腰が痛い場合は、多くの方は腰の部分に注意が向いてしまいますが、良く探ってみるとおしりの部分まで痛いことに気づくことがあります。
また実際に腰が痛いと思っていても、おしりの上の部分が痛く、腰そのものは押したり動かしても痛くない時があります。
このような腰痛と合わせておしりに痛みがある方へ、その原因と改善方法を紹介します。
腰痛でおしりも痛いと感じる原因①
腰痛でおしりも痛いと感じる原因は大きく3つあり、1つ目は神経の圧迫や炎症によるもの、2つ目は関節の問題、3つ目は筋肉や筋膜などの骨や関節以外の組織の異常です。
最初に神経の圧迫や炎症について解説しますが、代表的なものに腰部椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症があります。
腰椎椎間板ヘルニアは、背骨と背骨の間にあるクッションにような役割をしている軟骨繊維からなる椎間板が、何らかの原因で壊れて後方に飛び出て神経を圧迫した状態です。
原因として椎間板への負担がかかることも考えられますが、近年では遺伝的な要素も指摘されています。
症状は腰痛やおしりの痛み、太ももや足まで放散するような痛みもあり、仕事以外でも日常生活に影響が出ることがあります。
また腰部脊柱管狭窄症は加齢とともに背骨が変形し、背骨の後ろ側にある神経が通る脊柱管と呼ばれるところが狭まり、神経を圧迫し様々な症状が出ます。
代表的な症状として腰椎椎間板ヘルニアと同じように腰やおしり、足に痛みが出ますが、特徴的なのは少し歩くと症状が強く出て動けなくなり、休むとまた歩けるようになることです。
この2つは一般的なレントゲンでは異常を推察することしかできませんが、専門の医師による問診や検査を加えることで診断されるでしょう。
詳しく椎間板や狭窄による神経の圧迫を確認するには、MRIという断層撮影装置を使用することで分かります。
しかし症状がなくても神経の圧迫も見られることから、診断の確定には専門医による総合的な判断が必要になるのは間違いありません。
腰痛でおしりも痛いと感じる原因②
腰痛でおしりも痛いと感じる原因の2つ目は、股関節や仙腸関節の異常により痛みなどの症状が出るものです。
股関節の異常で多いのは先天性股関節脱臼や、臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)などが原因のものと、加齢により股関節が変形してしまうものです。
先天性股関節脱臼は骨盤に大腿骨の頭の部分が、臼蓋不全などではまる部分が浅いのが原因になることがあります。
基本的に赤ちゃんの時に発見され治療されますが、出産後におしり周りに不安定感や、動きすぎると痛みなどがでる場合もあるようです。
それから変形性股関節症は、臼蓋形成不全が原因の可能性もありますが、もともと関節に異常がなくても加齢により変形し症状が出ることがあります。
動く範囲が狭くなることでしゃがんだり、前屈みになる動作がつらくなり、股の前や横が痛み出すことがあるようです。
この関節症でおしりが直接痛むというより、歩き方が悪くなることで痛めた側とは反対のおしりの外側に症状が出たりします。
またもう1つの原因である仙腸関節は、構造により上半身と下半身が骨盤(腸骨)と背骨の下にある仙骨が直接つながる部分で、負担のかかりやすい場所です。
この部分に何らかの障害が出ると神経に異常がなくても、椎間板ヘルニアのように足に痛みやシビレが観察されることがあります。
腰痛でおしりも痛いと感じる原因③
腰痛でおしりも痛いと感じる原因の3つ目が、おしり周りの筋肉や筋膜などにより痛みが出るもので、神経や関節の障害と合併して起きることもあります。
問題となる筋肉は、おしりの一番表面にある大殿筋、その内側の上にある中殿筋、奥にある梨状筋と、おしりの付根にある太もも裏のハムストリングなどがあります。
大殿筋は大腿二頭筋と半膜様筋、腱膜様筋(3つでハムストリングス)とともに下肢を後に振り上げる動作で、実際の動きでは跳躍や走ることが一般的です。
大殿筋が痛むとおしりの広範囲に症状が出て、ハムストリングスの内側を構成する半膜様筋と腱膜様筋はおしりと脚の付根の部分に痛みが出ることがあります。
中殿筋は左右の骨盤の上の部分にあり、脚を真横に上げたり骨盤が傾かないようにバランスをとるなど、体幹の安定に重要な筋肉です。
この筋肉が痛むと、おしりの他に腰の下の仙骨の部分に症状が出るでしょう。
梨状筋はおしりの大殿筋より奥にあり、急にしゃがんだり長時間座っていると、おしりや太ももの裏に痛みが出ることがあります。
筋肉が原因でのおしりや腰の痛みは、関節と違ってレントゲン検査などの画像診断では判明しにくく、つらい症状があっても消極的な治療しか受けられない場合があるでしょう。
痛いおしりの治療方法
痛いおしりの治療は原因により方法が異なります。
腰痛でおしりも痛いと感じる原因①で解説した、腰椎椎間板ヘルニアや腰椎脊柱狭窄症は病院で検査し、症状に合わせて治療が行われます。
軽度から中程度の腰痛やおしり、脚の痛みやシビレなどでは、麻酔薬や鎮痛薬入りの注射や飲み薬などの投薬治療から、回復によりリハビリで物理療法(電療や温熱療法)や運動療法で治療します。
重度の激しい腰痛や脚の麻痺などがある場合は、飛び出た椎間板を取ったり変形して神経を圧迫している骨を削る手術による治療を行います。
腰痛でおしりも痛いと感じる原因②も、原因①と同じような治療もありますが、仙腸関節は固定し股関節は人工関節に換える手術になります。
原因③の筋肉によるおしりの痛みは、手術や深く刺すような注射は行われませんが、比較的表面に注射を打つことがあります。
これは費用も安くて短時間の治療なので、積極的に行う医師もいます。
他にもリハビリもありますが、痛いおしりの筋肉へのセルフケアも効果的なので、この後シンプルな方法を解説していきましょう。
痛いおしりのセルフケア①
腰痛やおしりに痛みがある時の改善方法には、病院での治療や鍼灸、接骨、整体などで施術してもらい、症状の改善を目指すこともあります。
最初に痛い部分に効果的な2つのストレッチ方法を紹介します。
1.大殿筋・大腿二頭筋ストレッチ
この2つの筋肉は曲げた脚を伸ばす動作があり、激しく走ったり飛んだりした時や仕事などで長時間座りすぎることで痛め、痛いおしりや腰痛の原因になります。
激しく走る、跳ぶなどの動作は筋肉が強く縮む、緩むの繰り返しで疲労したり、大きな力が筋肉へ加わることで傷ついて硬くなり症状が出るのです。
仕事などで長時間座りすぎるのは、筋肉が動かないために循環が悪くなり、硬く強張って症状が出やすくなるでしょう。
①床に両足を前にして膝は約90度曲げる姿勢で、いわゆる体育座りのようにします。
②①の姿勢から両手を太ももの裏に回して、上半身は真っ直ぐにします。
③②の姿勢から上半身を真っ直ぐに保ったまま、太ももの前にヘソを付けるように倒しましょう。
④③の状態を約10秒行ってください。
⑤このストレッチが軽くできるようになったら、段階的に曲げた膝を伸ばして③と④を行います。
2.中殿筋・梨状筋ストレッチ
中殿筋は体幹を支えてバランスをとる重要な筋肉で、ここを痛めるとおしりを振りながら歩いたり、片側に体が傾き大きく姿勢が崩れてしまいます。
梨状筋はおしりの奥にある筋肉で脚を横に開く動作があり、平泳ぎなどで強く働きます。
この梨状筋を痛めると、痛いおしり以外にも坐骨神経が隣接しているので、足まで痛みやシビレがでることもあるようです。
①仰向けでストレッチする側の膝を立てます。
②①の姿勢から膝をストレッチするおしりの反対側に上げ、両手で膝を抱えておしり(中殿筋)を伸ばします。
③②の姿勢を約10秒、痛みが出ない程度行ってください。
④①の姿勢に戻り、今度は真っ直ぐ太ももを上げ、股関節90度ほど曲げたところでストレッチするおしり側の足を太ももを外捻りにしながら反対側に上げます。
⑤ストレッチするおしり側の手で膝を、反対の手で足首を抱えて太ももを外側に開かないでお腹側に曲げておしり(梨状筋)を伸ばします。
⑥⑤の姿勢を約10秒、痛みが出ない程度行ってください。
この中殿筋、梨状筋ストレッチは太ももよりおしりが伸ばされるように、股関節と脚を動かすのがコツです。
痛いおしりのセルフケア②
痛いおしりのセルフケアでストレッチ以外で手軽にできる方法が、テニスボールを使用したやり方です。
これは硬くなったおしりの筋肉をほぐして、腰痛やおしりの痛みを予防改善し、ストレッチと組み合わせることで最大限に効果を発揮します。
テニスボールを使用した方法は、一般的な指圧やマッサージのように誰かにしてもらう必要がなく、力加減も自分自身で行えます。
3.テニスボール・マッサージ:大殿筋
①仰向けに寝て、膝を約90度に曲げて膝を立てます。
②①の姿勢から症状がある側におしりと床の間にテニスボールを挟みます。
③テニスボールに少しずつ体重をかけ、強い痛みが出ない程度に圧迫してください。
④③の状態からテニスボールを挟んだ側の足を伸ばしたり、曲げたりしながら刺激していきます。
⑤約10秒程度、動きを止めないでボールでマッサージします。
4.テニスボール・マッサージ:中殿筋、梨状筋
①仰向けに寝て、膝を約90度に曲げて膝を立てます。
②①の姿勢から症状がある側におしりと床の間にテニスボールを挟みます。
③テニスボールに少しずつ体重をかけ、強い痛みが出ない程度に圧迫してください。
④③の状態からテニスボールを挟んだ側に両膝を横に約30度倒します。
⑤④から③の姿勢に戻るのを、約10秒かけて複数回繰り返しましょう。
テニスボールによるマッサージは、強い痛みを我慢して行う必要はありません。
おしりの問題は早目に解決
おしりが痛いと最終的に、大殿筋などの日常動作に大切な筋肉が弱まり、痛み以外にもバランスが悪くなり怪我の元になることがあります。
女性にとってもスタイル上、おしりが重力に負けて垂れた形や、筋肉が痩せて股関節の骨が外に飛び出るようにも見えてしまいます。
痛みなどの症状があって大きな病気でなければ、早目に治療しセルフケアでコンディションを整えることで日常が快適になるでしょう。