階段から滑り落ちたり、スポーツでの衝突や交通事故で腰を強打すると、腰の痛みだけでなく吐き気や頭痛、寒気を伴うことがあるようです。実際、腰を打ってなぜ吐き気と思われるかもしれませんが、多くの方が体験しています。そこで今回は腰やその他の部分を強打したときにどのような症状が出てくるのかまとめてみたいと思います。
腰を強打すると吐き気がする?
腰を強打したことで起きる吐き気の原因として、脳震盪(のうしんとう)を起こしたことが挙げられます。
脳震盪は衝撃が脳や首に伝わることで起こるため、脳震盪を起こすようなシチュエーションは意外と多く、誰にでも起こる可能性があります。
例えば、激しい運動だけでなく、「誰かとぶつかった」「頭を打った」「階段から落ちた」などの日常生活であり得るシチュエーションでも起こります。
また、身体を強打し、強い衝撃を受けた際には一瞬呼吸が止まることもあります。
腹筋があるような人(体を鍛えている人、健康体の男性など)は良いですが、筋肉が弱い人(子供・女性・高齢者など)は衝撃が直接体に伝わるため、症状も強く表れます。
特に腰の奥には内臓が多く集まっているため、この衝撃で内臓が損傷する可能性もあります。
強い衝撃を受けた後、激しい痛み・吐き気・嘔吐・自力で動けないなどの症状が出た際には、すぐに検査を受ける必要があります。
しかし、これらの症状は時間が経ってから出てくることもあるため、少なくとも次の日までは身体の状態に注意しておく必要があります。
腰を強打!吐き気を伴う打撲の危険度は?
吐き気を伴う打撲には、危険度の高い打撲と低い打撲があります。
危険度の低い打撲は、強打したときの速度があまり早くないものに加え、意外にも見た目は大変に見えるものです。
例えば見た目からわかる症状として、たんこぶ・腫れ・出血があります。
特に出血などがある場合は重症に見えるかもしれませんが、実はこれらの症状は表面上だけのもので、例えば腰を強打したとしても脳や首にはあまり影響がありません。
一方で危険度の高い打撲はその逆の状態、つまり速い速度で打った打撲です。
速い速度での衝撃は、その衝撃の強さに比べて本人は何も感じないことが多く、また表面にたんこぶ・腫れ・出血などの影響が残りません。
危険度の高さは、加えて速度に加えて衝撃の角度、呼吸の状態によっても変わります。
特に息を吐いているとき、息を吐き切った直後の瞬間に強打すると、衝撃はより深部に浸透します。
その衝撃は何倍もの威力となり、身体に大きな影響を与えます。
どんな体勢で腰を強打しましたか?
衝撃の浸透度は、意識の程度・姿勢によっても変わってきます。
例として、車に乗っていて後ろから追突された時を考えてみます。
後ろからぶつかってくる車を確認、構えている状態であれば身体も無意識に防御しています。
その為、衝撃が強く腰や首などを強打しても、衝撃の浸透は抑えられています。
しかし不意に追突された場合は、軽めの衝撃であったとしてもその衝撃が深く浸透してしまいます。
加えて、顔を横に向けた姿勢(首をひねった状態)で追突されると、衝撃は深くなります。
腰や首などを強打した直後に症状がでなかったとしても、数日或いは季節の変わり目などに症状が出ることもあるため、注意が必要です。
症状としてはムチウチ(首の痛み)や頭痛、吐き気、手の痺れ、集中力の低下など強打したこととはあまり関係ないように思えるものもあります。
しかし、その原因を画像検査(レントゲン・MRI)で調べても、詳細な歪みが写らないため、異常なしという結果に終わってしまうことが多いです。
このゆがみは、1ミリのズレであったとしても、身体の動きに大きな影響を与えることがあります。
腰の打撲で吐き気がするのは体の奥まで響いたから
日常生活から徐々に歪んでいった場合はそうでもないのですが、危険度の高い打撲として示したような、突発的なで速い速度で強打した時の衝撃は身体の深部に浸透します。
この衝撃は衝撃を受けた部位(上記の例で挙げた交通事故の時では腰・首など)だけでなく、連動している身体の様々な部位にも影響し、硬直・歪みとなってしつこく身体に残ります。
数日から1週間すると、この硬直・歪みから様々な形で症状が出てきます。
例えば高熱、喘息症状、食欲がない、頭の症状(緊張・症状が強くなると吐き気など)、尿の異常、生理痛・生理不順などが挙げられます。
しかし、おそらくこれらの症状の原因が以前に受けた打撲とは思わないでしょう。
激しく強打したものほど、衝撃を深部で受けていることが多くなります。
そのため打撲をきっかけに生じた様々な異常の経過は極めて長くかかる傾向があります。そして、二次、三次と様々な慢性の異常を派生していることは少なくないです。
もしかしたら脳脊髄液減少症かも?
交通事故などで腰や首などを強打した際には様々な症状が出てきますが、その症状に対して「むち打ち症」ではなく「脳脊髄液減少症」という病名がつけられることがあります。また、慢性のむち打ち症と診断された人のうち、10%程度は脳脊髄液減少症ではないかと言われています。
脳脊髄液減少症とは、名前の通り、頭の中にある「脳脊髄液」が減少している状態です。脳脊髄液は無色透明の液体で、この中に脳が浮いています。
脳脊髄液減少症の症状は、頭痛・頚部痛・めまい・耳鳴り・視機能障害・倦怠疲労感・吐き気など、むち打ち症と似ています。
脳脊髄液減少症の特徴として、横になっているときは症状がない一方で、座る・立って3時間以内に症状が出ることが挙げられます。
その原因は、脳脊髄液の産生低下・吸収過多・漏れが考えられており、この中で最も多いのは脳脊髄液の漏れとされています。
腰や首などの強打の他、出産などで脳脊髄液を囲うように存在する「くも膜」に裂け目等ができることで、脳脊髄液がもれてしまいます。
しかし、実際は原因がわからない場合が多いです。
脳脊髄液減少症は、水分を摂取して安静を保つことで、90%程度は自然に治癒します。
それでも治癒しない場合は、「ブラッドパッチ療法」を実施します。
これは造影剤を使って脳脊髄液の漏れている場所を探し、その漏れを止める方法です。
この方法では早い人で数時間、一般的には1か月程度で効果が出ます。
高齢なら腰椎圧迫骨折かもしれない
高齢である場合は、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や腫瘍(がん)から起こった「腰椎圧迫骨折」が疑われます。
骨粗鬆症や腫瘍では骨がもろくなるため、中腰になった時や重いものを持った時など、腰に力が集中することで骨折が起こります。
交通事故のように身体を強打せずとも、軽い衝撃でも骨折は起きてしまいます。
この骨折による痛みは、軽微な痛みの場合もありますが、身体を強打した場合などの外力が加わった場合には激痛となります。
一方で腫瘍から骨折は、動いたときだけでなく安静時も痛みがあります。
痛み以外の症状として、腰椎など背骨の骨折がいくつもの場所に生じると、背中が丸くなる、身長が低くなることもあります。
強い外力によって骨折した場合は、腰椎の他に骨軟部組織の損傷・変形が生じることもあり、時には背骨の中にある脊髄を損傷することもあります。
脊髄の損傷部位によっては痺れ・吐き気・尿の異常など様々な症状が現れることがあります。
腰を強打したら痛くなくても病院で検査
腰を強打すると打撲症状以外にも様々な症状を引き起こすことが分かりました。
階段から滑り落ちたり、スポーツでぶつかったり、交通事故にあったりと腰を打つことは比較的起きやすいものです。
症状が重ければ当然すぐに病院を受診すべきですが、軽くても万が一を考えて、一度検査をしてもらうようにしましょう。