受け口や出っ歯などの顎のずれで噛み合わせが悪く悩んでいる方も多いですよね。
歯列矯正だけでは治らない噛み合わせの症状を顎変形症といいます。
隠せない見た目のコンプレックスは、当人にとって非常に深刻な悩みとなります。
しかし、顎変形症の方は歯列矯正と顎の手術で綺麗な歯並びやバランスのとれた顔の形に改善できるのです。
失敗したくないあなたの為に、顎変形症と手術のメリット・デメリットについてお話させて頂きます。
顎変形症とは?
顎変形症(がくへんけいしょう)とは、下顎が前方に出ている「受け口」・上顎が著しく突出している「出っ歯」などというとなじみがあると思います。
上顎前突症・下顎前突症・開咬症・非対称症・下顎後退症(小下顎症)などの種類があり、上下の顎の骨格がずれていたり、形態の異常(非対称)が大きいなどの原因で、顔貌や噛み合わせに異常が生じている状態のことをいいます。
顎の骨は、上顎骨(上の顎)と下顎骨(下の顎)、頬骨で形作られています。
顎の骨の、形・大きさの異常や位置のずれなど、バランスが崩れていることで、見た目の問題だけではなく、噛み合わせが悪くなり、上手く噛めない・話しづらいといった症状が出てくることがあります。
顎変形症を治療する場合には、通常の矯正治療だけでは十分な治療結果が期待できないことが多く、顎の骨を外科的に手術で切って動かす「外科矯正治療」を行うことが多くなります。
手術になりますので、失敗しないよう十分に医師と相談し、納得して治療していくことが大切です。
顎変形症で手術が必要となるケース
顎変形症の治療には、通常、歯列矯正治療と外科的矯正治療(手術)の2つの方法があり、”失敗”とならないようにするため、複数の診療科がチームを組んで治療方針を検討します。
矯正治療は矯正歯科が、手術は口腔外科が担当します。
歯だけでなく顎の骨全体が突出しているために、歯列矯正だけでは改善が見込めない場合には、外科的矯正の対象となりますが、顎の骨の成長が終わらないと手術はできませんので、個人差はありますが、男性は17〜19歳、女性は16〜18歳以降の手術となります。
また手術の方法を取る場合でも、歯列矯正治療も併せて行うことがほとんどです。
治療の流れとして、初診及び術前診断の後、1~2年程度かけ、あらかじめ歯を正しい位置に動かすことで、術後にきちんと物を噛めるようにするための「術前矯正」を行います。
その後手術をし、噛み合わせを仕上げるために半年~1年程度かけて手術後の顎に合う歯並びにするため「術後矯正」を外来通院による定期検診で経過観察をする手順が一般的です。
顎変形症の手術をするメリットは?
失敗のリスクがありながら手術を行うのには、”歯列矯正だけでは十分な改善が見込めない”という以外に様々なメリットがあります。
まず、歯は顎の骨や歯茎の中だけでしか動かすことができません。
それでは、歯や歯茎にとても大きな負担がかかってしまいます。
そこで、顎の手術を行うことによって、歯を無理に動かさず歯並びを治すことができます。
また、顎変形症の治療では悪い歯並びだけでなく、外科的に顎の位置を変化させるために顔の形も改善することができます。
それにより顎の位置を正しい位置に改善することにより、顔の歪みやずれを改善し、バランスのとれた顔と噛み合わせを手に入れることができます。
最後に保険が適用されるようになることです。
国で指定されている医療機関で治療を行うことにより、顎変形症の治療は歯列矯正と外科処置共に保険診療で行うことができます。
外科矯正治療は、全身麻酔による本格的な手術が必要になりますが、大きな治療効果が期待でき、矯正治療の中では唯一保険が適用されます。
失敗しないか不安・・顎変形症手術のデメリットって?
手術によるデメリットを考えて、手術を行う決断を失敗しないようにしましょう。
顎変形症の手術を行うには入院前に臨床検査などを行い、約10日前後の入院をして、全身麻酔を使って手術をします。
そのため、全身麻酔による部分的な痺れ・術前検査のための数回の通院・手術直後には顎の位置や、親知らずなどを抜歯することに伴う痛みや顔のはれ、一時的な麻痺など不便を感じる期間があります。
保険を適用するには「自立支援医療機関(育成医療・更生医療)」あるいは「顎口腔機能診断施設」の指定を受けている医療機関でしか保険適用による治療は行われていません。
また、途中で治療をやめた場合や、手術をしない場合には自費治療に切り替わり、保険適用されていた部分も返金しなくてはならなくなります。
手術をしたからと言って完治したわけではなく、術後も元に戻ってしまう可能性や、虫歯になりやすいなど手術だけで終わるわけではありません。
まずはデメリットを理解し、納得のいく治療を行えるようにしましょう。
手術の決断を失敗だったと思わない為に!顎変形症の手術の流れについて知っておこう
顎変形症の手術後に訪れるいろいろな問題に対し”手術をして失敗した”と思わないためにもどのような手術を行うのか知ることも大切です
顎変形症の治療を行うことが決まったら、まずは歯の表面にブラケットという矯正器具を接着剤でつけていきます。
術後にしっかりとした噛み合わせになるようにシミュレーションをしながら、手術前の噛み合わせの状態を調整していきます。
術前の噛み合わせがしっかり調整できたら、手術を行います。
入院は約10日前後。
全身麻酔を使って、顎の骨を切って正しい場所へ移動し、チタンのプレートとネジで固定します。
チタンの固定装置は顎が固まってから取る場合も、そのままにしておく場合もあります。
術後はあごを固定し、腫れを防止するためにバンドをつけ、噛み合わせが安定するまでワイヤーやゴムで顎を固定することもあります。
すべての治療が終われば、顎の位置も改善され顔がよりバランスのとれた状態になるため、噛み合わせも治り、きれいな歯並びになります。
しかし、歯並びを維持するためにブラケットを外した後も、保定装置を使って安定させる必要があります。
顎変形症の手術で失敗したくないけど、リスクはないの?
手術を行うには以上、失敗はゼロとは言えません。
また、全身麻酔については、専門の麻酔科医のもと細心の注意を払ったうえで手術を行われなければなりません。
そのほかの問題として、一つ目に、出血はほとんどありませんが、万が一大量出血してしまった場合は、輸血を回避するため手術を中断し、後日に延期します。
二つ目には、手術中の大量出血の場合や術後出血、顎関節の脱臼、噛み合わせの不具合などにより、再手術の可能性があります。
三つ目、3ヶ月程でほぼ軽減してきますが、通常半年から1年程度、口唇、頬、歯肉の感覚の痺れが出てしまいます。
また、稀に若干残ってしまう場合もあります。
四つ目、奥歯に感染病巣がある方では稀に歯から感染・傷の化膿を起こすことがあります。
五つ目、顎の移動量や向きによりますが、顔の腫れ、頬や顎のたるみ、鼻の形の微妙な変化(上顎手術の場合)は半年程度続きます。
六つ目、およそ1ヶ月は食事をするのに不便を感じます。
色々なメリット・デメリット・リスクを良く知ったうえで、顎変形症の手術を行うことにより、自分で納得のいく治療を進めていくことが大切です。
失敗しないかの不安よりも成功した後の楽しみを想像しよう!
顎変形症の手術について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
手術と聞くと、デメリットやリスクも考えられるし怖くて不安でどうしてもとまどってしまいますよね。
しかし顎変形症の治療では手術を行うことが基本となっており、さらに手術を行うことで得られる嬉しいメリットもあります。
手術に関して不安な点があったとしたら、まずは専門医へ相談して不安を軽減できるといいですね。