍼治療も血行促進と痛みの軽減に有効で、快適なリハビリと回復促進のためにも並行して取り入れたいものです。
筋肉を和らげ、関節の可動域も広がり、痺れも軽減します。
リハビリ期間はどれくらいかかるもの?
完治までの期間は幼少期以上の年齢であれば脛骨・腓骨骨折で2~3ヶ月後のようです。
「全治○○週間」とよく聞きますが、まったく元通りという意味ではなく、「医師の診断や治療が必要とされる期間」という意味です。
ギプス装着期間はリハビリは禁物で、ギプスが外れた後のリハビリ、予後のケアまで含めた期間を「全治」と言います。
全治してからのリハビリ期間はその人の生活状態や環境にもよるため「全治6週間、完治6ヶ月」などとなることもあります。
歩けるようになるまでの期間を骨折の種類別に一覧にしてみました。
※一般的な目安で、個人差があります。
<大腿骨>術後1~3週間
<足関節>術後3~4週間
<足の甲>3~4週間のギプス固定、外来通院等が必要
この他、損傷の度合いが大きければこれ以上の期間が必要です。
歩けるまでの時間がかかるとリハビリの期間も長くなります。
また、子供と高齢者でも異なり、成長期の子供の処置が遅れると体の発育に支障をきたします。
ただ自己免疫能力も高いので、適切な治療とリハビリの下であれば6ヶ月ほどで完治に至る例が多いです。
これが高齢者の場合だと骨折による筋力低下と元々の自己治癒力も低いので、通常の2~3倍の時間がかかります。
また認知症や骨粗しょう症を進行させてしまう恐れがあるので注意が必要です。
高齢者は転倒しやすい状態にあり、骨折から寝たきりとなり、それが認知症の発症や進行にもつながりかねないのです。
足首のリハビリは辛いものです
腓骨骨折した場合、癒合した後もリハビリが必要です。
長期的に固定され動かしていなかった筋肉や関節は固まり、筋力も低下しているからです。
なお、まだ治癒していない段階で動かしたり、リハビリが不十分な状態で日常活動をすると「変形性関節症」になる場合があるため、整形外科医や理学療法士のもとできちんとリハビリを行いましょう。
足首は形状が複雑で可動域も細かいです。動かしづらさや痛みに加え浮腫や腫れも起こりやすく、リハビリには時間と気力が求められます。
ギプスが取れたら医師の指示のもと徐々にリハビリを行いましょう。
まず足を上下左右にゆっくり動かし、可能なら患部をもう一方の足の膝に乗せ、足指を手で掴んでみましょう。
時計回り・反時計回りにゆっくり手で足を回してみましょう。
リハビリ目的のストレッチは時間をかけて行った方が効果が高いことが多いので、力や反動を利用すると逆効果です。
次は患部側の膝を伸ばした状態で足首を回転させます。
もし痛みや痺れが出たら即刻中止し医師に相談しましょう。
ギプスで固めていた患部や周辺の組織は筋肉のコリをほぐすことで血液の循環も良くなり動かしやすくなります。
またギプスの重量や圧迫による下半身の疲労は腰痛や膝痛になりやすく、少し長めのお風呂でマッサージするなど、じっくり疲れを取ることが大事です。
痛みの出ないよう筋肉をもみほぐすようにし、お風呂上がりにはストレッチをするとより効果的です。
同じ過ちをしないように気をつけましょう
せっかく腓骨骨折が良くなっても、リハビリの最中に怪我をしてしまっては元も子も有りません。
日常生活の中には骨折しやすい場所、骨折に繋がりやすい場所は案外多いものです。
・マットや絨毯の縁に躓いたりめくれに指をひっかける
・電気コードに足を取られる
・階段で滑る
・玄関や部屋の段差
・お風呂場など滑りやすい場所
・ロングスカート等のつまづきやすい服装
など挙げられますが、どこのご家庭にもあり得るのではないでしょうか。
リハビリ中は足が普段より動かしづらいため、こんな何気ない原因で転倒し、再び骨折してしまうことはよくあります。
また、高齢の方や小さなお子様のいらっしゃるご家庭ではなおさらこういった「家庭内事故」が骨折を誘発することがあります。
絨毯はめくれ防止のために縁を固定し、電気コードはコードカバーをつけるなど、転倒予防策を講じましょう。
また、階段やお風呂など滑る可能性のある場所には滑り止めや手すり、足元へのフットライト設置などで安全対策しましょう。
「これくらい大丈夫」という過信が思わぬ事態を招くのです。
重大な事故や怪我になる前のライフゾーンの安全化が大事です。
捻挫したと思ったら必ず整形外科へ行ってください。
腓骨骨折をしたらどれだけ大変かお分かりいただけましたでしょうか?
たかが捻挫と思っても必ず整形外科を受診し、骨折していないかだけは診てもらってください。
骨折が見つかったら、治療後のリハビリまで気を抜かずにやってください。
そして完治後は同じことを繰り返さないように足元に注意するようにしてくださいね。