骨盤の動きを円滑にすることは野球におけるすべての動作のパフォーマンスアップにつながります。怪我をしやすい、パワーが出ない、スピードが足りないといったことは骨盤を正しく使えていない可能性が高いです。そこで今回は野球でもっと活躍するための骨盤を中心としたストレッチをまとめていきたいと思います。
野球における骨盤を正しく認識しよう
野球指導者はしばしば腰や骨盤という言葉の使い方を間違えています。
骨盤というのは腰にある大きな骨のことです。
上には背骨が伸び、下には二本の脚が伸びます。仙骨と腸骨の間に仙腸関節が骨盤にあって骨盤だけを独自に動かすことも不可能ではありませんが、ほとんどの場合は脚や股関節の動きに連動して相対的に腰が動いたように見えているだけです。
腰を回せとか骨盤を動かせというのはイメージを伝えるための言葉に過ぎず、そのまま受け取って、一生懸命に腰を動かそうとしても上手くいかないということです。
「腰」という言葉にも一癖があって、具体的に身体のどこを指している言葉なのか厳密な理解がされていないということがあります。
腰といえば腰痛を思い浮かべることができますが、実は腰痛で痛くなる箇所は厳密にいえば背中の下部分です。背中の下部分には回る関節はありませんから回すことはおろかほとんど動かすことができません。
本当に動かすべき箇所は腰ではなくて股関節です。股関節の場所はお尻にある細長い骨(尾骨)のところです。そこを動かすことで脚から上半身をスムーズに動かすことができます。
野球やゴルフは骨盤の安定が鍵!
野球だけでなくゴルフスイングにも骨盤の安定性が重要となります。そのためにも柔軟性をチェックしてみましょう。
回旋バランステスト
座っていても立っていても良いです。姿勢を正して、背中の軸を意識して肩をゆっくり右から左へと捻ります。左右の捻ったときの角度を比べてください。左右が異なっている場合、角度の少ないほうの筋肉が硬くなっているということです。右利きの人は右の筋肉が硬くなりがちです。
チェックしてみて自分の身体の特徴が分かったら今度はストレッチで改善していきましょう。
一つ目は体幹回旋ストレッチです。
椅子に座って背中伸ばして両脚を開きましょう。
身体を捻って反対側の太ももの外側を手で掴みます。
他方の手で椅子を持つことで身体を支えつつ捻った上体を元に戻す方向に回しましょう。頭部は正面です。腰と背骨の回旋筋が伸びると思います。左右3回ずつ行いましょう。
二つ目は股関節を柔軟にするストレッチ。
仰向けに寝て両膝を立てます。
腕は肩の高さにおいて、息を吐きながら立てた両膝をゆっくり横に倒します。
倒したあとは元に戻してから反対方向に倒します。
骨盤の回旋筋と股関節周囲筋を伸ばすことができます。左右交互に3回行いましょう。
野球上達への骨盤回旋ストレッチ
上体の運動能力に関係する骨盤には左右に捻る筋肉があります。そのバランスをチェックしてみましょう。
骨盤回旋テストです。
まずは仰向けに寝て両膝を立てます。
上体を安定させるために腕は真横に広げます。
立てた両足を倒すことを右や左と行い、倒し難いと感じた側がある場合は、その側の骨盤の周辺筋が硬くなっているといえます。
ゴルフや野球などで右打ちの人は左に倒し難いと感じることが多いようで、その場合はアッパースイング気味になっているかもしれません。
打球が高く上がって飛距離か伸びないと感じている場合はアッパースイングが原因であると思われます。
骨盤の周辺筋や股関節を柔軟にするストレッチを行って改善していきましょう。
股関節を柔軟にするストレッチは、まずは仰向けに寝ます。
そして右膝を曲げます。
右膝の外側を左手で持って引き寄せながら息を吐きつつ腰部をゆっくり捻ります。
さらに捻ってから10秒ほど静止していると効果的です。
股関節を螺旋運動(内旋・外旋)させる筋肉を伸ばすことができますし、背中の回旋筋を伸ばすこともできます。左右3回ほど行いましょう。
野球技術向上のための骨盤ストレッチ
野球やゴルフのパフォーマンスに直結する股関節の安定性を高めるには柔軟性が大切です。パフォーマンスのための股関節周りの筋肉のストレッチを紹介します。
まずは股関節捻り回旋ストレッチです。
仰向けに寝てから両膝を立てます。
上体を安定させるために両手を真横に広げます。
息を吐きながら立てた両膝を倒します。
そのことで腰部や股関節や太ももの外側を伸ばすことができます。
左右交互に3回ほど行いましょう。
次は大腿直筋と縫工筋のストレッチです。
仰向けに寝た状態から、両膝を骨盤よりやや広めに幅を取ります。
片膝を立ててかかとは床につけましょう。
息を吐きながら立てた膝を内側に倒します。
そのことで軸足を安定させる筋肉である骨盤前方から脛骨内側にある縫工筋・大腿骨の前方にある大腿直筋の2つを伸ばせます。
左右3回ほど繰り返しましょう。
そして股関節内転筋ストレッチです。
仰向けに寝ます。足裏を合わせて開脚します。
両脚とも50度くらい広げるのが目安です。
それで股関節の内転筋が伸びます。
左右の足が同じように広がらないようであれば硬いほうの足を重点的にストレッチしましょう。
もう一つの方法としては、今度は座ってから足裏を合わせて上体を前に倒す方法があります。どちらにしても伸びたと感じてから5秒から10秒姿勢をキープすると効果が高まります。
野球上達のために骨盤底筋を使おう
骨盤底筋も野球などのスポーツに役立ちます。
具体的なトレーニング方法としては、まず片足立ちをしてバランスを取ります。
浮かした足を抱え込むようにしてゆっくりと体幹に近づけます。
このとき素早くやってしまうと筋トレ効果が薄まるので注意してください。
膝がお腹の近くまできたら一旦動作を止めます。
それからゆっくりと足を下ろしましょう。
何度も繰り返すことで筋トレになります。
また慣れてきたら瞑って行うとよりバランスを取り難くなることからより骨盤底筋を鍛えることができます。
より筋肉を使う方法としてお尻歩きがあります。
背中と足を宙に浮かせて地面にお尻だけをつけた状態から、片方のお尻を浮かせては身体を捻って浮かせたお尻を前方に着地させることを繰り返します。
そのように前進することで骨盤底筋を鍛えられます。
意外と難しく筋力も必要とする負荷の高いトレーニングですが、それも慣れてきたら前に進むだけでなく後方に進むことも試してみましょう。
ウォームアップで骨盤ストレッチは必要なし
最近ではどのようなスポーツでもスタティックストレッチを行われなくなりました。
スタティックストレッチというのは静的ストレッチとも言われて、筋肉を伸ばした姿勢を維持するストレッチのことです。
対して、身体を動かしながら筋肉を伸ばすことをダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)と言います。
野球選手がウォーミングアップする時間は40分から60分であり、その内訳を見てみるとウォーキング・ジョギング・ストレッチ(スタティック、ダイナミック)などあります。
そもそもウォーミングアップする理由はパフォーマンスの最大化と怪我予防です。
野生動物はウォーミングアップせずともダッシュできますしそれで肉離れを起こすことはありません。
つまり通常の運動ではウォーミングアップなど不要ということですが、野球は人間の通常の運動の範疇を超えているのでやはりウォーミングアップを必要とします。
具体的には、野球独自の動きと不安であればダイナミックストレッチを行う程度でよいでしょう。7割走、8割走、9割走、10割走と行えばジョギングも不要で、時間にして20分程度でウォーミングアップを完了させることができます。
野球は骨盤ストレッチだけじゃありません
野球で骨盤を使えるようにするためにストレッチやトレーニングをしていくのは良いことだと思いますが、単独で使えるようになる必要はさらさらありません。全身は連動するものですから、全身満遍なく使えるように意識していただきたいと思います。他人に流されず入念なストレッチや意識の持ち方を自分自身で考え続けていくことで、まだまだ現役のイチロー選手や去年引退した山本昌さんのように長く現役でいられることでしょう。